耳慣れる


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 まずは彼の「子供」と親しまれているA BOY FULL OF THUGHTSというアルバムのことから話さなければならない。紛れもなく彼はビル・エヴァンスの語法を身につけた人だという印象だった。この頃こういうエヴァンス系のピアニストのものを聴いていなかったせいか、入り口はわかりやすいのだが、中に入れば入るほどやたら、とらえどころがないという感じが拭えなかったのだ。良くあることで、耳慣れしていないせいだと観念してじっと慣れるのをまったのだ。特に彼のオリジナルは取っつきにくい。スタンダードのものやトラッドをアレンジしたものは、それでも入り口が耳慣れていたり、メロディの哀愁感があるせいでまだ良いのだが、平坦なリフから入るオリジナルになると降参であった。難解な哲学書でも読まされているような違和感が付きまとう。はっきり言って愉しめないのだ。よくもまあ以前はこんなものをいい気になって聴いていたものだと思った。それでもSTEN ÖBERGのドラム等は良いなと思って聞き続けていた。
 えーい、ついでだ。次のMOUSSE AU CHOCOLATも聴いてしまえ。で、漸く難攻不落のEGERBLADHも優しく微笑み出した感があった。そうか彼のピアノには詩があるんだ、と気づきだした。この盤も彼のオリジナルで殆ど埋め尽くされている。それのどれもが彼の詩情が漂っている・・・ようだ。もう、ようだで済ましちゃえ。先を急ごう。
 さて本題のSWEET & LOVELYである。今までと違った出だしの雰囲気におやっと思う。詩情でもなく難攻不落の小難しさもない。どうやら聴き慣れたか。いや、そればかりではなさそうだ。間違いなく彼のオリジナルである。演奏スタイルとてそんなに違いがないが、彼が選ぶフレーズがスッと腑に落ちる。所謂エヴァンス派というようなものではないのだ。このところ親しんでいるようなものに近い。次のNIGHT AND DAYなどオリジナルなどでは勿論なく、いわんや彼の今まで弾いてきたエヴァンス語でもないフレーズ。ここでおやっと思ったのがベーシストが変わっていることに気づく。まさかベーシスト一人変わったからって彼の弾き方まで変わるか?
 どうやらここらで謎が解けだしてきた。まずは、僕の耳が慣れたこと。彼の詩情感に気づいたこと。最後に彼も年を取るということだ。つまりは少し角が取れて聴きやすいフレーズを選ぶようになったのではないだろうか。
 そう思って聴いていると100%じゃないが、7割程度はその線でいっているようである。一安心したところで心安らかに眠れる。はー・・・ではなくて、後は堪能するのみ。ひとことだけ付け加えると、タイトル曲SWEET AND LOVELYは彼の特徴が良く出ていると思う。つまり、省略された語法で詩情を籠めて更に聴きやすくしたという今の彼の。切れの悪いウンコのようだが、もうひとつ。タイトル曲の後のONE FOR THE BARTENDERは今までの彼にないユーモアがある。こりゃ、まいった。
(おまけ)最後も良いよ。

BERNDT EGERBLADH / SWEET & LOVELY

BRENDT EGERBLADH:p
SÉBASTIEN DUBÉ:b
STEN ÖBERG:ds
September 14,15 2002
1.LET IT ALL HANG OUT
2.NIGHT AND DAY
3.JUMPY EYES
4.BLUES EYES
5.THEO BOY
6.THE FIRST SNOW
7.FREE HANDS
8.SWEET AND LOVELY
9.ONE FOR THE BARTENDER
10.NIGHT PIECE