別格


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 この3人は別格という感じがする。実は暫くこれについてコメントする気持ちが湧いてこなかったが、漸く書こうという気になってきたのも、あれこれ他のものを聴いてきて、何気なくその気が起きて来たのだった。何故書けなかったのか云えば、どこか「またか」という引っかかりがあってだったが、そういう気がしなくなったことは確かで、単に彼らを聴くのに間をあけたからというだけではない。いや、それも確かにあって、聴くのに「迷い」がなくなっていることは確かで、やはり他にあれこれ聴いたおかげだろう。
 彼らを「別格」と思うのにも暫くあれこれ考えた。なにか聴いて新鮮だという感慨を得たのだ。
 何故別格かと云えば、インタープレイの可能性において、彼らが引き出しうるものが別格だと思ったのだ。そのことに尽きる。
 ジャケットの彼らの写真をみると、実に年輪を感じさせる面立ちになってしまったなとこれまた感慨深いが、彼らが年を重ね積み重ねてきたものの「執念」には今さながら驚く。いや、「執念」というのはちと違うか。
 このところ、聴いてきたものが、ガーランド、バリー・ハリス、サルダビー等々だが、そういう面々と比較してもやはり「別格」なのだと思わざるを得ない。彼らは親しめるが、キース等はどうも違う。聴いていて、「してやられる」という感じもあってやはり「凄い」のだ。
 喩えて云えば、将棋のようなものではないだろうか。対局して打つ手が無限にある中で、なんだこんな手もあったのかと思わされる驚きにも近い。へぼな将棋では、打つ手は限られているが、名人ともなれば相手の出方以前に何手先まで読んでしまうこともでき、且つ相手次第で戦法を臨機応変に変えていくことも可能だという、そんな境地にも似たものを感じることがある。これもまた喩えがおかしかったろうか。
 彼らにとって決まり事は、スタンダード曲をテーマにインタープレイをするという事以外は、白紙の状態でスタートするのだろう。しかも1回性のものだということ。その限られた決まり事の中で、三者が持ち合わせている技量や音楽性が「別格」であることによってのみ実現するもの。しかも彼らにとって「今」感ずるものの演奏であり、聴いているこのアルバムなのだということを思うと実に新鮮に聞こえる。
 

KEITH JARRETT / up for it

KEITH JARRETT:p
GARY PEACOCK:b
JACK DEJONETTE:ds
July 2002
ECM
1.IF I WERE A BELL
2.BUTCH & BUTCH
3.MY FUNNY VALENTINE
4.SCRAPPLE FROM THE APPLE
5.SOMEBODY MY PRINCE WILL COME
6.TWO DEGREES EAST,THREE DEGREES WEST
7.AUTUMN LEAVES
8.UP FOR IT