JAZZ徒然

得難い資質


2003.8

ANTONIO FARAO / FAR OUT

ANTONIO FARAO:p
BOB BERG:ts
MARTIN GJAKONOVSKI:b
DEJAN TERZIC:ds
Oct 9,10 2002
CAM JAZZ
1.SEVEN STEPS TO HEAVEN
2.ANDALUSIA
3.MORE
4.CAT STEPS
5.WALKING WITH MY SOUL
6.FAR OUT
7.FIELDS
8.SIMPLE
9.FOR MY FRIENDS
10.ONE WAY
11.FIELDS



 

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I

 

 出たら必ず買う。ファラオに関してはそう決めている。今度のはボブ・バーグを入れたカルテットで来た。情念的であり、メカニカルなテナーを聴かせるバーグの波長とファラオが持つ怒濤であれ静謐であれ柔軟にこなせ、且つ充足感を期待する気持ちにきっちり応えてくれる彼のピアノはぴったりあっている。
 彼の持ち味の中で鋭いドライブのかかった怒濤の演奏が一番好きである。これは何はなくても相手とするドラマーの勢いにかかっている。猛然と疾走するピアノの運びに圧倒され、更にドラミングの乱舞が重なって渦巻く怒濤こそ最も彼に望むところである。
 ここで云えば10曲目のONE WAYである。ここではバーグのうねるテナーが更に付加されてもの凄い。
 それに類するのが冒頭のマイルスの曲SEVEN STEPS TO HEAVENである。
 彼の繊細なピアニズムを堪能するのなら5曲目のWALKING WITH MY SOULや最後のFIELDSのソロが良いだろう。タッチの鋭利さが息をのむ。
 構成の面白さの点ではタイトルのFAR OUTが良い。テーマが8ビートで来てソロから4ビートになり一気呵成に怒濤の渦に突入する。CAT STEPSもピアノレスでバーグが先行し、後からファラオのトリオとなってユニゾンへと繋がる。これなども結構面白い。
 最後に大地の物語りを感じさせるANDALUSIAのことも触れよう。全体としてはモーダルな演奏なのだが、悠久なアンダルシアをイメージしたテーマから物語の導入となってバーグによるソロが滔々と流れる川のようである。後に続くファラオが更にそのイメージを追う。重いDEJAN TERZICのドラムが重厚さを増強している。長尺な演奏に風景が広がるようでようである。
 かように多彩だが、今回は一歩身を引いてテナーのバーグを表に出しカルテットの演奏を全面に出したものであり、いちピアニストということから「スタイリスト」へ上昇してきた感がある。彼のアルバムの作り様は98年のBLACK INSIDEからとさほど変化はないと思うが、当時から多彩でもあり、籠められた一貫した独創性が聴くものを充足させる。得難い資質をもった存在だと思う。



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