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JOE FARNSWORTH / IT'S PRIME TIME


JOE FARNSWORTH:ds
ERIC ALEXANDER:ts
RON CARTER:b
JOHN FARNSWORTH:ts
CURTIS FULLER:tb
BENNY GOLSON:ts
DAVID HAZELTINE:p
HARLOD MABERN:p
JIM ROTONDI:tp
Jan 30 2003
EIGHTY EIGHTS

1.SWEET POPPA
2.OLD FOLKS
3.IT'S PRIME TIME
4.STABLE MATES
5.FIVE SPOT AFTER DARK
6.AND SO,I LOVE AGAIN
7.THE THIRD PLANE
8.HELLO,YOUNG LOVERS
9.JOE'S LAMENT

 新しもの好きである。そのくせ古いものが大好きである。現代的なシンプルな空間に、手垢で黒光りした漆黒の生活用具などがあるという調和が殊の外好きな方だ。新しさが一層新しく感じられ、古いものが動かしがたい存在感を持ってくる。ずっと眺めていて飽きがこない。
 最新式のパソコンの傍に、使い慣れたジッポのライターとちょっと時代がかった蕎麦猪口などが珈琲茶碗の代わりに何気なく置かれている。シンプルな配置だけに、何かで埋めてみたくなる衝動が湧く。その空間にではなくて、頭の中に開いている行間に言葉でイメージを埋めてみるのだ。
 今眺めているCDのジャケット。すんなりと伸びた女性の足の裏側が見えているだけ。顔も上半身も見えないが、それを公園のベンチに座ってデイリー・ニュースを読んでいる男の視線で大方想像がつくというものである。
 ジョー・ファンズワースの志向する50年代から60年代のジャズの雰囲気にあった良いジャケットだと思う。とは言え、その時代をそのまま再現するというのはなく、新しさを導入して且つ古き良き雰囲気も垣間見せたというのが、このアルバムの仕掛けであろう。
 メンバーと選ばれた曲目がそのことを、物語っている気がした。気鋭のテナー奏者エリック・アレクサンダー、ピアノ、デイビッド・ヘイゼンルタイン。対して50年代ハードバップ、モダンジャズ黄金時代の立て役者、カーティス・フラーやベニー・ゴルソンときてる。しかし、いったい、どんな按配にこれらが絡み合うのか、想像し難かった。

 でも、わかった。扱う曲は確かに50年代やそこらのものに違いない。が、再現された今そこで鳴っているものは、間違いなく「今」のものなのだ。アレクサンダーはもとより、2曲目で登場するカーティス・フラーにさえ「今」が厳然とあるのだ。そして心地よくドラムを聴かせてくれるファンズワースこそが、この「今」を演出しているというわけである。
 オールド・ジャズ・ファンを嬉々とさせるテーマの数々。しかし、この溌剌とした演奏に一番「新しさ」や「今」を感じるのは、そういう人達なのかも知れないと思った。時代を経て、新しく再生されたジャズ。
 いやぁ、ジャズってだからいいよなって思う。古き者も新しき者も共に「今」を共有する瞬間。これを演出したファンズワースは偉い!全体を鼓舞しつつ、自らも素晴らしいドラム・ソロを聴かせるこのアルバム。何と彼の初リーダーアルバムだというから驚きである。
 ジャズの伝統が生き、更に新しく生まれ変わって、この上ない「恩恵」を感じさせるジャズ・ファンへの贈り物である。

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