ハードバップは死なない
YOSHIHIRO OKAZAKI / HANK'S MOOD



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 JJAZZ NETというウェブラジオ番組がある。今まで無料で提供していのが、有料となった。おやおや困った。どうしよう。暫し悩んだ末、やっぱり有料でも聴くことにした。それだけ日本のジャズが面白いということで目が離せないからだ。主にeweレーベルのものが紹介されているが、アキコ・グレースなども入るから特定のレーベルの番組ではない。しかしeweレーベルでは故日野元彦率いる「クラブ・トコ」の影響を受けた力のあるミュージシャンが続々誕生していて、岡崎好朗もそのひとりであって、このアルバムでは兄弟の正典がテナーで参加している。
 前にも書いたが、CD屋のジャズのコーナーに日本のジャズが賑わっている状況はほんの好き者の餌箱であったものから、かなりコンセンサスを得て来ている証拠であろう。それらがどれほどのものなのかをネットで紹介してくれる番組があるのだから、コマーシャルに乗せられているとしても有り難いではないか。
 このアルバムだってその番組で聴いて気になったいたもので、通して聴くと期待を裏切らなかったことは確かだ。タイトルがまず良い。往年のジャズの熱気がストレートに伝わって来る。それがそのまま「音」になっている。泥臭いという程の熱気と言うのだろうか、50年代〜60年代のエネルギーがタイムスリップして再現されたような一種独特の香りを放っている。
 先回エリック・リードのE-BOPのことを書いたが、「根元的なジャズの色香が、どのように現代的にアレンジ」しても「避けがたく入り込んできてしまうのだ」という、それがここでも聴くことが出来る。
 特にタイトル曲HANK'S MOODでものの見事に演出されている。「表現としてのジャズ、究極の姿」が戻るべきところに戻って来るのをまざまざとみる思いがするのだ。やっぱり、ここに戻ってくるかという感慨を持った。ハードバップ全盛時の香り高いテーマを奏でる岡崎兄弟。間のソロを受け持つ上村のベースの弾み具合に圧倒され、抜群にスウィングする三木のピアノは歌心で満たされ、上村、吉岡を含めたリズムセクションの心地よさを体で感じながら続く岡崎好朗のミュートのきいたトランペットが愛らしくもある。
 岡崎はクリフォード・ブラウンを意識しているのだと如実にわかるPOETRAIT OF JENNYでの演奏にホーッと惚けたように聴き入ってしまった。ブラウンの「ウィズ・ストリングス」にあるこの曲。模してなおかつ自分のものにしている姿に慈しみを覚えてしまう。
 対して岡崎正典のテナーをフィーチャーしたYOU DON'T KNOW WHAT LOVE ISがある。
 どれも輝くばかりのハードバップを感じさせるが、中でも圧倒的なエネルギーをぶつけてくる冒頭DEE'S BEET。ONE FOR M。DEE'S BEETでの岡崎兄弟の耳を劈くようなソロは凄い。
 岡崎兄弟のデュオで奏でるALL THE THINGS YOU ARE なども絡み合うフレーズが面白い。
 またソフトな中に懐かしき香りを放つBOSSANOVA#8。ベースのゴリッとした感じが心地よいNANA'S DANCE.。・・・と聴き所が多いが、やはり思うことはこうしてハードバップが色褪せることなく僕の欲するジャズの何ものかに訴えてくるという実感であった。

YOSHIRO OKAZAKI:tp,flh
MASANORI OKAZAKI:ts
SHIN KAMIMURA;b
NARIYOSHI MIKI;p
DAISUKE YOSHIOKA:ds
Feb 17,18 Mar 25,26 2003
ewe
1.DEE'S BEAT
2.BOSSANOVA#8
3.HANK'S MOOD
4.PORTRAIT OF JENNY
5.ONE FOR M
6.ALL THE THINGS YOU ARE
7.NANA'S DANCE
8.YOU DON'T KNOW WAHT LOVE IS
9.WILL YOU STILL BE MINE ?