熾烈

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 時に僕は、何もせず、無為に時間をやり過ごしてみたくなる。ほんの少しの時間でもそんな風に時を使ってみたいと思うことがある。それぐらい、希なことで何もしないでいることが出来ない男だとつくづく思うのだ。そのくせ疲れ切って溜息ばかりをついているこの頃である。

 ところが、そんな黙って何もしないで聴き入っていたいと思うものに出逢った。

軽々しく言葉を労して遡上にのぼすことが憚れるような類のものである。

MILES DAVISJACK JOHNSON。まさにその境地にぴたっとはまる一枚なのだ。

沈思黙考するに適したアルバムだと思う。

暑いさなか、ドアの隙間から流れる風を感じながら聴く。裸足の足に感じる涼やかさと対照をなす朦朧となるほどの激しいロックサウンド。浸る。ひたすら浸る。滴る汗の滴も気にせず。
 僕はこのJACK JOHNSONを高校時代に兄の持っているLP盤で聴いた。当時の僕がロック少年でBEATLES以外はまやかしだと思う程心酔していた時に、これを聴いたのだ。ジャズとの出逢いの始まりだと行っても良いかも知れない。なんとジャズとは凄い世界だと。このJACK JOHNSONが基調にしているロックのサウンドは、普段聴いているロックの延長線で感じていたのかも知れないが、今聞き直すと、このアルバムを貫くギターの出す刺激的なフレーズやサウンドは、今更ながらドキドキする。その合間に切り裂くようなMILESのトランペットがそれこそ黙って聴けと言わんばかりの熾烈なもので、軽々しくも言葉を差し挟むことが出来ない。もはや、言葉を連ねれば連ねるほど実体から遠ざかる気がする。
 何事にも負けず嫌いな彼の創ったものらしい。黒人社会のヒーローをテーマにし、当時のロック全盛時代に鉄の杭を打ち下ろすかのようなサウンド。ギターとベースを聴けと言ったらしいが、まさにそうである。

MILES DAVIS / JACK JOHNSON
MILES DAVIS:tp
HERBIE HANCOCK:key
JOHN McLAUGHLIN:g
STEVE GROSSMAN::ss
BILL COBHAM:ds
MICHAEL HENDERSIN:fender b
BRNNY MAUPIN:bcl-2
DAVE HOLLAND:elb-2
JACK DEJOHNETTE:ds-2
Feb 18,April 7 1970
1.RIGHT OFF
2.YESTERNOW