黄昏れオジサンの忍恋


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 今誰が一番好きかと聞かれたら、たぶん僕はガーランドだと答えるだろう。かといって熱中しているという具合でもなく、適当におつき合いしているというのが当たっているだろう。最近趣味が変わったのかも知れない。
 話は逸れるが、山本常朝の『葉隠』というのをご存じだろうか。あの有名な言葉
「武士道と云うは、死ぬ事と見付けたり」というやつである。何を突飛なと思うかも知れないが、常朝の思想の中には「陰の奉公」を謳っているが、それと対をなして華麗な横糸によって織り会わされている。それこそは、「恋の至極は忍恋」という情緒纏綿たる金の糸に他ならない。
 なんてことを小池喜明という人が書いているのを読んでほーっと思った。「忍恋」かあ。良い言葉だなとしみじみ思いつつ、このガーランドのSONNY BOYなんてスローバラードを聴くと、楚々とした纏綿たる情緒が重なってくるという塩梅で、年甲斐もなく胸がキュンとなった。こういうのを聴かされると、もうイチコロであって、黄昏れてしまう。そう最近黄昏るジャズが聴きたくなったのだ。それにガーランドがはまってくる。
 このアルバムは彼がプレスティッジに残した最後のもので、先回コメントしたAT THE PRELUDE同様、マイルスの元を離れて残した数多くのアルバム群の中の傑作と云って良いだろう。軽快にスウィングする2曲目や4曲目なども良いが、先ほどのSONNY BOY同様ぐっと来るのが、セント・ジェームズ病院だ。シングル・トーンとブロック・コードを駆使した哀感溢れる演奏である。
 軽快なスウィングの方では、I AIN'T GOT NOBODYなんてテーマが朗らかで、これも黄昏オジサンの第二の青春的であって、元気が出る。
 まあ、全体的にはしっとり系で心静かに黄昏れるにはもってこいのものだと思う。
 最後がいいじゃないか。ボーナストラックだから、本来はなかったものだけど、入れて貰って良かった。

RED GARLAND / WHEN THERE ARE GREY SKIES

RED GARLAND:p
WENDELL MARSHALL:b
CHARLIE PERSHIP:ds
Oct 9,1962
Prestige
1.SONNY BOY
2.MY HONEY'S LOVIN' ARMS
3.ST.JAMES INFIRMARY
4.I AIN'T GOT NOBODY
5.BABY,WONT'T YOU PLEASE COME HOME
6.NOBODY KNOWS THE TROUBLE I SEE
7.MY BLUE HEAVEN