EE MORGAN / INTRODUCING

 WYNTON KELLY / WYNTON KELLY TRIO (邦題”枯葉”)
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WYNTON KELLY:p
PAUL CHAMBERS,SAM JONES:b
JIMMY COBB:ds
July 20,21,1961
VEE JAY
1.COME RAIN OR COME SHINE
2.MAKE THE MAN LOVE ME
3.AUTUMN LEAVES
4.SURRY WITH THE FRINGE ON TOP
5.JOE'S AVENUE
6.SASSY
7.LOVE I'VE FOUND YOU
8.GONE WITH THE WIND
9.SURRY WITH THE FRINGE ON TOP

  
 ここ数日というもの、毎日のように聴いた。昔、そういえばそうだったなと思い出す。持っているレコードも少なかったからということもあるけれど、繰り返し繰り返し同じレコードを聴いて、隅から隅までフレーズを記憶してしまったものだった。特に好きなところにくると、パブロフの犬の条件反射じゃないけど、タラッと涎が垂れた・・・。いや、そのぐらいだったということだが、そういう聴き方をもうしなくなって久しい。
 
 こういうシンプルに味わい深く、愉しめ、時にじっくり物思いに耽るには恰好のシチュエーションを提供してくれるアルバムが、今一番だと思う。
 モダン・ジャズ・ピアニストの良い味の要件である滋味と可憐と粋と覇気をこれも持っている。

 特にMAKE THE MAN LOVE MEがいい。これを始め聴いた時、まず頭に浮かんだのが、レッド・ガーランドのWHEN THERE ARE GREY SKIESというアルバムにあるSUNNY BOY とかST.JAMES INFIRMARYだ。
 ケリーというと、躍動するスウィング感というイメージがあったが、こういうのも弾くんだと再認識した。ともかくバラードとか小唄であって、楚々たる軽みの奥に聴いている僕の心の淵にしみいってくるもの・・・これが至福だ。
 感情過多でないところがなにせ良い。
 こういう境地・・・、どうしても連想するのが、今一番興味のある利休という数奇な人物像なのだが、謂うまでもなく 豊臣秀吉の茶頭だけれど、秀吉の政治的な相談役であった彼が一旦本来の茶事を行う所作や彼が設えた茶室が作り出す静謐な空間に居るときの小宇宙の描写(野上弥生子『秀吉と利休』)なんだな。
 ともかく数奇とか数奇者の持つ境地が共通項で、曰く言い難く僕の心を静めてくれる。

 パブロフの条件反射のバラード以外については、毎日聴いていても、その日その日でいいなと思うところが違ってくるが、縦ノリのベースとシンバルの躍動的なリズムに乗って、言い含めるような説得力を持った部分と軽みを感じる節回しの組合わさった、ケリーピアノの味にかわりはなく、折に触れ何度も引っ張り出しては聴くのだろうなと思う。
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