EE MORGAN / INTRODUCING

 BILL CHARLAP / DISTANT STAR
     -------------------------------------------------
BILL CHARLAP:p
SEAN SMITH:b
BILL STEWART:ds
Dec 17 1996
CRISS CROSS
1.ALONG THE WAY
2.WHILE WE'RE YOUNG
3.LAST NIGHT WHEN WE WERE YOUNG
4.HERE I'LL STAY
5.DISTANT STAR
6.BON AMI
7.'39 WORLDS FAIR
8.STARLIGHT
9.THE HEATHER ON THE HILL

  
 ともかくこのアルバム、冒頭がいけなかった。
 最近のCRISS CROSSの新人ピアニストのものを聴いていると、ああ、チャーラップも同じ轍を踏んでいたんだなと思う。ともかく、「社命」でもあるのか、このレーベルのものはピアノ・トリオはモーダルなものがほぼ必ず入っている。のっけからそれで勝負にこられると、ああ、またかと最近はうんざりするようになった。まして、チャーラップにモーダルは似合わない。
 チャーラップがCRISS CROSSに残したアルバムのなかの一枚なのだが、彼のものを聴くなら'S WONDERFULを始めとした日本盤ででているものの方がずっと良い。
 
 このDISTANT STARというアルバムは、「色々やってみました」という彼のちょっと肩に力の入った”苦労”の跡がみえるのだ。最近のものとこれを聴き比べると一目瞭然(?)。要するに小難しいことをやろうとしていて”失敗”したのだ。流石だなと思うのは、彼も、ちょっとまずかったかなという「反省」なのか、それをうち消すような演奏が多々ある。
 例えば3曲目などはどうだ。実に瑞々しい演奏だし、4曲目の歌うピアノでありトリオとしてのスウィング感に溢れていて大器を感じさせる。
 どうもこういうものの方が、ピアノ・トリオの演奏として愛される条件を備えているように思える。それが証拠にこの後彼が率いたピアノ・トリオは、喋りすぎないこと、恰好つけすぎて弄くりすぎないこと・・・ともかくピアノはシンプルに歌うこと、これに邁進しているように僕には思えるのだ。これこそ、愛すべきピアノ・トリオの必須条件ではないか。
 6曲目などは、泣かせるじゃないか。洒落た趣にスウィングしている。と聴いていると粗はかえって少ないのかな・・・なんてちょっと心細くなってきた。別に貶す種にしようと思ったわけではないのだが。
 
 愛されるピアノ・トリオの条件・・・なんて偉そうに云うが、最近の僕の嗜好に過ぎない。でも、わかりやすくあるいは音を省略して、シンプルに歌うことや呼吸を大事にすること。そして歌うかのようなピアノとの間にドラムとベースが逆に”もがくように”して緊張感を作り出し、トータルとして含みのある音像が浮かび上がってくる・・・。これじゃないかなと思う。
 でも、・・・”愛に満たされた”ものばかり聴くと飽食する危険性もある。しかし、飽食したら、不味いものを食ってみればよいだけである。小難しいものや、喋りすぎて音のやたらと錯綜するものを聴いて辟易してみれば、如何にシンプルなものが良いかがわかるだろう。


戻る