「え、教会を手伝えって?」
あの事件から、少し経った今
家にはバゼットとカレンが加わり、豪い大所帯になっている
でもって、食費も増えるのであった
……まぁ、バゼットの納めてくれる額が半端じゃないので、保ってはいられるが
そして、今、離れに宛がったカレンの部屋にいた
「どうせ暇なんでしょう?」
「なんでさ」
人の苦労を解れっと叫びたいところだがなんとか抑える
恐らくは、何か理由があるはずだ……たぶん
「学校に行って、家事をこなして、バイトに行く。……暇、ないだろ?」
「今、私と話している時間は暇なのでしょうに」
「……じゃあ」
すっと立ち上がり、部屋を出ようとドアノブに手をかける
「待ちなさい」
そんなカレンの言葉と同時に、赤い布が巻き付いてきた
……
聖者の聖骸布で捕まえなくてもいいだろうに
「そろそろ放して欲しいなぁ」
「いいえ、放しません♪」
声のトーンから察するに、にこやかな笑みで言ったのだろう
しかし、俺には恐怖しかなかとですよ、カレンサン?
「──って、どうして服を脱がすっ!?」
いつのまにか、俺の上の服から脱がしているカレン
というか、俺の体には聖者の聖骸布で巻かれているはず
……どーやって脱がしているのか、不思議だ
「今回バゼットがいないので苦労しますが…… まぁいいでしょう」
「……自己完結しないでくれませんか?」
気にしないでください、と言いながらなんだか下まで脱がしていると思われるカレン
「……まぁ」
「……なんですか、その声っ!?」
「いえ、さすがは"剣"、とだけ」
「何見て言ってるっ!?」
「ナニですけど?」
「くそっ、この
似非(修道女(ーっ!!」
──そんな言い争いをしながら、約5分後
「出来ましたね……」
我ながら出来栄えに見惚れます、とカレン
まぁ、なんだ
赤銅色の髪を黒髪にされ、逆立たせれ
身体中には、紋様が(たぶん)油性ペンで描かれ
で、赤い布で腰巻を拵えている
「なんで、こうならなきゃ駄目なんだよ……」
「私の唯一愛着のある容姿ですから」
俺的には、身体中を弄られ、不機嫌なんだが
「まぁ、サドのやることだからな」
「なら、貴方はマゾですね。──あぁ、だから凛の尻に敷かれるのですか」
「マテヤ」
この修道女はどうにかならないんですか?
──やはり、神なんていないんだ
いたら、こんな修道女を許すわけだろうから
「そういうことで、貴方を調教しましょうか」
「──、そういうことってどういうことだよっ!?」
「そういうことでしょう。──貴方の不純の脳ならば理解できると、率直に言ったまでなのですが」
……確かに、調教の意味は分かってるけどな
俺は聞きたいのは『何故調教する必要があるか』なのだ
「そして、何故ベッドに縛り付けられる?」
「SM、調教ときたら拘束でしょう。その手の物を知らないわけ無いでしょう、早漏」
「……OK、分かった。アンタ、絶対に修道女じゃないな」
「お褒めに与り、有難う御座います。──まぁ、機能するんですから気にすることはないのでは、衛宮士郎」
聖者の聖骸布で、ベッドに固定されている俺の上に乗ってくるカレン
……こんな使われ方して、聖者の聖骸布も泣いてるだろうなぁ
「私、最近欲求不満なのです。……手伝いなさい、衛宮士郎」
「そこいらで、独りでしてろ。自慰はアンタの習慣だろ?」
「──言葉遣いがだんだんと私好みになってきましたね。」
「なぁ、サドにマゾって……どんな変態だ、アンタ?」
「さて、この前の続きでもやりましょうか。──ここなら心置きなくできますから」
雰囲気を台無しにする会話をしながら、法衣を脱いでいるカレン
脱ぎ方に色気を感じる
さすが、自ら娼婦というだけあって、男を悦ばせるやり方を身につけてるようだ
「あ、そういえば」
「あン?」
「その身体の紋様ですが…… 呪ですので、一生落ちませんから」
「……は?」
カレンの意外すぎる発言に、抜けたような声を出してしまった
……普通に、水性ペンで書いてるかと思ってたぞ
「なぁ、落とせるか?」
絶対に拒否されると、薄々感じながらも、カレンに訊ねる
「何故落とす必要があるのでしょう?」
「何故って、そりゃあ──っ」
この姿が嫌だから
そう言おうとする前に、唇に柔らかく温かいものが触れていた
そして、ゆっくりと離れていく
目の前には、カレンの顔があった
「静かに出来ませんか、衛宮士郎」
間近で見るカレンは、仄かに頬を染めつつ、口は微笑み、妙に淫靡だった
「折角の秘め事、誰にも知られたくはないのでしょう?」
そんなカレンの声が、頭に響く
「か、れん?」
「始めましょうか。──馬鹿な女の慰めを」
†††
「……で、こうなったと」
「──予想外の出来でした」
遠くで、遠坂とカレンの声が聞こえる
「予想外じゃなくて、想定内だろ、絶対に」
ぼそっと、呟く
「いえ。事が終われば直るものだと思っていましたので」
が、聞こえていたらしく、やや不満気な声が聞こえた
「ざけんな、バカシスター」
「早漏が改善出来ただけ敬いなさい、朴念仁」
「つーか、オレが早漏じゃなく、アンタがおかしいんだろう、娼婦め」
いつの間にか、カレンと向き合いながら言い合いをしてるオレ
それを、先程までカレンと話していた遠坂が
「……士郎って、あれはあれでいいわね」
とかぼやいてるし
「ワイルドでいい感じです、先輩……!」
なんて、握りこぶしを作っている桜もいる
「ほら、先輩方も納得しているでしょう?──観念しなさい」
「うっせぇっ! 元に戻しやがれっ!!」
「それはそうと。有耶無耶にしてしまった、教会への手伝いの件ですけど」
「……有耶無耶にしたのはアンタだろ。やらねぇからな」
「手伝えば、解呪くらいしてあげたのですけどね……」
「卑怯だぞ、アンタ。──やればいいんだろ、やればっ!!」
で、結局
オレはあの嫌な場所で、手伝わされることになった
道連れとして、ランサーと金ぴか(小)も引っ張って行ったけどな
まぁ
「さて。今日もやりましょうか」
「……アンタ、女としても、若干イカれてないか?」
「うるさいですよ、
士郎」
毎日、カレンを抱けるという特典があったことだけはよかったのかもしれない
「って、浮気か士郎っ!! こんちくしょーっ!!」
「姉さん、落ち着いてくださいっ!! ──ちゃんと綿密に計画を!」
「……二人とも、殺る気満々ですね」
「何気に貴方もです、バゼット。"斬り抉る戦神の剣<"を携えていますよ?」
「セイバーこそ。"約束された勝利の剣<"が剥き出しになってます」
「……止めなくてもいいんでしょうか?」
「止めれるものなら止めてみろ、ライダー。恐らくは、"全て遠き理想郷<"でも防ぎきれん」
「絶対に無理ですね。──御武運を、士郎」
「──理想(を抱いて戦死しろ、小僧」
ある日の某家の居間で、こんなことがあったなんてことは知らなかったけど