EE MORGAN / INTRODUCING

CHANO DOMINGUEZ / CON ALMA

CHANO DOMINGUEZ-p
GEORGE MRAZ-b
JEFF BALLARD-ds
Aug 28 2003
VENUS
1.LA TARARA
2.NO ME PLATIQUES MAS
3.HOUW ABOUT YOU ?
4.DOLPHINE DANCE
5.CON ALMA
6.EL TORO Y LA LUNA
7.IT CULD HAPPEN TO YOU
8.HULLO BOLINAS
9.JURE
10.SPEAK LOW
11.DARN THAT DREAM
      -------------------------------------------------
  5月の連休中、仕事の関係で纏まった休みがとれなくて何処へも行けないなと少々自棄気味ではあるのだが、先だって少々遠出をして気を紛らして来た。
 北海道は、桜の開花もこれからのところが多くて、行った先はその日は21℃まで気温が上がって上天気だったけれど、それでも桜の花見とまでは行かなかった。それでも久しぶりのドライブで暖かい風を受けながら走ったのは爽快だった。
 僕は、車のことはまるで頓珍漢でその機能のことは全然わからないが、良くカヌーとかキャンプなどのアウトドアを共にした同僚が、一時期おそろしく排気量の高く燃費の悪いシボレーのなんとかという奴に乗っていて、噂では1〜2km/gしか走らないとも言われていた。まるでガソリンぶちまかして走っているようなものだが、その悠々たる姿にホホーっと思うばかりだった。内装をみせて貰ったこともあるが、まるで応接室という具合で同じ同僚とは思えない豪奢ぶり。いやはや、呆れた。

 ところで、そんな高排気量車のような気分を味わえるアルバムがこのVenus盤チャノ・ドミンゲスのCON ALMA。このタイトル曲は、ディジー・ガレスピーの代表曲でピアノ・トリオでも良く扱われるが、僕はつい最近までこの曲の演奏はガレスピー自身が吹いたものが一番だと思っていたから、例えばレイ・ブライアントが弾いてもちょっと違うんだよなと言う感じだった。蛙のようにホッペタを膨らまして45°に傾いたトランペットを吹くガレスピーのものとはおよそ違う。蛙のようにと言ったが、そうあれは野外ライブの映像であったわけで、この曲の持つ不思議な魔力が伝わってしっかり僕の記憶に刻印されてしまっていた。この曲は、ホーンじゃなきゃ駄目なんだ。トランペットあるいは、テナー・・・。スタン・ゲッツもSWEET RAINというアルバムで吹いていたが、これもイイ線いっている。でも、そこまで・・・と思い続けていた。

 ところが、このところ僕のピアノ・トリオの嗜好が変わってきたせいなのか、さっきの高排気量車の話じゃないが、ガソリンを湯水のようにぶちまかしても、ほんの数キロしか走らない超高級車のような余裕たっぷりの走りを感じさせるピアノ・トリオならと考えを変えたのだ。
 ズンズンとつきあげるようなムラーツのベースにバッサバッサとブラシを撫でさするジェフ・バラードの重いブラシ裁きにのってゆったりと指を運ぶチャノ・ドミンゲスのピアノ。こういう具合であればCON ALMAもきっと良いに違いない。
 果たせるかな、的中である。こういう按配でこられると麻酔を打たれた蛙が白い腹を上にして手足をぴくつかせて痙攣するような気分になる。ガレスピー蛙と言ったところだ。

 このアルバムの聴き所はもうひとつある。スペイン生まれのドミンゲスの父親はフラメンコ愛好者であったらしいが、その元で育った彼ならではの”歌”がテーマになっている演奏だ。一曲目のラ・タララ、CON ALMAの後に続く”牛と月”。彼はジャズとフラメンコの融合をライフ・ワークにしているそうだが、そういうコンセプトはあまりあからさまでない方が飽きずに聴くことができると思うが、まさしく熱気に包まれたこの冒頭曲でもうまく溶け込ませているなと思う。ジェフ・バラードのラテンぽいパーカッシブなドラミングと相前後してドミンゲスの弾く哀感の籠もった訥々としたタッチのテーマやソロは徐々に熱気を帯びて情熱的であるけれど、如何にもスパニッシュというわけではない。
 そこがいい。
 その後に続く”何も言わないで”が、このピアノ・トリオの旨みを象徴しているかのような、ガソリンぶちまかしの突き上げるベース音にバッサバッサのブラシの撫でさすりに乗った高級車張りのゆとりを感じさせるドミンゲスの指運び・・・である。今こういうのが、最高に好きだ。



 
戻る

 

 

STAN GETZ /SWEET RAIN