澄んだ空気


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 冷気を含んだ澄んだ空気に浸透していていく音色という清々しさが全編に行き渡ったアルバムだ。とどめようがない好調さがデクスター・ゴードンのテナーから伝わってくる。あまり思い悩まなくても勝手にテナーからフレーズが飛び出してしまうような勢いがあって、一時期この「軽さ」が厭だったことがある。一旦厭だと思ったら、冒頭のIT WAS DOING ALL RIGHTの上滑りしたサラサラ感が軽薄に感じられて、益々嫌いになった。だから、どこか曰く言い難いアルバムでもある。
 AL HAREWOODの単調なシンバルとカツ、カツというリズムキープ。耳に残りすぎるゴードンとハバードの2管のユニゾンの軽薄さ。スラスラ出てくるフレーズの軽み・・・全てはこの一曲が災いしていた。
 いったい、その頃の僕は何を求めていたんだろうと思い返してみても、思い出せない。今は、それらが全て逆に効して、再び素直に聴けるようになった。
 深読みすると、あっさり身を交わされる。そんな風だ。デクスター・ゴードンの意図から外れてしまう。清々しい空気を吸うことに何の躊躇いもいらないだろう。こんな健康的なアルバムもそうない。何も持たずに闊歩する手ぶら感覚だ。タオルも持たずにスッポンポン。露天風呂に入った後、日差しに向かって仁王立ちという感じか。難しいことは、あさっての方にうっちゃって、気軽にリズムに乗って、スラスラ出てくるフレーズに身を任せれば良いのだ。
 何か落ち込んでいて、他人が好調だと羨むなんて屈折した感情が僕にもあったのだろう。まさに音楽とは、自分の心を写す鏡であり、このアルバムは僕のなかの「素直さ」を計る試金石のようなものだ。
 そういう素直さを持って聴くと、2曲目のゴードンがじっくり吹いているバラードが心の奥まで染みてくる。

DEXTER GORDON /DOIN' ALLRIGHT

FREDDIE HUBBARD:tp
DEXTER GORDON:ts
HORACE PARLAN:p
GEORGE TUCKER:b
AL HAREWOOD:ds
1961.4.20
BLUE NOTE 4077
1.IT WAS DOING ALL RIGHT
2.YOU'VE CHANGED
3.FOR REGULARS ONLY
4.SOCIETY RED
5.IT'S YOU OR NO ONE