何故今ハードバップなのか

   



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 考えてみると、エリック・リードが何故今ハードバップかという疑問は、どうやら愚問だったようだ。寧ろ何故いまだにハードバップが生命力を持ち続けているのかという疑問の方が、意味がありそうだ。が、しかしそういったスタイルの是非など問い直しても無用のような気がする。ブルーノートの1500番代がいまだに劣ろいをみせず聴かれている状況がそれを物語っているからだ。
 しかし、中山康樹著『超ブルーノート入門』にこんなことが書いてある。
「もちろん、ジャズという豊かな世界には、マイルスやブルーノートに限らず、それこそ『ジャズ入門書が必要とされるほど』多くの優れたミュージシャンがひしめき、多くの個性的なジャズ専門レーベルが存在します。
 しかし、マイルスであり、ブルーノートなのです。
 そこにジャズの『すべて』があるからにほかありません。
 ただし、ここでいう『ジャズ』とは、狭義の意味におけるそれではありません。
 表現としてのジャズ、可能性としてのジャズの究極の姿が、マイスルの、ブルーノートのなかにある。」
 と。最後の言葉が重要かと思われる。つまりは、過ぎ去ったジャズの過去のスタイルの全てを包含しているということではなく、寧ろジャズそのものの可能性が、そしてジャズを表現する=エモーションの全てがそれらの中に芽吹いているという意味だと思う。いくら足掻いてもそこから出ることは出来ないと捉えない方が良い。しかし、目新しさばかりを追うものの生命が短いという過去の事実は、そのことをも予知している。マイルスやブルーノートが嚆矢を放ったものが、ジャズのエネルギーとなって現在に至っている。そこにこそジャズの可能性を見いだすのだということである。
 愛着には理由がある。しかし、それを言葉にするのは至難である。
 さて、もう少しリードのものを聴いてみることにする。今度は、彼の参加したアルバムから。 

WILLIE JONES V/ VOL..1...STRAIGHT SWINGIN'

 リードがどのようなスタイルにも柔軟に即応出来るということの査証になるひとつの例として、ウイリー・ジョーンズ Vのアルバムから。ここで彼は冒頭からマッコイ・タイナー風のモード手法を基本にやっており、コルトレーンサウンドを思わせるSTRAIGHT SWINGIN'である。次に急速調の早いパッセージを吹く2管のアルトの吹き交うBLUES FOR DAT TAZ。ここでもリードは、モーダルで激しい演奏を繰り広げている。中盤以降の2アルトのバトルがもの凄い。このアルティストは記憶に留めておきたい。次のJESSICA'S THEMEでは一転して静かなムードのセンシティブなピアノを聴かせるリード。管の入らないピアノ・トリオの演奏を堪能出来る。シングルトーンを活かした繊細なピアノだ。4曲目WIDE OPENのダイナミックなモード奏法、5曲目ORNATEのフリー・ジャズぽい演奏の中での荒削りなインプロバイズ、6曲目のしっとりとしたバラード。スロー・テンポの中で、微妙なテンションを持った演奏だ。7曲目のLITTLE GS WALKはエリック・ドルフィー風のアルトが特徴だが、リードはフリー・インプロバイズかかったやや奇抜なピアノを聴かせる。
 かように現代ジャズは、多彩な色合いの混在した内容であるのが特徴と言えようが、それらに即応した奏法をある意味「職人的」にこなす技量が彼リードにも備わっていると言えるが、ある時にはダイナミックに、また時に繊細な弾き方の中に、個性的な表現を籠めている。当意即妙は一夜にしてならずだろう。 

WILLIE JONES V:ds
ERIC REED:p
BILLY CHILDS:p-8
SHARMAN IRBY;as-2,4,5,7
JAMES MAHONE:as-1,2,5,-7
GERALD CANNON:b-1,2,5,7,8
TONY DUMAS:b-3,6
DWIGHT TRIBLE:vo-8
WJ3
August 31,1999 April 10 1996
1.UNTITLED(SYRAIGHT SWINGIN')
2.BLUES FOR DAT TAZ
3.JESSICA'S THEME
4.WIDE OPEN
5.ORNATE
6.BALLAD
7.LITTLE GS WALK
8.NAIMA