JAZZ徒然

2004.6

IGNASI TERRAZA/IT'S COMING

IGUNASI TERRAZA-p
PIERRE BOUSSAGUET-b
GEOGORY HUTCHINSON-ds
April 5,6 2003
TCB
1GIVE ME ANOTHER
2.I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU
3.VAN GOGH
4.PRELUDE TO A KISS
5.0SCAR'S WILL
6.BECAUSE OF YOU
7.YESTERDAYS
8.MY IDEAL
9.BROWN'S SWEETS
10.ROSOR
11.IT'S COMING

 

.

I

 

 こういうのを聴きすぎて早く飽きろ、そして心入れ替えて・・・と言わんばかりだ。そうはいくか、おいそれと改心なぞしないぞ。新譜でこんなにバップしてるのを聴いてりゃあ、今こそバップなんだと心強くしたものだった。
 この前書いたTARDO HAMMERにしろ、今時めくHOD O'BRIENにしろ・・・。じゃあ、50年代、60年代のもの聴いていりゃあいいだろうって?そういうこっちゃない。
 伝統回帰じゃない。ジャズ・ピアノの故郷はここにあるってこを示し続けた者達なんだ。

 IGUNASI TERRAZA(イグナシ・テレーサらしいが読み方も判らなかったぐらい始めてだ)とは何者だろうか。少々囓ったぐらいの知識しかないが、何でもテテ・モントルーの再来とか。盲目だというだけだろう?関係ないな。ジョージ・シアリングだっていたし、スティービー・ワンダーもいた。え?まあ、いいや。そんな大袈裟に言うべきことでもないだろう。
 躰の先にピアノがついているかのように弾くってことは、どんなピアニストも腐心することだ。かの奇才グレン・グールドの恍惚とした演奏の姿をみればわかる。鍵盤なんてみやしない。目をつぶったうえに、天を仰いで弾いている。いやいや、だからそんなことは特段問題にすべきことではないのだ。
 でもこれで8作目とは、お見それした。

 僕が驚いたのは、彼のオリジナルからしてバップしてるってことだ。1曲目GIVE ME ANOTHER、3曲目VAN GOGH、5曲目OSACAR'S WILL、それにベースのBOUSSAGUETのBROWN'S SWEET。これはレイ・ブラウンに捧げたものだとか。そうこのベイシストも腹にこたえる音を出す。そして最後にまた、TERRAZAのIT'S COMINNGが、どうだと言わんばかりのバップぶり。一曲一曲に籠める力技(うーん、一面バップは”力”かも知れない)、胸のすく思いがする。
 今話題の若きジャズのアイドル、山中千尋のMADRIBGALの冒頭を憶えているだろうか。彼女のオリジナルでANTONIO'S JOKEというもの。ガッと掴まれるバップ魂。アルバムの頭というのは、肝心要。そこにオリジナルでバップをもってきたということが嬉しい。
 老いも若きもバップでっせー!というところだな。ジャズの歴史の歯車が動いているというほどのことではないが、潮流はそういう流れ方をしているのを感じている。マイナーに引っ込んでいたものが、またグッと頭角を現してきたってわけだ。
 だからといって、それが総てだなんてことを言うつもりは更々ないが。

 さてこのアルバムの注目すべきは、もうひとつ。3曲目VAN GOGH。あの画家フィンセント・ヴァン・ゴッホのことだろう。『跳ね橋』『ひまわり』『種を蒔く人』・・・。印象派の力強いタッチと独特の色遣いの油絵。
 出だしがセンシティブでどこかヨーロピアンな雰囲気を醸しているけれど、常時リズミックなバックが鳴り続けている。そして徐々にテレーサの打鍵が変わってくるのだ。打ち付けるような打楽器的なものに変わっていく。トリオ全体が呻りだす。波動がビシビシと伝わってくる。そして徐々に静まり終わる。
 うーん、これが彼の中のゴッホか・・・というところだ。

 スタンダードものでは、レイ・ブラウン的なベースを弾くピエール・ボサーゲが堪能できるBECAUSE OF YOUなんてのも良い。G.シアリング的というか、やっぱりO.ピーターソンなのかそんなところのあるテレーサとの組み合わせ。重量感のあるスウィングだ。
 かと思えば、少し淡い感じのピアノ・タッチでテーマを聴かせた後、ダイナミックに変貌していくYESTERDAYSとか。ボサノヴァ・タッチのMY IDEALとか。
 
 とにかく文句のつけようもなくこの人も贔屓にすべきだなと思った。



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