破片


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 鬼気迫るUN POCO LOCO 三連発のVol.1と違って穏やかに聴けるのは、今の僕には有り難い。ささくれ立ったものは、ご勘弁という気分だからだ。とはいえ、毛色の違うものに仕上げたのは、アルフレッド・ライオンであって、常軌を逸したドラッグ中毒によって奇行が耐えなかったこの49年から53年に録音した「破片」には違いがなかった。それらの「破片」の中には、これぞハードバップという猛々しいものも散らばっていて、それは主にVol.1で聴ける。
 だが、どこでどう心を治めて来たのか知らないが、静かなパウエルがVo.2に多い。適度な躍動感はあっても、殺気だった緊張感が走ることはない。躍動と言えば3曲目I WANT TO BE HAPPYなどは素晴らしい。ジャズ・ピアノ・トリオの原型をつくったと言われる所以の一端を感じる。これは53年のものだから、覇気を感じさせるブラシを聴かせているのは、アート・テイラーだ。同じ53年のもので、対位法的なSURE THINGなどは巧みな掛け合いがあって面白い。その幾分凝りに凝った感じのが7曲目GLASS ENCLUSUREでも聴ける。まさにこれなどは奇才という感じであって、アメイジングなパウエルの片鱗が覗いているわけだ。この着想はいったいこの時代のピアノ・トリオに有りなのか。こんなのを考えているからドラッグで何とか平衡感覚を保っていたのかも知れないなんて思ってしまう。
 このアルバムにはソロも入っていて、4曲目と9曲目がそうだが、これを続けて聴くと可笑しいことに気づく。全く同じ出だしなのだ。曲が変わっただけで弾きっぷりも殆ど同じである。つまらない発見だが、オーソドックスなソロ演奏には、エロール・ガーナー等を彷彿とするものがあって、伝統的な側面も残していたりする。
 10曲目のAUDREYも含めてピアノ・トリオとしての僕が感じる好ましさは53年のものに集中するが、それにしても、そこここで感じる痛々しい程の「狂気」は、空耳なのだろうか。

BUD POWELL / THE AMAZING BUD POWELL Vol.2

BUD POWELL:p
TOMMY POTTER:bGEORGE DUVIVIER:bCURLY RUSSELL:b
ROY HAYNESS,ART TAYLOR,MAX ROACH:ds
1949.8.9,1951,5,1,1953.8.14
BLUE NOTE 1504
1.REETS AND I
2.AUTUMN IN NEW YORK
3.I WANT TO BE HAPPY
4.IT COULD HAPPEN TO YOU
5.SURE THING
6.POLKA DOTS AND MOONBEAMS
7.GLASS ENCLOUSURE
8.COLLARD GREENS AND BLACK-EYE PEAS
9.OVER THE RAINBOW
10.AUDREY
11.YOU GO TO MY HEAD
12.ORNITHOLOGY