臭覚が異常に働くブツ

 書籍やCDを選ぶ時に働くインスピレーションと言うか臭覚と言えばよいのか、それが乏しい時には買うというところまで持っていけないのだが、先日CD屋をぶらりと立ち寄ったものの、棚を眺めながら結局素通りで終わってしまった。
 買いたいという衝動が全然わかない。これがもし中古LPだったらそうはならなかったのではと後で思った。
 あれはまさに臭覚が異常に働くブツである。手垢にまみれ、刷れ傷や黄ばみなどがある際物なのだが、それが僕を刺激する。盤の厚みが気になる。ジャケットの体裁が気になり、そして値段が気になる。ひとつ良さそうなものを手にしては、いやもっと良いものがあるかも知れない・・・このワクワク感が堪らない。
 そして音源を確かめることが出来ない補償を、それら外見で見極めるのだ。これには長年の勘を働かせる以外にないのだが、そこが愉しくて止められない。まさにギャンブル的でさえある。普段パチンコさえしない僕の唯一賭博的欲求を、こういうところで発散していると言えるかも知れない。

NEW FACES-NEW SOUNDS
PIANO INTREPRETATIONS BY
WYNTON KELLY

WYNTON KELLY-p
FRANKLIN SKEETE,OSCAR PETTIFORD-b
LEE ABRAMS-ds
1951.7.25

SIDE1
CHEROKEE 2.CRAZY HE CALLS ME 3.BLUE MOON 4.BORN TO BE BLUE
SIDE 2
5.MOONLIGHT IN VERMONT 6.THERE'S NEVER BE ANOTHER YOU 7.I'VE FOUND A NEW BABAY 8.GOOD-BYE

 

 

 最近CDの新譜のハズレにウンザリしている。もう新譜で満足するというのは希と考えた方が良いのではと思うようになった。自ずと50年代〜70年代辺りがターゲットになってくる。これはあまり良いことではないとは思いつつも、そうなんだから仕様がない。

 極めつけを出そう。BLUE NOTE 5000番台のそれも10吋盤だ。僕のこれからの新しい目標はこれにある。これらに囲まれて死にたい・・・?
 
 W.ケリーだ。ネットオークションで得たのだが、そう高いものではなかった。届いてみて、ジャケットの大きさがまさに10吋を誇らしげに物語っている。更にジャケットの控えめな?シミ。角のへこみなどもない。更に盤の厚みは程々。充分、充分。
 さてかけてみる。ボリュームを目一杯上げて・・・。飛び出すブラシの躍動!やったあ。繰り出すスタンダード曲のオンパレード。これではジャズポリスもグーの音も出まい。ケリーが弾くあったりき車力のスタンダードに肩の関節も外れっぱなし。これが今時の新譜でやったら、そうは行くまい。ジャズポリスにヤジ、怒号、罵倒の嵐に遭うという悲惨な境遇を味わうわけだ。
 じかし、頭が空っぽになるくらいの目眩を感じつつ、こうして僕は大威張りで書ける。古色蒼然、旧態依然?・・・なんでもコイ!
CHEROKEE。このスカーっと抜ける爽快感に自信を得て。CDで感じる疑心暗鬼など吹っ飛ぶ。
 BLUE MOONのミディアム・テンポにして深みのある味。心が嬉しさでホロホロとさざめ泣く。一曲の長さの程々感がイイ。
 裏に行ってI'VE FOUND A NEW BABY。L.アブラムズのストトン、ストトンのブラッシュ・ワークにアラレもなく僕は踊り狂う。そして最後、GOOD-BYEに本気で泣ける。このストレートな歌わせ方は、エヴァンスには出来ない質素がある。
 矯めつ眇めつ繰り返し聴く至福を感じて、僕は最高にシアワセである。

 何せ表裏通してかけても30分とかからない。直ぐ終わる。これが良い。今時のCDを聴き通す我慢強さなんて必要ない。大体にして我慢して聴くという事自体が、どこか道を外れていやしないか。30年やそこら聴き続けたんだから、もう我慢は無用だ。何ならEP盤にも挑戦してみたくなった。


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