祈りを内に秘めて


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 過ぎゆく風景を眺めながら進むという感じにも似て、何かワクワクする高揚感にグルーブという感じのゴリッとした感触が伴ったものを感じつつ冒頭とそれに続く2曲目を聴いていた。ともかく何か先に何かが開けてくるという期待感とか希望とかそんなものがある。
 このアルバムは、単発に曲をセレクトして彼女なりの解釈を施したというに止まらず、アルバムに流れる思いがあるようだ。それは「祈り」に似た趣を差し挟みながら、人間の「生」に思いをはせたいくつかのキーワードを音にしてみたというような。それは、「思想」などではなく女性らしい柔軟な心の襞に住み着いているものを、拾い出してみるような試みだったかも知れない。

 ただ郷愁というだけでない、「祈り」のようなものが籠もったようなどこか陶酔する雰囲気が、間断なく流れるフレーズから感じさせるGREENCLEEVES。
 力の籠もった重量感を感じさせるSMILE。一音一音噛みしめるようなピアノと乾いたベース音から心の深部にその情感が伝わって来る。その乾いたベースが活かされたシチリアーノを素材にした6曲目の静謐な演奏。8曲目はそのものズバリの「祈り」だが、同様の噛みしめる情感を音に託していくに従って陶酔と高揚感を含んでいる。
 CARAVANはグルーブという語感が最高度に音化した演奏である。早いパッセージを畳み込むピアノとベースがあたりの空気を圧倒する。SCABOUROUGH FAIRもグルーブがミディアム・テンポにおいて発揮されていて好対照だ。
 心理的な不可思議を音にしてみたという感じのSIXTH SENSE。不安な表情を感じさせるベースとそれを煽るような小刻みなシンバル音。
 TRANSITIONはコルトレーンのそれだが、エコーのかかった録音でダイナミックな演奏に効果を施し、心理的トランス状態を描写したもののようだ。
 キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットを思わせるBREATH OUT。流れるようなフレーズに物語性を感じる。
 単音でつま弾くBODY AND SOUL。詩情的終焉効果をもたらす。
 
 

AKIKO GRACE / NEW YORK STYLE

AKIKO GRACE:p
LARRY GRENADIER:b
BILL STEWART:ds
April 20,21 2003
SAVOY
1.JUMP
2.CHROMAZONE
3.GREENSLEEVES
4.SMILE
5.CARAVAN
6.SICILIANO THROUGHT MY EYES
7.SCABOUROUGH FAIR
8.PRAY SONG-FOR GROUND ZERO
9.SIXTH SENSE
10.TRANSITION
11.BREATHE OUT
12.BODY AND SOUL