奥が深い


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  ビル・スチュアートのドラムは縦横無尽に踊り狂うという感じで、当たり前だが曲ごとにインプロバイズしている。叩き方が尋常でなさは、彼が師と仰ぐジャック・デジョネット相通ずる。ドラム・ソロ以外でも彼のドラムは多彩なリズムを叩きだしインプロバイズしているという表現を使って間違いないだろう。そこが凄いし、彼が参加しているものなら、目ざとく手が伸びる。
 例を挙げれば、ビル・チャーラップとやったBLUES IN THE NIGHTの3曲目のBLUE SKIES。これなどは、もう滅茶苦茶である。右手と左手がバラバラに動くのは普通ではあるが、その度合いが尋常ではない。こんなリズムの取り方ってあるかと云う程である。ブラシを持たせても、ちゃんと音楽している。当たり前のようで、当たり前じゃない。BLUES IN THE NIGHTのソロを聴けばわかる。この盤はベースのジェイ・レオンハートばかりが目立つようだががそんなことはないのだ。
 さて、本盤。ピアノとドラムのインタープレイ。てんでバラバラにやっているようで融合している。そこが面白い。重なり合って増強しあったり、また離れてそれぞれのプレイに遊離していく。こういうものをいくつも聴いているのに、そのつど面白いからやめられない。
 唯一のスタンダード曲のMY OLD FLAMEが出てくるが、デジョンの訥々と弾く「間」に起きるテンションが刺さってくるかんじだ。
 FORMANEKのベースのスクスクという感じで歌うようなソロやベース・ランニングとビル・スチュアートのストンというブラシの感じ、パーンと少し重ためのシンバルの音などを挟みながらのスティック裁きを愉しみながら聴くちょっと小走りのスウィング。はたまたリリカルな演奏でありながら、漂う微妙な緊張感と緩み。
 1と5は似た感じだが、6はフリー・フォーム。どれもデジョンのオリジナルだが、彼の音楽性はどうやらフリーが基でそれに構成感を持たせたオリジナルという感じがする。7はそれが如実に感じ取れる。フリーでは彼らの技量がはち切れる。
 じっくり聴くと彼らの技量の深みが感じられてきて、奥の深さが聴くたびに感じ取れそうで愉しみなアルバムである。

BOB DEGEN / CATABILITY

BOB DEGEN:p
MICHAEL FORMANEK:b
BILL STEWART:ds
1997.4
enja
1.COURAGE
2.MY OLD FLAME
3.SOPHIE
4.WORTH A WEEK'S ANGUISH
5.CATABILITY
6.MC
7.ODE TO SAMMY DAVIS JR.
8.COLLEEN
9.FADING DAY
10.ROUND TRIP
11.PARTING