PETER BERNSTEIN / STRANGER IN PARADISE

PETER BERNSTEIN:g
BRAD MEHLDAU:p
LARRY GRENADIER:b
BILL STEWART:ds
2003.8.24,25
VENUS

1.VENUS BLUES
2.STRANGER IN PARADISE
3.LUIZA
4.HOW LITTLE WE KNOW
5.BOBBLEHEAD
6.JUST A THOUGHT
7.THIS IS ALWAYS
8.SOUL STIRRIN
9.THAT SUNDAY,THAT SUMMER
10.AUTUMN NOCTURN

愉楽的なテーマ曲STRAGER INPARADISE。これが冒頭の瞬発力のある演奏の後で来る。
「お、いいな」と思う。原曲はボロディン歌劇「イーゴリー公」のなかの「ダッタン人の踊り」だそうでケニー・ドリューのDARK BEAUTYなんかもやっているらしい。
 
そよげ西風よ 運べ歌を
ふるさとへ 住み慣れしはその郷よ
乙女たちは 群れ遊ぶ
のどかに吹け 春の風
のどかに吹け 春風よ
海原より 山の峰まで
赤き陽に燃ゆる 緑の丘さすらわん
茂る草にまじり咲く
薫り高き花うばら
木の実も熟れたり
そよげ西風よ 運べわが歌

 こんな歌詞がついているそうだが、まさにのどかな風を身に受けて聞こえて来る風の歌のようなテーマで、バーンスタインの弾くギターのしなやかさ、メルドーのピアノ・タッチのカットグラスに射し込む光の屈折さながらの彩と、複雑にリズムを交錯させるビル・スチュアートのドラム等が入り交じって恍惚なる。

 ピーター・バーンスタインはCRISS CRISSからこのアルバムと全く同じメンバーでHEART'S CONTENTというアルバムを出しているが、彼のギターはオーソドックスなもので、特段目新しいという印象はないのだが、組んでいるこのメンバーで特にビル・スチュアートのいつもの破天荒なものを期待して聴いたCRISS CROSS盤の方は肩すかしを食った気がしたのだが、ところが本盤は冒頭からガッと掴まれた思いだった。勢いがまるで違う。勝負に出た!という感じだった。
 躍動感のあるリズムのなかで、バーンスタインがしなやかに、時に鋭く、そして喘ぎながら何かにむかって突き進もうとする焦燥さえ感じさせる。こんな感じ前にあったぞ、と思い出したのが、ウエス・モンゴメリーのFULL HOUSEだ。モンゴメリーのギター、ジョニー・グリフィンのテナー、ウィントン・ケリーのピアノ、ポール・チェンバースのベース、ジミー・コブのドラムでのBLUE'N BOOGIE。ギター、ピアノ、ドラムの勢いや雰囲気はまさにこれ!
 もっと他に共通点はないかと思ってFULL HOUSEを少しだけ聴いてみる。モンゴメリーのオクターブ奏法の光るFULL HOUSE。ジョニー・グリフィンの豪放なテナー。歌心と味のあるウィントン・ケリーのソロ。いいね。次のI'VE GROWN ACCUSTOM TO HER FACEが極上だ。僕はあまりギターのアルバムは聴かないけれど、こういうのを聴かされるとグッときて、ああ、ギターもいいよなって思う。で、さっきのBLUE'N BOOGIEだ。
 お、5曲目バーンスタインのオリジナルBOBBLEHEADなどは、どうだ。8ビートの軽快なリズムでゴリゴリとした演奏。ノリの良さで云えば、FULL HOUSEにかなり近接した雰囲気だ。
 
 そんな具合で、バーンスタインのセンスの良さがアルバム全体に染み渡っていて、メルドー、グラナディア、スチュアートのピアノ・トリオが盛り上げるばかりでなく、随所で唸る演奏を聴かせてくれる。
 聴き比べなどをしてみて、ギターものも侮れない。良いものが結構あると知った。
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