BUPTISTE TROTINGTON / FLUIDE

BAPTISTE TROTIGNON:p
CLOVIS NICOLAS:b
TONY RABESON:d
May 8,9 1999
澤野工房
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1.MY SHINING HOUR
2.BERNIE'S TUNE
3.UIT BLUES
4.I'M A FOOL TO WANT YOU
5.THIS IS NEW
6.NOT FOR DEBBY
7.ONUCA
8.L'AMER A BOIRE
9.BERNI'S TUNE(Alt)

 このアルバムで好きなのは、2曲目BERNI'S TUNEから3曲目、4曲目と続くあたりである。
 旋律の稜線が明確で、あまりヨーロピアンらしからぬところが気に入っている。特にBERNI'S TUNEが良い。
 バプティスト・トロティニョンは、技巧派のマーシャル・ソラール・コンテストで優勝したのだそうだが、確かに技巧的な面で優れているのは感じられる。でも、僕はマーシャル・ソラールというピアニストも含め、技巧ばかりが耳につくものは好きになれない。そういう類のピアニストで更に若い奴とくると、眉に唾して聴くという習い性がある。
 ところが彼を含めたこのトリオには技巧の裏付けと共に、聴くものの心の襞に入り込んでくるナイーブさや何が聴いて心地よいのかという機微にも応えてくれるセンスも持ち合わせている様に思える。
 若くしてベテランの域に達しているようだ。
 「うまいんだけど、ハートがないんだよな」っていうことをジャズ・ファンは良く云う。技巧がなければ、ハートも糞もないのは云うまでもないが、技巧だけで突っ走った新人がファースト・アルバム以降音沙汰なしという例は結構ある。
 
 文章というのは句読点の打ち方一つで随分と変わったものになる。だから、文とは恐いものだと云ったひとがある。なるほど、句読点か。短いセンテンスでこまめに区切る人、長々とセンテンスの長さを特徴とする人・・・色々いる。僕はあまりそこら辺気にしていなかった。
 このBURNIN'S TUNEが良いと思うのも、実は彼の「句読点」の打ち方なのではと思って聴いていると、偶然かそんなところに気を配ったような気配を感じる。実はそれはドラムのTONY RABSONのブラシの入って来方にも感じられるのだ。全く微妙な「間」としてそれは感じられるのだが、これが何とも言えずゾクッとくる。ここらは技では補えない「センス」の域に入ることなのだろう。
 3曲目は、間断ないシンバルのリズムを縫うようなトロティニョンの猛スピードのピアノ・テクニックが光るトラックであり、疾風怒濤の演奏である。
 そして4曲目でとどめを刺す。訥々とした鍵盤運びを混ぜた哀感が堪らない。酸いも甘いもかぎ分けたベテランの味を最早持ち合わせているところが凄い。
 
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