可能性としてのジャズ
ERIC REED / E-BOP
   



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 エリック・リードに関して、参加しているアルバムは他にも何枚かあるが、ここで本編について触れておかないと、じらすのはいい加減にせえと言われそうなので取りあえずコメントすることにする。冒頭のAINT' NOTHING WRONG WITH THATなどは、紛れもなくハードバップ全盛の色合いでやはり少々驚くのだ。何故今こんな趣向がと思わないわけにはいかない。しかし穿った言い方をすれば、「作戦」なのだろう。それは続くトラックを聴いていくとその意図がなんとなくわかってくる。ともかくファンキーなハードバップ一色でフロントの響きといい、リードのピアノといい、ブルーノートの諸作を思い浮かべないわけにはいかない。
 2曲目にくると、幾分あか抜けて現代的になる。WALTER BLANDINGのテナーやMURCUS PRINTUPのミュートを効かしたものなどはストレートアヘッドなものだ。リードのピアノにしてもしなやかにして明らかに現代的なフレージングとなっている。3曲目E-BOPにしてしかりだが、テーマの部分のフロントの響きはハードバップと言わないわけにはいかない。4曲目LITTLE GIRLSや5曲目GREW-VYはグルービーでありながら、ハードバップ時代の香りを盛り込んでいて、はてさてハードバップというスタイル、ストレートアヘッド、グルービーという要素とは、どういう関係なのだと混乱してくる。と思いつくのが、前回書いた事柄だ。
「表現としてのジャズ、可能性としてのジャズの究極の姿が、マイスルの、ブルーノートのなかにある。」つまりは、マイルスはさておきブルーノートの諸作に盛り込まれた根元的なジャズの色香が、どのように現代的にアレンジしてもこういうアメリカン・ジャズには避けがたく入り込んできてしまうのだ。これは呪縛なのか、それとも恩恵なのか。
 6曲目のモザイク的な曲想のORNATEのものでは、各自が自在にやっている感じで騒然としているようで、実にうまく纏まっている。後半からリードのソロを挟んでアグレッシブなピアノ・トリオの演奏に入っていくあたりもの凄いが、ここらで彼の「作戦」がみえてくるようだ。ハードバップから現代ジャズ、更には現代ジャズ・ピアノ・トリオへの引き込み線を描いてみせたという。今まで気づかずに聴いていた「脈」あるいは「連絡」を敢えて露出させてみるというのがこのアルバムの意図のように思える。それは実験的ではなく、極自然なやり方で見せてくれたという気がしている。それはどのようなスタイルにも当意即妙で応えることが出来るリードならではだろう。勿論、リードだけがこれをやれるとかやっているというつもりもない。しかし、この機会に「可能性としてのジャズ」を考えるのも良いかと思ったまでだ。目新しさに飛びつくのも良いが、「根元的なジャズの色香」がどこからやって来たものかを振り返るという機会を持つのは意味のないことではない気がする。実際のところ、そのことをリードが意図したかしないかは別としてだが。しかし、何にも気づかずに聴くのが、一番幸せで、作者の意図など考えるのは煩いだけだ。
 さて、続きを聴こう。
 ゴツゴツとしたスウィング感が良いLA BRETH。オーソドックスでありながら、一捻りしたというところだ。次のPERIGIAN RAINでは硬質なリードのピアノタッチと共に、重量感のあるウィットネッカーのベース・ソロが聴き応えある。
 ROLLAR COASTERはこれまたフロントが活躍する急速調のトラックだ。リードのソロの前後にトランペットとテナーのソロが入る。ここではロドニー・グリーンのドラム・ソロが凄まじい。
 最後にモンクのEVIDENNCEが来ているが、モンクのピアノ・タッチを真似ているのが面白い。リードのことを器用貧乏とは思わないが、実に多彩なスタイルをこなす人だ。

ERIC REED:p
MURCUS PRINTUP:tp
WALTER BLANDING Jr.:ts
RODNY WHITTAKER:b
RODNEY GREEN:ds
Oct 15,16.2000
SAVANT
1.AINT'T NOTHING WRONG WITH THAT
2.BOUCING WITH BOO BOO
3.E-BOP
4.LITTLE GIRLS
5.GREW-VY
6.ORANATE
7.LA BERTHE
8.PERIGIAN RAIN
9.ROLLER COASTER
10.EVIDENCE / THINK OF ONE