美旋律てんこ盛り
CHARLES LOOS / FRENCH KISS



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 自分が選んだものでもないのに強制的に同じ空間にいるが為に聴かされる音楽というのは、趣味にあっていれば良いけれど、好みでもないものを聴き続けなければならなくなった状況というのは、拷問にあったに近い。その最たるものが、他人の車に同乗して聴かされるBGMだ。他人の趣味がわかって良いのだが、目的地につくまでの間、一定時間帯をそれに拘束される苦痛と感じ始めるといてもたってもいられなくなる。そいうのが鳴り始めるや「あちゃー」と心の中で悲鳴をあげながらも、相手に悪いからなに食わぬ顔をしていなくてはならない。好みのジャンルのものなら、多少傾向が食い違うというのならまだしも、勘弁してくれというものを相手が気持ちよく聴いているだけに、それを消せとは言えないだけに、会話で誤魔化すより他に手だてがないことになってしまう。こういう場合、僕には同じ人間の作ったものだし聴いているものだなんて、寛容な人類愛を持って許せるという度量は持ち合わせていない。
 さて、このアルバム。長いこと僕の視界をちらついていたにも関わらず、そして何度かこれについて書こうと思ってみたものの、どうもいけなかった。内容がフランスのヒット曲、シャンソンなどで占められた「美旋律」のてんこ盛りだったからだ。こういう類のものをやるピアノ・トリオにヨーロピアン・ジャズ・トリオというのがあるが、一時いいなと思った時期もあったのだが、どうも遺憾という感じで遠ざけてしまった。異ジャンルのヒット曲などをジャズに料理して演奏するという趣向が、アルバムの中に一、二曲ならまだしも、殆どというのは逆に苦々しく思う。さっき云った同乗者の苦痛の空間を思い起こさずにいられない。まあ、そう書いても良かったのかも知れないが、暫く時期到来するを待つことにした。個人的な気分や嗜好の問題だから、すっととけ込める人も当然いるわけだが、きっと「許せる」時がくるに違いないと思った。
 さて今朝である。よく寝た。目が覚めてやっぱり朝はピアノ・トリオだよなということで、もしやと思って取り出し、幾分霞んだ頭で聴いていた。うーん、まあ許せるな。でもドラムがちと煩い。朝っぱらからドカドカと忙しない。この塩梅なのだ。美旋律に被さるドカドカドラムやベースのコンビネーション。それがアルバム全部という状況。気分屋の僕には、これが許せる時とそうじゃない時とがあって、客観的になんかどうのこうの言えない。
 事実だけ云うと、さっきも書いたフレンチ・ポップやションソンという甘美な名曲をすこしごっついドラムやベースが案配されたピアノ・トリオ盤であること・・・それしか今のところ言えない。僕の「今」の感想では、時と場合によって「許せる」という範囲。さて如何。

CHARLES LOOS:p
BRUNO CASTELLUCCI:ds
BAS COOIJMANS:b
2003.2.7
1.LÉTÉ INDIEN
2.LA JAVANAISE
3.CHEZ LAURETTE
4.COMMENT TE DIRE ADIEU
5.MON VOISIN
6.L'AIGLE NOIR
7.LES COPAINS D'ABORD
8.LA CHANSON DES VIEUX AMANTS
9.MA PRÉFÉRENCE
10.LA CHANSON DES JUMELLES
11.UN JOUR TU VERRAS