張り


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 ジャズの入門盤というのは、聴きやすさもあるのかも知れないが、それを聴いてもう金輪際聴かないと思うことなく、聴き続けるなにか引き金のようなものを持っていると言うようなインパクトが必要なのだろう。そしてこれぞジャズなんだと思わせるある種の香りを持ち合わせていなければならない。そういう意味ではこの盤などは、インパクトの面でも、これぞジャズという香りを持っているものであるということにおいても多分誰も異論はないのではないかと思う。
 ブルーノートデビュー作にしてこれ1枚きりしかリーダーアルバムを残さなかったというのだから、コルトレーンにしてみれば「金輪際」だったわけだが、これほど充実したアルバムに仕上がったのは、リハーサルを2日行うというブルーノートならではだろう。
 他の楽器もそうだが、コルトレーンのテナーの音の「張り」、これが強烈に印象に残る。ルディ・ヴァン・ゲルダーの優れた録音技術おかげだけではなかろう。彼はいつの時にも全力投球だったと思うが、ハードバップのスタイルの中でひたむきに吹くことで自然と音となる「張り」なのだと感じる。彼のテナーに特徴的な「粘り」にもクセになるものがある。これに惹かれるとやめられなくなる。音はどちらかと言えば、テナーらしからぬとも言えるだろうが、これがまさに彼のテナーなのだから、好き嫌いはあろうが確固とした存在感を保持している。
 フロント3管編成の中で、際だっているのは、リー・モーガンとコルトレーンのソロだろう。モーガンは、かなりコルトレーンに互して劣らないところをアピールしようという意気込みがあるように聴ける。フラーはこの二人に比べれば一歩引いた感じではあるが、饒舌な二人と程良いバランスをとっているのだ。しかし、3曲目のLOCOMOTIONなどは、かなり頑張って早いフレーズを披露している。ドリューのシングル・トーンの響き具合が良い彩りを添えてことも加えておこう。
 ミディアム、あるいは急速調なものが大方を占めている中で、I'M OLD FASHIONEDので聴かせるコルトレーンのバラードは、インパルスのBALLADSにはない「張り」を感じる点では、淡泊な感じのするインパルス盤とは対照を見せている。ここでもモーガンのソロには早熟さが如実に感じられて驚く。彼はまだ10代の青年だったのだから。
 
 

JOHN COLTRANE / BLUE TRAIN

JOHN COLTRANE:ts
LEE MORGAN:tp
CURTIS FULLER:tb
KENNY DREW;p
PAUL CHAMBERS:b
PHILLY JOE JONES:ds
Sep 15 1957
BLUE NOTE 1577
1.BLUE TRAIN
2.MOMENT'S NOTICE
3.LOCOMOTION
4.I'M OLD FASHIONED
5.LAZY BIRD