パーカッシブ


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 まずはパーカッシブという印象。ニコルスの打鍵も勿論ローチのドラミングも。ピアニスト兼ジャーナリズムだったそうだ、このニコルスという人。セロニアス・モンクについて研究し書いた曲をアルフレッド・ライオンに何曲も送りつけたけれど、相手にされなかった。売れる・売れないということには頓着なかったライオンが漸く腰をあげてかなりの量の吹き込みをしたけれど、未発表になったものも多く、挙げ句はこのアルバムを最後にブルーノートを去る。
 と、中山康樹『超ブルーノート入門』には大凡そんなことが書いてあった。
 やっぱりどこか奇人風である。曲も演奏も。でもさっきいったようにパーカッシブという点で捨てがたい魅力を感じた。目覚めの悪いようなのっぺらぼうなものを聴き過ぎた時には、突き刺さるように刺激的で、ハッとする。強い打鍵はモンクやエリントのようでしなやかさはないけど、訥々とした指運びのひとつとつに力が籠もっている。
 要所要所で聴ける、引き締まったローチのドラミングは快感である。ブラウン=ローチのタイトな感じがここにもある。
 4曲目LADY SING THE BLUESが耳に残る。LADYとは言うまでもなくビリー・ホリディのことである。メロディの懐かしさと演奏自体のゴツゴツ感が奇妙な感傷を呼び起こす。
 パーカッシブと言えば5曲目などは最たるもので、どこかユーモアも感じる演奏となっているが、奇人ぶりの象徴的表現だなと思って聴いていると、その次などはもっと「ヘン」である。ねじれよたるという塩梅で、モンク研究家らしい演奏だ。この感じが、8曲目にもある。こういうのは、ちょっと勘弁されたい感じではある。
 ゴツゴツしたものが多いなかで、最後のMINEが訥々した感じではあるが他の演奏に比べれば格段にメロディックだ。実にほのぼのとした面を覗かせて心愉しい。アル・マッキンボンの弾むベース音が心地よい。

HERBIE NICHOLS / HERBIE NICHOLS TRIO

HERBIE NICHOLS:p
AL McKIBBON:b
MAX ROACH;ds
1955.8,1
BLUE NOTE 1519
1.THE DIG
2.HOUSE PARTY STARTING
3.CHIT-CHATTING
4.LADY SINGS THE BLUES
5.TERPSCHORE
6.SPININNG SONG
7.QUERY
8.WILDFLOWER
9.HANGOVER TRIANGLE
10.MINE