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JAMAL.
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*聞く(聴く)力-その2*
 
 

最近の人は、聞く力が弱まってきているらしい。思い当たるのが、若者の会話だ。なにせ私が、僕が、俺がとまず自分のことを話したがる。だけど、相手の話など半分も耳には残っていない。聞いて貰うことが先決で、相手の話に耳を傾けて、相手の気持ちをくんで話を続けさせ、もっと話を引き出そうなんて気はさらさらない・・・かのようである。

 僕の仕事の関係で、よくお母さん方に話して貰って、お互いの体験を語り合って貰い、共通した話題で、更に話し合うということを設定することがある。

 障害を持った我が子を育てていく上で、絶望感とそこからの回復、心の葛藤や家族への影響など、それこそ言い尽くせない思いを語って貰う。障害の程度や内容は違っていても、どこかで共通するものがあるから、必ずと言っていいほど、もらい泣きが生まれる。それは、語ったお母さんの気持ちが、自分の嘗て抱いた気持ちを再現させてくれるからだ。

 語ったお母さんも、そうなのよってもらい泣きしたお母さんも、そういう時間を持てたことを感謝し、何か清々しささえ感じて時間を閉じる。僕は、何度となくそういう経験を共にさせて貰って、語るということ、聞くということを改めて考えさせられた。

 こういう場合の聞くということは、共通の経験と思いがあるから、聞くと同時に語っている人と同時に、心の中で何かかにか語っているのだろうと思う。「そうなの、そうなの」とか、「そういえば、うちの子も」とか「ほんとにそうなのよ」とか。

 ところが先の若者たちの場合、それがない。人の話をきっかけに自分を語ることに必死なのだ。とにかく聞いてほしい。その気持ちが先立つ。かと言って彼らが、集団の中で孤独とか、孤独な集団だとか言うつもりはない。

聞いてようが、聞いてなかろうが、喋ったことですっきりする・・・のだ。それは、そういう場で喋れない人の後味の悪さ、孤独感から察せられる。僕自身が、そうだったから、よくわかる。

 そういう口べたは、聞いて貰いたいけど、話すのが怖い、恥ずかしい・・・で、うじうじしているうちに時間が経ってしまい、何も喋れなかったことを、ひどく後悔する。かといって、その場で他の人が話している内容をよく聞いているのかといえば、些か疑わしいのだ。「あんなに、喋れたらいいな」とか思っているけれど、それはただ彼の口がパクパク動くのを呆然として見ているだけなのだ。だから、本来的な意味での「聞く」とは意味合いが違って来る。

 よく喋る人が、生来お喋りだったかと言うと、そんなことはないと今ならわかる。で、僕自身がなぜその口べたから抜け出たのかは、忘れてしまった。あっけなく。もう、あんな辛いことは思い出したくないからかも知れない。

 ただ、こんなことを思っていたのかも知れない。つまり、自分の喋りたいけど喋れないという煩悶を、一旦やめて、とことんじっくり相手の話に耳を傾けてみよう。たぶん、僕はそういう言葉の行き交う中で右往左往していたのだろうけれど、意識を集中させて聞き入ろうと踏ん切ったのだと、おぼろげに思い出すのだ。

 で、気がついたら自分も口から言葉を発していた。たぶん、そんなことだろうと思う。

だから、自分が喋ることより、相手の話を聞くことが先なのだというわけだ。で、気が向けば喋ろう・・・と、そのぐらいのあっけらかんとした気持ちになる・・・・そういうことに気づいたのだ。
 で、何か心に引っかかってくるものが、たいていある。その気持ちを素直にポンと心から放り出すように喋る・・・そんな具合だったんだろう。(続く)


Jazz徒然
若手の先鋒に期待!
Peter Beets
New York Trio-Page Two

Criss Cross

December 16.2002
Peter Beets:p
Larry Grenadier:b
Willie Jones V

1.Groove Merchant
2.Paradox
3.For Simon
4.Without a song
5.It has happend
6.So What/Impression
7.Chelsea Bridge/Upper Manhattan Medical Group
8.In a Hazy Mood
9.Night mist Blues

 ひとまずPeter Beetsのことは置くと、この盤などは、ドラム好きとベース好きで意見が分かれるなと思った。確かに疑いもなくLarry Grenadierのベースにはぐっと惹かれるものがある。しかし、僕はドラム好きの立場から言うと、Willie JonesVには一目置いている。彼のリーダーアルバムStraight Swingin’以来注目していた。叩き出すドラムは決して派手ではなく、しかしカルテットにしろトリオのものにしろ、洗練された巧みさがある。リズムの「匠」といっても良いだろうか。若いのにこれだけの技量を身につけているのには脱帽する。出だしのThe Groove Merchantや次のRollinsのParadoxそしてBeetsのオリジナルFor Simonなんていったいどっちが素敵か。右往左往してしまう。グルーブ感のあるナイスな演奏だ。しかし、Grenadierのベースには正直言ってぐっと来る。

 ひとまずおいたBeetsに戻ると、この人はもちろん若手であって勢いがある。だから、オリジナルを多くやる。先週書いたJoe Chindamoとの比較をすると明らかにキャリアの差が出てくる。だが、寧ろ新鮮なとれたての野菜のように瑞々しい。

So Whatである。ここで三者の技量が一気に吐き出される。見事と言うしかない。爽快に疾走する。繋がってimpressionsが飛び出す。自然な繋がり方でうまい。

 続いてChelsea Bridge/upper Manhattan medical Groupという少々ダルな感じの演奏の後に抜群にスウィングするものが来る。この緩急の組み合わせがまた良いのだ。いや凄く良い。

 僕は若手には、変に出来上がった洗練さ等持ってほしくない。寧ろ未熟であっても勢いがあって欲しいと願う。その方が大成する見通しを感じる。彼の場合は如何や。そういった意味では、JamalのNight mist Bluesなんてのを聴くと、途中からテンポを変えて溌剌とやっていて小賢しさなどない。Grenadierのベースがはじけ飛ぶ。これが良い。
 
 くりかえし聴きたい盤だ。