JOHN COLTRANE / COLTRANE

JOHN COLTRANE:ts
JOHNNIE SPLAWN:tp
SAHIB SHIHAB:bs
RED GARLAND:p
PAUL CHAMBERS:b
AL HEATH:ds

MAL WALDRON:p
May 31 1957
PRESTIGE
アナログ

SIDE A
1.BAKAI
2.VIOLETS FOR YOUR FURS
3.TIME WAS
SIDE B
1.SYRAIGHT STREET
2. WHILE MY LADY SLEEPS
3.CHRONIC BLUES

 コンパクト・ディスク、CDなるものが出てきたのは80年代に入ってからだったと思うが、ずっとアナログを聴いてきて(アナログしかなかったのだから、当時はLPといっていたのだが)随分とCDという奴を受け入れるかどうか心の中で闘ったものだった。音の違いはともかく、ジャケットがなにせ葛藤の原因だった。ジャズは視覚的にも愉しむべきだというのは、今でも変わらないことなのだがアナログ時代に育った者には許し難いことだった。この小さくなってペラペラのの紙切れって奴が。頑固オヤジの石頭が思ったことじゃない。20歳代の僕が思ったことなんだから、相当にショッキングな出来事であった筈だ。
 で、今これだけCDが定着している時代にアナログがまた復活してきているようだ。そりゃそうだ。額に飾ってもさまになる大きさで視覚的に訴えてくるジャケットの趣というか質感なのだから。そのうえ、音はCDがやっとこさ追いついてきた今だが、以前など比べようもなかった。ということは、当時3000円台もしたCDというのは、音悪し見栄え悪しその上高いと三拍子揃った粗悪な代物でしかなかったのに、いち早く手にしてホクホクしているもの好きがいたのだから、バカですねぇと思ってしまう。いや、いまだから言えることなのだが。
 とは言え、アナログ盤を聴くには随分と手間と金がかかることは確かで、あのちっこい針がなんでこんなに高価なんだろうって、カートリッジを交換する度に思ったものだった。粗悪なターンテーブルは回転数が安定せずに急に失速したりして、チャーリー・パーカーを聴いてる筈がソニー・ロリンズになってしまう場合もあった。盤にゴミや傷があれば、針飛びしたり同じところを限りなく繰り返したりと悲喜こもごもで、まあCDに比べてトラブルも多いことは確かではある。
 でも、この頃またアナログを集めようという気になってきて、またやっかいだが憎めない奴が恋しくなったのだ。で、その気になったのだがら、アナログジャズなんてコーナーはやめちまってこっちの方に書くことにしようというわけである。ただし、アナログと但し書きはつけるが。特に50年代から60年代のものは、アナログでいきたい。できれば全部と云いたいが、それはちょっと無理。だから、できる限りだが。

 で、やっとこさ本題に入るのだが、このコルトレーンのアルバム。前からCDで買うつもりでいながら輸入盤のアナログディスクを売っているビレッジ・ヴァンガードという本屋(雑貨屋といってもよい)でこれをみつけてしまって、逡巡する間もなく買いとなった。何故か。それはCDより安かったからに他ならないのだが、動機はそれ以前に準備されていた。それを書き出すとまただらだらと長くなるので、アナログ熱愛物語一部終了にして、ホントに本題にはいろう。

 マイルス・ディビス・クインテットのニュー・スターだったコルトレーン。同じくマイルスのもとにいたレッド・ガーランドもいて、さらにサヒブ・シハブなどもいるとなれば、かなり嬉しいのである。冒頭のBAKAIなどは、ちょっと変わった三管の出だしからガーランドが飛び出してくる。この瞬間がまずゾクッとくる。葡萄の皮からプルっと中のゼリー状のが出てくるようなあの感じ。それがその後のコルトレーンのソロにもあって、二度ゾクッと来る。勢い・・・なのだろうがそれだけじゃ説明がつかない。その後シハブのソロもあるが三度目は、こっちも心の準備ができてるからそうはなかなかいかない。
 ところが、また次の”コートに菫”のコルトレーンのテナーで来る。どうも決め手は、1曲目のシハブが吹くバリトンのエンドレスな繰り返しフレーズが「違和感」になって、そこからスルッと抜け出た快感のような気がする。変なところに注目してしまったが、案外意図的な違和感を設定した巧みさにヘンに感心してしまった。シハブの起用がなければ、あの違和はでき損なった筈だとまたしつこく考えたりもする。
 のどに刺さった魚の骨が落ちた感じが、殊更心地よいと思う「コートに菫」のコルトレーンのソロはやはりグッとくる。ガーランドのブロック・コードの味も付け加わって酒も飲んでないのにほろ酔い加減になれるから嬉しい。

 コルトレーンのテナーは「音」が男性的でないからと揶揄されもするが、十分男臭いと僕は思っている。コテコテに繋げるしつこいフレーズが女こどもに吹けるか?汗臭く、埃くさい、煙草の脂臭い男性臭・・・。十分男を感じる。

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