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北川 潔
ANCESTRY
KIYOSHI KITAGAWA -b
KENNY BARRON-p
BRIAN
BLADE-ds
Nov 25,26 2003
澤野工房
1.ANCESTRY 2.EQUINEX 3.TIME TO GO 4.I WISH I COULD
5.TADD'S DELIGHT 6.MAHJONG 7.TELL ME WHY 8.HOT HOUSE 9.PINOCCHIO 10.YOU'VE
CHANGED
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乗り始めの一年は、近隣の川・湖の主立ったところは大方漕いでみた。
ゆったりと流れる川もあれば、瀬の多い流れの速いところもありだが、大きく出た岩場をすり抜けていくスリルは格別なものがあった。
一瞬の判断や勇気がものを言う。怖くなって怖じ気づかないように瀬に入ったら、かけ声を出しながら「エッサ、エッサ」と自分を勇気づけて漕いでいく。
悪条件が重なれば「沈」もするが、それが怖いと思っても一旦流れに入ってしまってはそこを通り抜けなければ後戻りは出来ない断末魔だから行くしかないのだ。で、なんとか抜け出た後の達成感が堪らない。
中洲まで漕いでいって一息いれることもある。腰掛けて辺りの風景を眺めるとき、心穏やかさとさっきまでも必死にもがいた熱気がいくらか体の芯に残っているのを感じながら川風に吹かれて過ごすのもまた愉しい。
野生する木々や荒々しい断層が剥き出しになっている対岸の崖を眺めて野趣を満喫しているこの幸福感以上に何もいらない無欲な気持ちになる。
幾年か川の流れに洗われて角が取れた丸い石を手にとって、川の流れに投げ込んだりして一時を過ごすのも普段であれば無為なことに思えるが、そんなことさえ考えもせずそうしている。
そしてこういうところで食べるものというのは、粗末であっても美味いというのもそうした自然の力のお陰だろう。
ある時、テントを張って一夜を海岸沿いのキャンプ場で過ごそうとして、ふと思いついたのが、ここへCDの携帯用デッキでも持っていったらと考えたことがあった。
夜が更けてテントに潜り込み、リュックからとりだしたCDデッキにヘッドホーンを繋いで、気に入ったCDをかけたのだが、これが見事に場違いなものに聞こえるのだ。好きなことをしているところに、好きなジャズを聴くことがこれほど見当はずれなものかと実感したものだった。
野外で過ごし野趣を満喫した感覚と、このジャズを聴く趣というものが如何にミスマッチだったかを思い知らされた。
幾年かの自然によって形を変えた石ころとジャズ。この対比そのものが意味をなさないと云われるかも知れないが、ジャズは石ころに負けている。
実感としてジャズは自然のなかでは野暮なものである。当たり前過ぎることだが、ジャズは室内でこそ聴くべきものだ。テントのなかで聞こえるのは風の音、川のせせらぎ、鳥や虫の音こそ相応しい。
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さて、アウトドアもすっかりご無沙汰となった。インドア派に鞍替えした僕の一番の愉しみでありストレス解消方でもあるのは、勿論ジャズを聴くことである。室内ではジャズは大威張りである。勿論外から持ち帰った石ころにも勝っている。
久しぶりにいいドラマーに出逢えた。ブライアン・ブレイド。反応の良さ、瞬発力・・・DVDを観たせいもあるだろうが、切れの良いスティック裁きが目に映ってくるようだ。ここぞと云うときに間髪入れずスパッと来る一打。ドラムの面白さを感じさせてくれる多彩さ。
北川潔の初リーダー盤ANCESTRYのブレイドのドラムである。スリルを感じさせてくれるドラマーとも言えるだろう。岩場を縫って漕ぎきる時のベストポイントでパドルを水面に当てるあの感覚。水流と上手くマッチすれば、急な切り返しもばっちり決まる。
スパン、スパン・・・と(そう上手く行かずにあえなく「沈」の憂き目もあるが)
ブレイドはJ.レッドマンのアルバムに多く参加している。彼のドラムを聴くためなら、ジョシュアも聴いてみようかと言う気になる。
バロンは当然良いし、4曲目でバロンが滋味溢れるピアノを聴かせてくれ、北川も堅実なプレイをするのだが、このアルバムに限っては断然ブレイドだ。
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