現代型ハードバップ

ERIC REED / E-BOP

   



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 エリック・リードという人は、どちらかと言えばアメリカン・ジャズの伝統に根ざしたオーソドックスなピアノを弾く人という印象があって、このアルバムでの基本的なコンセプトがハードバップであるということは、彼自身の中では当然出てきておかしくはないとは思うが、何故今ハードバップなのかという、単純な疑問が湧くのだ。それで、ヨアヒム・E・ベーレントまで引き合いに出したのだが、要するにスタイルの如何に関わらず、彼のエモーションがどう発揮されたかが重要であって、二管のフロントを設えてそこから発揮されるエネルギーに自分がどう反応するのかという試みに他ならないという気がする。
 で、このアルバムについてコメントする前に僕の持っている少ない彼のリーダーアルバムや彼の参加しているものを聴き直してみることにする。

ERIC REED / MANHATTAN MELODIES

まずは99年の作品MANHATTAN MELODIES。ニューヨークをテーマにしてピック・アップした曲目をやっているのだが、ニューヨークの猥雑さを哀感を潜ませ、スリルとグルーブさを発揮した好演盤である。レナルド・ヴィールのゴリッとしたベースと良く躍動するグレゴリー・ハッチソンのブラシやスティックが好ましい上に、ピアノタッチを柔軟に変化させるリードのピアノは聴き応えがある。モンクの曲を2曲やっているが、やや懐古的な雰囲気を醸しだし、古き良き時代を陽気でユーモアのある雰囲気で再現してくれる。IRVINGBERINのPUTTIN' ON THE RITZも陽性な趣を持っている。この作品中、僕が当初一番注目したのが、STINGのENGLISHMAN IN NEW YORKだ。切なさを最大限に表現したメロディを活かしたリードのナイーブな側面を感じさせてくれる。他者の作品を採用して、ピアノ・トリオの醍醐味を味わうと同時に、彼のオリジナルにも要注目な作品だろう。彼の中にあるニューヨークとは、スリルもあり、懐かしさもあり、哀愁もあるという具合だ。MANHATTAN MELODIESでは、全体的にはグルーブな感じが強く、ダイナミックな要素と静寂な感じとが織り交ぜられている。
 NEW YORK CITYでは、慌ただしい性急さな雰囲気を出してみたり、ボサノヴァ的な長閑さを織り込んだりして変化をつけている。
 ニューヨークの哀愁を歌うかのようなダイアン・リーブスのヴォーカルを入れたLETTER TO BETTY CARTERもある。しっとりとしたバラードに楚々とした伴奏をつけるリードにまた違った側面がみえる。
 この作品を通しても、彼の素質が如何なるものなのかは垣間見られるのだが、もう少し結論は先延ばしにして次回に繋げよう。

ERIC REED:p
GREGORY HUTCHISON:ds
REGINALD VEAL:b
DIANNA REEVES:vo(track 5)
RENATO THOMAS:oec(track 7)

1.THE 59th STREET BRIDGE
2.MANHATTAN MELODIES
3.HALEMANIA-DROP ME OFF IN HARLEM,HARLEM NOCTUREN,TAKE THE "A" TRAIN
4.NEW YORK CITY
5.LETTER TO BETTY CARTER
6.BLUES FIVE SPOT
7.PUTTIN' ON THE RITZ
8.ENGLISHMAN IN NEW YORK
9.NYC MELODIES:AUTUMN IN NEW YORK,SKATING IN CENTRAL PARK,CENTRAL PARK WEST
10.THEME FROM NEW YORK,NEW YORK,
11.52ND STREET THEME