EE MORGAN / INTRODUCING

DUKE JOEDAN / FLIGHT TO DENMARK

DUKE JORDAN-P
MADS VINDING-b
ED THIGPEN-ds
Nov 25 Dec 2 1973
SteepleChase
SIDE 1
1.NO PLOBLEM
2.HERE'S THAT RAINY DAY
3.EVERTHING HAPPENS TO ME
4.GLAD I MET PAT


SIDE 2
5.HOW DEEP IS THE OCEAN
6.GREEN DOLPHIN STREET
7.IF I DID-WOULD YOU?
8.FLIGHT TO DENMARK
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  NO PLOBLEMという曲は、謂うまでもなくデューク・ジョーダンの作曲で仏映画『危険な関係』のテーマとして知られているのだが、バルネ・ウィランが特別参加したジャズ・メッセンジャーズによるサントラ、そしてバルネ個人のアルバムに何度も演奏されてきたから、NO PLOBREMないし、「危険な関係のブルース」とはバルネの十八番みたいに思っているところがある。LA NOTE BLEUE,MOVIE THEMES FROM FRANCE,NEW YORK ROMANCEといった具合で、フランス人バルネがフレンチな味わいで奏でる哀感のあるどちらかと言えばかなりハード・タッチな妖しさを表現した演奏という印象だ。フランス映画の主題曲でバルネ自身が参加してサントラまで作ったという経緯があるから、あながちバルネのものじゃないとは言えないところもある。

 一方ジョーダンは、このFLIGH TO DENMARK以来SteepleChaseレーベルに思い出したように繰り返し録音しているようだ。残念ながらそこまで、研究(?)するほど、ピアニストとしてのジョーダンに注目してこなかったから、他のアルバムでどういう風に扱われているのかは知らない。
 それはともかく、このアルバム、昔から音が小さいという不評(?)もあったが、聞き出せばもうジョーダンのロマンチシズムの世界に入っていく。NO PLOBLEMなのだ。
 革張りの古い書物の扉をあけるような、落ち着いた雰囲気で、じっくり聴きたいものだなと思った。
”危険な関係のブルース”をこんな味わいで聴けるのは、この本家本元このジョーダン盤しかないのかも知れない。
 ずっと聴いていくと、殆どジョーダンのピアノで終始していて、ベースやドラムのソロなどは殆ど差し挟まれていない(GREEN DOLPHIN STREETでは結構長いベースソロが入ってたりするけれど)ことに気付く。しかも、軽快にスウィングするところもあるけれど一貫して静かな演奏・・・「静かなるジョーダン」というところだろう。
 
 10年近くのブランクがあって、欧州に渡りその土地に根付き始めたジョーダンが、最初に自分のオリジナルであるNO PLOBLEMを他の曲と符丁を併せたように、もの静かに淡々とながら、最もその哀感の芯となるところを表現しようと考えたのではないか・・・。例えば HOW DEEP IS THE OCEANの深みといったら、冗談(ジョーダン)や洒落じゃない程だが、こういうものと同じように、派手な調子で演奏されてきた”危険な関係のブルース”を自分の元に引き戻して本来こういう曲なのだというところをアピールしたかったのではないか・・・なんてことを考えた。
 それぐらい、ワン・アンド・オンリーなNO PLOBLEMだということは言えるだろう。

 もうひとつ付け加えると、このアルバムの雰囲気。どこかで聴いたなと思って思い出せずにいたのが、エマーシー盤のポール・ブレイのPAUL BLAYというアルバムだった。ブレイが鼻歌交じりのピアノを聴かせるあのアルバムである。
 これなどもちょっとブレイのその後の活動からは想像できないバップなアルバムだけれど、ピアノならぬ机の前に座って、ひたすら詞を書き綴っているような趣であって、そういうところがジョーダンのこのアルバムにも通じる感じがする。


 
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