「みゅ〜みゅみゅみゅ、みゅ」
「みゅーみゅみゅみゅ…」
お前ら何言ってんじゃゴルァ!
「こうして魔物たちの会話を聞いているのも面白い絵図らですね」
ジェイドは興味津々の表情を浮かべている。
「…可愛い♪」
「ティア、声に出てるぞ」
「な、なんでもないわ」
「…かわいいねぇ〜」
「!〜〜〜」
頼むから杖で叩くのはやめてください(痛
「話はミュウから聞いた、随分と危険な目にあわれたようだな。2千年を経てなお、約束を果たしてくれたことを感謝している」
とご老体は言う。
「当然です。チーグルを助力することはユリアの遺言ですから」
「しかし、元はといえばミュウがライガの住みかを燃やしてしまったことが原因。そこでミュウには償いをしてもらう」
何や?ミュウに償いをねぇ…
「ミュウを我が一族から追放する」
「それはあんまりです」
イオンが慌てて止めには入る。
「無論、永久というわけではない。聞けばミュウはルーク殿に命を救われたとか…
チーグルは恩を忘れぬ。ミュウは季節が一巡りするまでの間、ルーク殿のお仕えする」
「は?俺は関係ないだろ」
「ミュウはルーク殿について行くと言って聞かぬ、処遇はお任せする」
このご老体…、本気で言ってやがる(汗
と、そこに思いもよらぬ言葉が隣の少々ツッコミのキツイ女性から出た。
「…どうしてルークなのよ!私じゃだめなの!?」
『は?』
この場の誰もがティアの言葉に目を丸くする。
いや、俺もこの言葉には予想外だった。
「…は!…こ、こほん。…連れていってあげたら?」
お前が連れていきたいだけだろ…
「お役に立てるようにがんばるですの。よろしくですの、ご主人様」
ご主人様〜?!く、どうせならメイドさんに言われたかった(ぉ
「さぁ、報告も済んだようですし、森を出ましょう」
はぁ、そろそろ捕獲されま〜す♪
と言う事で出口へと向かった。
森の出口、早速兵士を連れて、イオンの護衛役のアニスが現れた。
「お帰りなさ〜い♪」
「ご苦労様でした、アニス。タルタロスは?」
「ちゃんと森の前に来てますよぅ。大佐が大急ぎって言うから特急で頑張っちゃいました!」
えらくわざとらしい会話だな。さっさと行動すればいいのに…
「そこの2人を捕らえなさい。正体不明のセブンスフォニムを放出したのは、彼らです」
「ジェイド!2人に乱暴なことは…」
イオンが庇おうとするが…
「ご安心ください。何も殺そうと言う訳ではありません。…暴れなければ」
ほほほ、やっと正体を現したな〜。
「いい子ですね。――連行せよ」
はい、つかまっちゃいました♪
タルタロスに乗せられ、移動中です。
「…セブンスフォニムの超振動は、キムラスカ王国王都方面から発生、マルクト領域タタル渓谷付近にて収束しました。
超振動の発生源がアナタ方なら、不正に国境を越え侵入してきたことになりますね」
「…あぁ、その通りだ」
今更、言い訳しても無意味なので正直に答える。
「へへ〜、思ったよりこの人素直なんですね♪大佐♪」
えっと、フォンマスターガーディアンのアニスが一々絡んでくるが放置だ。
「えぇ、そのようですねぇ」
…俺は間違いなくこの2人にバカにされている。
「ま、それはさておき。ティアがオラクル騎士団だと言うことは聞きました。
ではルーク、アナタのフルネームは?」
「ガイ・セシルだ」
…
沈黙が流れる、あれ?
「…ここでそれは無いんじゃない?」
ティアの視線が痛いので、真面目に答えることにした。
だって杖を構えているから(ぁ
「ルーク・フォン・ファブレ。過去にお前たちが…、いや何でもない」
「キムラスカ王室と婚姻関係に有る、あのファブレ公爵のご子息…、と言う訳ですか」
正確には、ルーク・フォン・ファブレ、をオリジナルとしたレプリカが俺だ。
「公爵…♪…素敵…♪」
…あくまで放置だ。
「何故マルクト帝国へ?」
「今回の件は、私とルークのセブンスフォニムが超振動を引き起こしただけです。
ファブレ公爵家によるマルクトへの敵対行動ではありません」
ティアが変わりに説明してくれた。
「大佐、ティアの言う通りでしょう。ルークに敵意は感じられません」
うむ、その通りだ。ありがとうイオン、俺っち感激です!
…でも余り人を信じすぎると痛い目にあうぜ?
「…まぁ、そのようですね。温室育ちのようですから、世界情勢には疎いようですし」
ひでぇ
「ここはむしろ、協力をお願いしませんか?」
イオンの言葉に首をかしげる。協力?何かさせるつもりか?
「我々はマルクト帝国皇帝ピオニー九世殿下の勅命によって、キムラスカ王国へ向かっています」
ほ?
「戦争でも始める気か?」
「逆ですよぅ。ルーク様♪戦争を止めるために私たちが動いているんです」
「アニス、不用意に喋ってはいけませんね」
やんわりとアニスを止めるジェイド、彼も結構苦労するタイプかもしれない…
「戦争を止めるねぇ…」
まぁ、いまだに睨み合ってるからな〜。両国は…
「知らないのはアナタだけよ」
…いや、だから知らないとは言ってないっす(泣
「これからアナタ方を解放します、軍事機密に関る場所意外は全て立ち入りを許可しましょう。
まず、私たちを知ってください。その上で信じられると思えるなら力を貸して欲しいのです。
…戦争を起こさせないために」
「協力して欲しいなら詳しい話をしてくれ」
「説明してなお、ご協力頂けない場合は、アナタ方を軟禁しなければなりません」
大丈夫、慣れてるから、軟禁生活(ぁ
いや〜、我が家も軟禁地獄ですから〜。残念!
「事は国家機密です。ですからその前に、決心を促しているのですよ」
…はぁ、現状はあまりいいものじゃないな。
「どうかよろしくおねがいします」
そう言って、ジェイドは部屋を出て行こうとする。
「…まて」
「何か質問が?」
「協力するぞ」
『………え!?』
何でそこで全員が驚く…
そろそろイジケソウデス。
「…分かりました、では話を続けましょう」
ジェイドは再び元の位置に戻り、話し始めた。
「昨今局地的な小競り合いが頻発しています、おそらく近いうちに大規模な戦争が始まるでしょう。
ホド戦争が休戦してから、まだ15年しか経っていませんから」
「そこでピオニー陛下は平和条約締結を提案した親書を送ることにしたのです、僕は中立な立場から使者として協力を要請されました」
イオンがジェイドの言葉を引き継ぎ説明する。さっきライガ戦の後に言っていた新書とはその事か…
「それが本当なら、どうしてお前が行方不明になってんだ?ヴァンはお前を探すために帰国したぜ?」
「それは、ローレライ教団の内部事情が影響しているんです」
「ローレライ教団はイオン様を中心とする改革的な導師派と、大詠師モースを中心とする保守的な大詠師派とで派閥抗争を繰り広げています」
今度はジェイドがイオンの言葉を引き継ぐ。
…導師イオン、大詠師モースね。
「モースは戦争が起きるのを望んでいるんです」
「は?」
イオンの言葉に耳を疑った。だってそうだろ、ローレライ教団は世界を導くための組織と言っていい。
そんな組織が戦争を望んでいるだと?ふざけてるのか…
「僕はマルクト軍の力を借りて、モースの軟禁から逃げ出してきました」
なるほど、それで行方不明な訳ね…
「導師イオン!何かの間違いです。大詠師モースがそんなことを望んでいるわけがありません!
モース様はスコアの成就だけを祈っておられます」
スコア。…なるほど、予言の成就って事はつまり、そのスコアに書かれた予言の内容が”戦争が起こる”と書いてあるわけだな?
ティアは大詠師派だったな。確かオラクル騎士団モース大詠師旗下情報部第一小隊所属だったよな…
「…教団の実情は兎も角として、僕らは親書をキムラスカへ運ばなければなりません」
イオンが話を戻す。
「なるほど、敵国であるあんた等が幾ら和平条約の使者といってもすんなり国境は越えられないか…」
「えぇ、ぐずぐずしていては大詠師派の邪魔が入ります。その為にはアナタの力…いえ、地位が必要です」
そこで俺の出張って訳だな…。まあいいけど、平和の為なら俺の地位ぐらい使いまくってくださいな〜。
「おねがいできますか?」
「あぁ、別にいいぞ。伯父上に取り成せばいいんだな」
それを聞いたティアの顔が変化する。
(変なものでも食べたのかしら…)
「ティア、言いたいことが有るならはっきり言え」
「な、なんでもないわ(何でこんなに鋭いの?…ニュータイプなのかしら)」
まだ何か失礼な事考えてるなコノヤロウ…
「ありがとうございます。私は仕事があるので失礼しますが、ご自由に艦内をご見学してもらって結構ですよ」
そう言って、今度こそ部屋を出て行った。
さて、俺も一回りしてくるかな〜、と席を立つとアニスが話しかけてきた。
「ルーク様って、すっごく高貴な方なのに全然気取ってなくてすごく素敵です♪」
…君は幾らなんでも怪しすぎです。
「アニスって可愛いのに趣味が悪いのね…」
ティア…、その言葉は殺傷能力があり過ぎだと思いませんか?(泣
「あの、ルーク様…。私も付いて行っていいですか?」
「別にいいけど」
「きゃわ〜ん♪ありがとうございますっ♪」
…おう、究極のぶりっ子現る!?
そんな彼女に俺の心の囁きを送ろう。
アニスにだけ聞こえるように…ボソっと呟く。
「監視、ご苦労」
「…!?」
「安心しろ。俺はお前の見方…かも?」
「…」
アニスの表情はどんどん青ざめて行く。
まぁ、このぐらいの意地悪はいいだろう♪
「さて、適当に見学しますかね〜」
部屋を出て、探検開始!
部屋を出て、ちょっと進んだところにジェイドがいた。
「何か御用ですか?」
パ〜ピプ〜ペポ〜
何か変な音が、正確には音声がタルタロスの中に響いた。
「敵襲?!」
今の警告音ですか!?
「ルーク様っ、どうしよう!」
抱きつこうとするアニスの頭をつかんで阻止!
「…」
ティア、俺は止めたのに、何故俺に白い目を向けるのですか?
杖をしまいなさい(汗
「ブリッジ!どうした?」
ジェイドは現状を確認するため、ブリッジに応答を呼びかけている。俺もその応答を待つことに…
いや、待たなくても分かる。魔物の気配がこのタルタロスを近づいているのが分かった。
はは、どうやら大詠師様のお邪魔が入ったようだ。
「前方、20キロ地点上空に魔物の大集団です!総数は不明!約十分後に接触します!
師団長、主砲一斉砲撃の許可を願いします」
と応答があった。それに対しジェイドは…
「艦長は君だ、艦の事は一任する」
…無責任な(汗
「了解!」
ほほほ、がんばってくれい。
「総員に告ぐ!前方20キロに魔物の大群を確認。総員第一戦闘配備につけ!繰り返す!総員第一戦闘配備に付け!」
艦長より船内に戦闘発令の命がでて、艦内は慌しくなった。
「3人とも、船室に戻りなさい」
「…はぁ」
「グリフィンは単独行動をとる種族なの、普段と違う行動の魔物は危険だわ」
俺のため息を聞いたのか、少し急かす様にティアが忠告してくれた。
ズガガガガガガッガガガッガガガン!
部屋に戻ろうとすると、突然タルタロスが大きく揺れた。
「きゃ!」
「おっと」
ティアが此方に寄りかかってきたので、反射的に抱きとめる。
「…大丈夫か?」
「え?…き、きゃああ!」
「ひでぶ」
突き飛ばされました。そして…
ドゴっと壁にぶつかりましたとさ、お終い。ってナンデヤネン…
『…』
はい、そこのネクロマンサーとフォンマスターガーディアン。哀れむような視線はやめなさい!…かなしいから(泣
「…こほん、どうしました?」
「グリフィンからライガが降下!艦体に張り付き、攻撃を加えています!」
艦長からの報告が入る。
「機関部が…うわぁぁぁ!?」
あ、やられた。
「ブリッジ!応答せよ、ブリッジ!!」
またライガかよ…、あぁ、そういえば拾ったライガの卵。あの仔は無事に生まれましたよ皆さん♪
世話は”使い魔”たちに任せています…。妙な芸を覚えなきゃいいけど(ぇ
「…はぁ、またメンドイ事に巻き込まれてるな〜」
「その通りだ」
…断言したのは何処のどいつだ。
声がした方向を見ると、でっかい鎌を持ったおっさんが居た。
「…は!」
ジェイドが素早く譜術で攻撃を仕掛ける。
だが、相手もそれは同じ事、見事に攻撃は防がれ逆に譜術を撃って来た。
ジェイドもそれを難なくよける。
「…流石だな。だが此処から先はおとなしくして貰おうか。
マルクト帝国軍第三師団師団長ジェイド・カーティス大佐。いや、死神使いジェイド」
「ネクロマンサージェイド…!アナタが…!?」
え、ティアさん気づいてなかったの?
「これはこれは、私も随分と有名になったものですね」
「戦乱のたびに骸を漁るお前の噂、世界に遍く轟いている様だな」
「あなたほどではありませんよ。オラクル騎士団六神将”黒獅子ラルゴ”」
なにぃ?コイツがあの六神将の1人か?
「フン…。いずれ手合わせしたいと思っていたが、残念ながら今はイオン様を貰い受けるのが先だ」
「イオン様を渡すわけにはいきませんね」
「ネクロマンサージェイド、お前を自由にすると色々面倒なのでな」
「貴方一人で私を殺せるとでも?」
2人の間に睨み合いによる火花が発生中。
「お前の譜術を封じればな」
ポイっとジェイドの頭上に何かを投げる黒獅子ラルゴ。
降り注ぐように、譜術が発動してジェイドを包み込んだ。
「まさかアンチフォンスロット!?」
ティアが驚くように叫ぶ。アンチ…?なんだそれは。
「導師イオンの譜術を封じるために持ってきたが、こんなところで使う羽目になるとはわ」
「…ぐぅ…っ」
ちっ、しょうがないな。俺は朱緋を抜いて、天井に設置してあった譜石目掛けて炎を打ち放つ。
その瞬間、激しい光がラルゴの視界を覆いつくした。
「アニス、イオンを」
「…!」
アニスは俺の声に直ぐ反応し、隙をついて一気に走り出す。
彼女はジェイドとすれ違いざまに落ち合う場所を確認したようだ。
「行かせるか!」
ラルゴもすぐさま反応する。が、後ろでティアが譜術でラルゴの動きを止めた。
その隙を突いて、ジェイドがラルゴに槍を就き刺した。
「イオン様はアニスに任せて、我々はブリッジを奪還しましょう」
「でも大佐はアンチフォンスロットで譜術を封印されたんじゃ…」
「えぇ、これを完全に解くには、数ヶ月以上かかるでしょう…。でも、アナタの譜術とルークの剣術があれば、タルタロス奪還も可能です」
「分かりました。行きましょう、ルーク」
なんだか、置いてけぼりを喰らったまま話は進み、決定したようだ。
「あぁ、分かった」
てことでタルタロス奪還作戦ミッションスタート♪
「…〜♪〜♪」
ブリッジ前、ティアの譜術で見張りの兵士を眠らせ、今からブリッジに突貫です!
「ティアさん、すごいですの!」
「タルタロスを取り返しましょう。ティア、手伝ってください」
「はい」
はは、俺に用事はないっすか…
ま、見張りでもしてるさ〜。る〜る〜る〜、あれ、涙が止まんないや(寂
ふと、平和そうに寝ているオラクルの兵士を見る。
俺もついでに眠らせて欲しかった(壊
「ティアさんのセブンスフォニムは凄いですの!」
俺の心を知ってか知らずか、そんな事を口にしながら、…火を吐くな!
「あ…」
って、あ!火が兵士に当たって、眠りから覚めました!毒林檎を喰った兵士はミュウファイアで起きるそうですよ皆さん。ってナンデヤネン!
兵士は、直ぐに俺に攻撃を仕掛けてくる。
「…はぁ、まぁ誰も見てないからマジでやるか」
一瞬の出来事、刹那の間に俺は兵士の体を横に真っ二つに切り裂いた。
そして、切り裂かれた体は発火した炎により灰と化した。
「手加減しないって楽だな」
「…ご、ご主人様?」
しまった…、ミュウのこと忘れてた(ぁ
「いいか、ミュウ。今のことは誰にもしゃべ…ってヤバ!?」
何者かが遠距離から譜術で俺を狙っている気配がした。
俺はミュウを抱きこみ衝撃に備えた。そして…
ズガアアアアンッ!
いてぇ…
俺は吹っ飛ばされて、ブリッジの扉に叩きつけられた。
「くそ、どこのどいつだ」
譜術の飛んできた方を見ても、既にそこには人影は無い。
だが、だからこそ、俺は油断した。思いもよらぬ方向からの攻撃に対応できなかった。情けない…
キュインッ!
と音がして、後ろの扉が開く。そして…
「何が起きたの?!」
ガンッ!
後頭部を強打、俺の意識は闇へ堕ちた…
ちくそぅ、ティアよ。何の恨みがあって杖で殴るのさ…