荒々しいピアノ・レストリオ+1

THE MOST(多田誠司) / MUCH,MORE ,THE MOST

SEIJI TADA:as.ss
MASAHIKO OSAKA:ds
MORIHIDE SHIOTA:b

guest:
AKIRA ISHII:p
JAN 30,31,2001
ewe

1.MUCH,MORE ,THE MOST
2.CRISTAL MESSEGE
3.THE SPHINX
4.C'EST LE VENT,BETTY-a,k,a "BETTY BLUE"
5.SOME OF THE THIGS I HAVE
6.FONTANA DI TREVI
7.NON'S DILEMMA
8.SOMETIME IN THE SNOW
9.UCHIIRI

 圧倒的な音圧のベース音とドラムが掴みかかってきて、瞬時に緊張が走る。そこへ多田の吹きすさぶ暴風のごときアルトが荒々しく鳴り響き出す。
 多田誠司率いるピアノレストリオ、THE MOST。それにゲストで石井彰が数曲加わったアルバム、MUCH,MORE 、THE MOSTである。ピアノレスでアルトとソプラノを持ち返る時の多田は荒々しく、石井が入ったワンホーン・カルテットでは、ある時リズミックににある時静謐な石井のピアノとからみあい情念深く吹く様は、絵巻ものの情景を眺めるような趣がある。
 この所、多田誠司をリーダーとするアルバムを3枚立て続けに入手したのだが、それぞれに特徴を持った異なった雰囲気のもので、このMUCH,MORE ,THE MOSTはTHE MOSTと冠したグループでのファースト・アルバムとなる。既にサード・アルバムBECAUSE OF YOUが出たばかりだ。
 三種三様な内容のものを聴くなかでは、ビ・バップを基調とするTHE GIGもかなり鋭さがある内容だが、このピアノレス盤は、一段と多田の荒々しさが目立ってきこえる。
 バケツの水をひっくり返したような嵐を思わせる冒頭のMUCH,MORE,THE MOSTで既にその真価がわかる。大阪昌彦のドラムスの凄まじい打擲と鋭い多田のアルトがぶつかり合い、塩田哲嗣の重量感のあるベースが腹に応える。
 続くCRISTAL MESSEGEに石井が加わってリズミックに躍動するリズムセクションの上を多田はソプラノに持ち替えて旋律を慌ただしく放流する。
 こういう具合に大体交互にピアノレスと石井が加わったカルテットのものが案配されているのだが、オーネット・コールマンのTHE SPHINXにせよ静謐な石井のピアノから始まる4曲目にせよ情念の荒々しさが彼の持ち味であろう。それがピアノレスでは顕著となって鋭さが増すという具合だ。それにいやまして大阪のドラミングの荒くれ様が聴き所である。痛いという程のスティックの感触である。
 都会的センスの中に8ビートの気持ちよさと怒濤渦巻く部分を併せ持ったFONTANA DE TREVIやブランフォード・マルサリスのピアノレス盤TRIO JEEPYを彷彿とするNON'S DILEMMA。石井のオリジナルであり彼のファースト・アルバムにも収録されたSOMTIME IN THE SNOW。そいて大阪の荒々しいドラミングの上を走り回る多田とそれを追いかけるような塩田のベースランニングは急速調に突っ走りアルトのうねりがもの凄いUCHIIRIなど聴き所が多い。
 



Copyrite(c)JAMAL
2001-2003
All Rights Reserved