渇望


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  5曲目まで聴いてカーティス・フラーは余計じゃなかったのかと思ったが、意外やこれが良いのである。それほど、パウエルのトリオのものが気に入ったという査証にもなるが、アルフレッド・ライオンが偶然地下鉄であったフラーを参加させたという経緯が突飛ではあるが、計算外の成功だったなと思う。全体的に飛び抜けて良いというものではないと思うが、聴きやすく馴染みやすく飽きない。こういうことが、貴重だなと思う。超絶的と言われる4年前のものより明らかに親しみやすく、僕はこれ以後のパウエルの方が好きだ。
 過剰な情緒を排して、ピアノにひたむきに向かい合うジャズ魂を感じさせる姿勢に擽られるものがある。ある意味淡泊な弾き方ではあるのだが、ジャズで飯を食っているという、抜き差しならない渇望感を音にしていることを強く感じさせる。ドラッグと精神的な病を強引にうち捨てて、再起した彼の「飢え」からの脱出が音に染みこまされている気がする。
 6曲目以降のフラーの他にフロントをもっと増強させようとライオンは録音後後悔したそうだが、僕にはそれこそ余計だな思うほど、フラーのトロンボーン一本が効いている。何せこれはパウエルがメインのアルバムだと強く感じさせるだけに、付け加わるのはトロンボーン一本で十分だろう。このあたりから、アート・テイラーのドラミングも冴えてくる。

BUD POWELL / BUD !

BUD POWELL:p
Curtis Fuller: Tb (6, 8)
Paul Chambers: b
Art Taylor: ds
1957.8.3
BLUE NOTE 1571
1.SOME SOUL
2.BLUE PEARL
3.FRANATIC FANCIES
4.BUD ON BACH
5.KEEPIN' IN THE GROOVE
6.IDAHO
7DON'T BLAME ME
8.MOOSE THE MOOCHE