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聞く(聴く)力-その5*

 

 
 
かなり混乱した話になったけれど、なんのことはない、ただ直感的に愉しめるようになればよいということだ。
  しかし、それをどう表現し言葉にするかとなったときに少々厄介なだけである。青山はこう言っている。
「形象のなかに観念を刻みつけるのが、文学技術の最終段階だとバルザックはいひました。」と。
つまりは直感が「凄い」と声をあげたその「凄い」はどういうことを指し示しているのかを言葉で刻み込むことが出来るかという技術の問題になるわけだ。
 で、また話は青山二郎の文章になるけれど、彼がバッハについてかいているものがあった。「バッハの音楽」というものだけれど、
「私は西洋音楽といふものを鑑賞することが出来るが、西洋の音楽家なるものを本当に意味で理解することは出来ない」で始まるものだ。
 で、非常にわかりずらい文なのだが、どうやら単に音を聞いただけでは「バッハを聞いた」ということにはならない。でも、「音楽語辞典」に載っているような言葉を並べた「音楽批評」なるものを信じることは出来ないということだ。それとゴールドヴィルヒという人物が不眠症を治すためにバッハに依頼したらしい。で、眠れるようになったという事実がひとつ。それとセシル・グレイという人が書いたものを読んで青山自身が眠れる気がしたという優れた文章がある。
ちょっと長いが引用すると
「バッハは如何なる時代にも属さない。如何なる範疇にも置かれない。彼は音楽批評および美学の最大の問題である。バッハ以後の人々を扱う際に我々が使用する、観方や寸法の精巧な制度はひとつとして応用され得ない。時代時代で異なった彼の姿を見る。けれども傾向上相反する一切の楽派が、その師として主張することは一致する。---バッハは音楽家中の最も抽象的な人として、正しく目されえる」
というものである。またシュワイツァの言葉も引用している。
「バッハ自身はその作品の異常な偉大さを意識しなかった。その作品が時代に先立つことを、彼以上意識しない者はなかった」と。
 これらの言葉の中にはなにひとつ音楽理論や小賢しい音楽用語など差し入れていないにもかかわらず、それらを用いた如何なる音楽批評より説得力があり読んで得心して眠れるのだ。
 こうなると自ずと音楽理論などを排し、素人でもわかる言葉で本質を言い当てる表現が如何に重要かが納得される。
 ともかくそんなことには頓着なく僕は出来ることなら青山を納得させたようなものを書けたら良いとは思うがかなわぬ夢だろうと思う。
 僕は出来ることなら「凄い」で済ましたいのだ。CDのコメントを書くことより、ただただ聴いている方が百倍愉しいと常々思っている。それを何を好きこのんで書いているのかと疑問に思うことしきりではある。

JAZZ徒然

やけくそアルトに強きのピアノ

JACKIE McLEAN: HAT TRIC

JACKIE McLEAN:as
JUNKO ONISHI:p
NAT REEVES:b
LEWIS NASH ds
somthin'else 5581
1996.1
1.LITTLE MELONAE
2.A COTTAGE FOR SALE
3.SOLAR
4.BAG'S GROOVE
5.WILL YOU STILL BE MINE
6.LEFT ALONE
7.JACKIE'S HAT
8.SENTIMENTAL JURNEY
9.BLUESNIK

 

やけくそである。何がってMcLEANの吹くアルトがだ。しかしこのやけくそが味だ。味と言えば大西順子のピアノも味ではある。否個性と言うべきか。個性と個性の張り合い。これほど鮮烈に個性を見せつけれるという感じも近年あまりない。寄り添うどころか張り合い或いは一騎打ちというところかな。天下のMcLEANを相手に大西は一歩も引かず。なんと強気な女だろう。昔取った杵柄でもなんでも良いからかかってきなさいよってなぐあいだろうか。いや、案外心中ミーハーな心持ちで嬉しくて堪らないのかもしれない。とにかくのりに乗っている大西嬢である。御大McLEANは娘ほども違う大西がどうでるか探っている風でもある。最初のテーマだけはこういこうと決めて後はお互いどうでるか腹を探っている。結構アレンジなんか作っている風ではあるけれど、じゃじゃ馬相手に掛け合いを楽しんでいる感じが強い。
 実はMcLeanはこの後マウスピースを変えるのだけれど、この頃の吹き方がこんな具合にやけくそな感じであって、80年代後半ぐらいからこの調子である。バラードのA COTTAGE FOR SALEをこんなに力任せに吹かなくても良いんじゃないかと思うが。とにかく一本調子ではある。これが俺の今の吹き方なんだと言われりゃそれまでだが。長年のアイドルだし時々で吹き方スタイルを変えてきたMcLEANだからこんな時があっても許しちゃう。まあ、そのぶん大西のピアノを堪能しようか。相変わらずのスタイルだ。低音を活かし強い打鍵でぐいぐいいく。この人はWOWでデビューして以来殆どスタイルを変えない。約10年の短期決戦だとはじめから決めていたかのようである。
LEFT ALONEだ。僕はやっぱりMAL WALDRONのすりきれて針飛びするアナログ盤のあの味が一番だと思っている。これ以上の哀愁はないというほど好きである。アルトの音がまるで違うのだ。
大西がMcLEANをテーマに書いたJACKI'S HATは勢い良くて良い曲だ。ジャンプする感じでドラムソロなんかもあって面白い。
やけくそに少し疲れが出た感じ?SENTIMENTAL JURNEYだ。PRESTIGE盤を最初聴いた時には、ホホーっと思ったが。大西も少しやんわりムードだ。だるい感じでいこうよって感じかな。
最後もお馴染みのBLUESNIKだ。結構力入っている演奏でうなる。でもなーって言う感じが正直言うと最後まであった。