起きた
えぇ、起きましたとも
「ここ、どこ?」
定番の言葉を発して、首を回す
白、白、白、白、白
周りは白を確認
……ん? どっかで見た事あるような
「……あ、保健室ね」
そう
こんなベッドが丁寧に置いてあって、白ばっかりの場所は
病室か、学校の保健室しかないだろう
それ以外であるのは、怪しい場所か何かだ
「……で、なんで私は寝てるんだろ」
さっきまで遠坂さんと衛宮君に睨まれてたような──
「あ」
また、倒れたんだっけ?
最近になってから、調子が悪かった
よく眩暈やら貧血やらと、大変辛い思いをしてたのだ
それに、気を失う、まで含まれると
「……病院に行けってか」
結構病人だと思う
……今日くらいに、本当に病院に行こうかな?
「……そろそろ、気づいてもらえるかしら?」
「わっ!?」
突然、声が聞こえた
「まだ気づいてなかったの……?」
「と、遠坂さん?」
隣には、いつの間にか遠坂さんがいた
「失礼ですが……いつ頃から、いました?」
「『ここ、どこ?』より前だったかしら」
「……私が起きてからずっといたんですね」
「さんは気づいてくれませんでしたけどね」
苦笑する遠坂さんの表情には、明らかに怒りマークがついている
……なんていうか、なんでいるわけでしょう?
「で、お昼のこと聞かせて欲しいんだけど?」
「お昼……? ていうか、今何時ですか?」
「放課後だけど。あ、カーテン締まってるから夕日は入らないか」
「ほうか、ご……?」
遠坂さんの言った言葉を、脳が聞き入れるのに数秒
その言葉を噛み砕くのに、数秒
飲み込むのに、数秒
「放課後────っ!?」
さっと立ち上がり、周囲に自分の荷物が無いか確認する
「遠坂さんっ!」
「な、何っ?」
「私の鞄、持ってませんかっ!?」
「い、一応持ってきてはあるけど……」
目の前に出されてた鞄を自分のだと確認
一応、すぐ近くにあった全身鏡の前で、軽く身嗜みを整える
「、夕方のタイムセールに出撃しますっ!!」
「よ、よい結果を上げてくるのだぞ、隊長!」
「Yes,ma'am!」
そして、颯爽と廊下を走る
……今日こそ、あのおばちゃんに勝つんだからっ!
(いつまで敬礼してるんだ、凛?)
「はっ!」
(今から走れば追いつけるぞ)
「……ま、待ちなさい、さーんっ!!」
(やれやれ、これだから凛は……)
* * * * *
「今日の夕飯、げっとーっ!!」
いやぁ、おばちゃんとの勝負は私に女神が傾いたね
合計1000円以上値切れたのは初めてかなー
ここの猛者に並んだのかもしれないわ
「〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪」
今ならスマイル無料で振り撒いてあげれるわ〜
と
「あ、っ!! まてぇーいっ!!」
「はっ!?」
いきなりどこかで聞いたような声が、遠くから
「あんた、普通の娘でしょ!? なんでそんなにっ!?」
というか、遠坂さんだった
「ども、遠坂さん。私、頑張ったよ」
「ん、あ、よかったわね」
そう言って、遠坂さんの隣を通ろうとして────掴まれた
「ま、待ちなさいっての……」
「え、何か用がありました?」
「私があるっての! ──もう、来なさいっ!」
「え、あ、ふぇーっ!?」
遠坂さんにズルズルと引っ張られる私
わ、私、雑巾じゃないですよ!?
なんていうか、おっきな武家屋敷っぽいとこに連れ込まれました、私
しかも、金髪碧眼美人さんとか藤村先生とかいるんですけど?
あと、2年生の間桐桜さん
いや、それよりも問うべき疑問があるだろう、私
「──何で衛宮君の家に連れてくるかな、遠坂さんっ!!」
「食事中です。静かにしてください、」
「……はい」
金髪碧眼美人──セイバーさんに叱られました、ぐすん
なんでか私が買ってきたものも調理されてるし
いや、私が作るより美味しかったりするからいいんですよ?
でもそれ作ったのが、ね?
「シロウ。今日の夕食も美味しかったです」
「ん、満足してくれてよかった。──さんは、どうかな?」
「あ、とっても美味しいと思いますよ? 私が作るよりよっぽど」
衛宮君が作ったなんて
……噂で衛宮君のお弁当が美味しいと聞いたことがあったけど
これほど美味しいなんて……彼女泣かせだよ、絶対
そんなこんなで、衛宮邸で夕飯を召し上がりになりました
夕飯を食べ終えて満足したのか、藤村先生はとっととお帰りに
間桐さんも、衛宮君に送られて帰るそうな
で、今にお残りされてる私は、遠坂さんとセイバーさんに見られてます
……視姦は犯罪じゃないからって、そんなに見つめんな
「単刀直入に聞くけど。なんで私達が魔術師って?」
沈黙を破ったのは、遠坂さん
視線は、より鋭いものに変わってる
「なんでって……」
言っても、いいのか?
いや、なんていうか、言っても聞こえなきゃ言ってもいいか?
盗んだ事がばれなきゃ罪じゃないんだっ
「青タイツの赤い槍持った変態が『お前の周りに一人くらい魔術師がいる』って言ったから……」
「……から?」
「学校一ミステリアスな遠坂さんに聞いてみた。それだけなんだけど」
「────────」
視線そのままの沈黙は、非常に身に悪いですよ遠坂さん
ほら、ちょっぴりセイバーさんも引いてるじゃないですか
「な……」
「な……?」
「な、なんじゃそりゃぁぁぁっ!!!」
一気にがぁーっと叫ぶ遠坂さん
「ていうか、青タイツって言ったらランサーじゃないのっ!」
「そう、ですね」
「……なんで手を出さなかったのかしら?」
「手は出されたけどー。助けてもらったもの」
「……どう思う、セイバー?」
「とりあえず、女性に優しく、義に篤いのでは?」
セイバーさんと一緒に、何やら話し始める遠坂さん
ていうか、あの青タイツの変態ってランサーって言うんだ
確かに、槍持ってるんだから槍士(ランサー)っていうのは合ってると思うけど
言いたいこと、聞きたいこと
色々とたくさんあるんだけど、まず一番に
「帰りたいんだけど。その辺どうかな、遠坂さん?」
『あ』