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KEITH JARRETT
THE OUT-OF-TWONERS
KEITH JARRETT-p GARY
PEACOCK-b JACK DEJOHNETTE-ds July 28 2001 ECM
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.INTRO〜I CAN'T BELEIVE THAT YOU 'RE IN LOVE WITH ME 2.YOU'VE CHANGED 3.I LOVE YOU 4.THE OUT-OF -TOWNERS 5.FIVE BROTHERS 6.IT'S ALL IN THE GAME
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I |
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記憶というのは、五感のいくつかが重複して残っているものなのだろうからとも思うが、それでもどうも説明がつかない。
もっと、何か古代から人類のDNAに刻み込まれた根元的なものが呼び覚まされたのではと思う、といったら馬鹿げているのだろうか。
音楽の根元は自然だ言う。風の音、森のざわめき、波の轟き、土の匂い、火の明かり・・・古代の人間が畏怖を抱いた自然を神とし、その祭礼に捧げられ、感情の表現としたのが音楽の発祥であるならば、現代のこの時点で聴いているものが、それらと繋がって遠い古代からの記憶として何かしらの匂いを伴って蘇る、・・・としたら・・・夢のある話だ。
しかし、今や土の匂いはアスファルトに舗装されその下で窒息しかけているし、ビルの谷間の風はエアコンの毒気を含んで奇妙に暑く、爽やかでも、香しくもない。
そこで息する人間の素肌の毛穴は不自然にもそれに適応して閉じたままになっているのでは、到底古代からの呼び声などとおに忘れ去って届かない。奇妙なマトリックスを現実と錯覚してしている次第だ。
にもかかわらず、ふとした瞬間に我々の遺伝子に刻み込まれた記憶が呼び覚まされて、古の人類の営みと交信を始めることもあるのだろう。
音楽を奏でるものが意図しなくても、夢中になって旋律やリズムを刻む渦中に、それが起こることだってあるのではないか。
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血液がサラサラになっていくような瑞々しさを感じるキースのピアノ・イントロから始まりゲイリー・ピーコックとデジョネットの音が重なってグルーブな演奏が展開されていく・・・いつものパターン。でも、聴く度に僕のなかでは以前の記憶が初期化されて、新しく注入される点滴のように血管を通して体に染みこんでくるようだ。
しかし演奏の最中、命あるものの静ずかな営みから発する密やかな音に耳を傾け、あるいは自然のなかで躍動する生きとし生けるものへの生の歓喜に共振する太古から受け継いだ血が騒ぐ・・・。
ああ、この胸騒ぎ。次第に血が沸騰して気化し始める。
I LOVE YOUでのキースのピアはの木の葉のそよぎだ。風はデジョネットのシンバルの連打から吹いてきて、葉を揺らす。次第にそれは渦となって辺りの空気を乱しはじめる。
デジョネットのシンバルの連打に継ぐ、連打・・・が終わると、木の葉が揺れるのをやめたかのように静まる。
オリジナルTHE OU-OF-TOWNERS。荒削ったこういう演奏もいつもの奴だが、注入されたものが麻薬でもあったように僕の脳が旋回始め目眩を起こす。グルーブ、グルーブ・・・。
単調なリズムの連続が体に浸透してきて、気がふれたように踊り出す原始の僕の正体。
愛らしいメロディのマリガンのFIVE BROTHERS。更には、清水が流れる様と水の囁きを恍惚として見、そして聴くキースのソロIT'S
ALL IN THE GAME。
彼らは洪積世の太古からの風、森のざわめき、土の匂い、そして畏れと歓喜をもって捧げた古代からの音楽と共振する瞬間を求めて、営みを続けているのかも知れない。
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