EE MORGAN / INTRODUCING

JOHNNY FRIFFIN / THE KERRY DANCERS
JOHNNY GRIFFIN-ts
BARRY HARRIS-p
RON CARTER-b
BEN RILEY-ds
Dec 21 1961
RIVERSIDE

1THE KERRY DANCERS
2.BLACK IS THE COLOR OF MY TRUE LOVER'S HAIR
3.GREEN GROW THE RUSHES
4.THE LONDONDERRY AIR
5.251/2DAZE
6.OH,NOW I SEE
7.HUSH-A-BYE
8.BALLAD FOR MONSIEUR
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 さて、J.グリフィンのこのアルバムから派生してあれこれ書いてみたけれど、いよいよ締めくくりとするにあたって、1時間ほど考えた。
 これは傑作であると言ってしまったし、ジャズっていいなということを思う「要件」についても拙いながら、話を進めてしまった。いったいどう決着をつけてこのアルバムに戻って来たらよいのか・・・。 「て、ことで・・・。」と今までのことに何ら責任をとらずに逃げる手も考えた。読み直すとかなりいい加減なことや、意図不明と捉えられかねない怪しい文であるなと思ったし、やっぱりここはケツまくってしまおうかと暫し沈思黙考を続けた結果、こういうことで締めくくろうと。
 つまり、J.グリフィンはジャズの歴史を塗り替えるようなスタイリストでもなく、所謂「天才」のうちにも入れて貰えないということでは、グリーン車の前後にくっついている禁煙席の指定車か、煙モクモクの喫煙可の指定なしの自由席車というあたりに位置するけど、でも愛すべきテナー・マンであることは間違いない。しかし、このアルバムは彼のハードバップを中心とする豪放でスピード感ある主なアルバムからもちょっと外れたところにあるアルバムだなと思う。
 それが何故こんなに愛されて聴かれているのかと言えば、聴いている僕たちの方にぐっと近づいて来てくれたからじゃないかと・・・。
 何を言わんとしてるか、一例をあげれば、ジャズの歴史を先導したスタイリストのうちでも頂点に立つと言われるM.ディヴィスが残したアルバムのうち、歴史的にはそれほど評価はされていないが愛されているアルバム群がある。よく知られたマラソン・セッションの4枚。・・・in'と名の付いたあれだ。マイルスが、ミュート・トランペットで奏でる歌ものの数々。勿論マイルスだけがよかったわけではなく、リズムセクションのR.ガーランド、P.チェンバース、P.J.ジョーンズ+テナーのJ.コルトレーンのクインテットのメンバーそれぞれが持ち味を生かして傑作アルバムを立て続けに作った。
 これらのアルバムは大名盤でアッと言わせるマイルスの姿じゃない、もっと親しみやすい、そういう意味では彼がぐっとこちらに近づいて来てくれたような気のするもの・・・じゃないだろうか。
 それと同じ感触をこのグリフィンのアルバムに感じて、傑作だと直感したということであろう。

 歴史的大名盤や、「天才」のものばかり聴いても一向にジャズは面白いものにならない。体には悪いと知りつつもやめられない煙草みたいな存在のものを貪って聴く愉しみ・・・なんて言うと潔癖性の嫌煙家には悪いが、それで精神的に潤っている僕みたいなのは、やっぱりJ.グリフィンのこういうアルバム等が嬉しいのだ。でもこれはゲテ物食いとはちと違う。いや、ゲテものもたまにはよいが。

 と、ここまでは何も聴かずに書いてしまったが、齟齬をきたすといけないから用心深く?このアルバムをもう一度聴いてみよう。でも、最近こうやって書いていて思うのだが、書いていることの「妥当性」ばかり用心してみてもツマラナイないし、意味がないと。結局実際に聴いた人が判断するものだから、アルバムの説明書みたいに無難なことを書くことには何ら興味がない。

 まあ、ブツブツ言ってないで聴こう。

 HUSH-A-BYEはこのアルバムの代名詞であって、「象徴」と位置づけられると書いたが、冒頭のTHE KERRY DANCERSを始めとしてトラッドな曲を扱ったものがメインとして按配されているのがまず特徴だ。
 こういうのをオリジナルなままテーマを吹き、オリジナルのメロディに即してソロをとることを「歌う」と僕らはよく言うが、グリフィンの場合はS.ロリンズみたいにアドリブがオリジナルから派生してると感じさせるほどの器量は持っていないけれど、グリフィンならではのテナーの音色とフレージングで聴かせてくれる。これがグッと腹にこたえる。ここが親しみと愛着を感じさせるこのアルバムの骨頂だと思う。グリフィンがこういうのを扱って吹いてくれ、聴いている僕らにぐぐぐっと近づいてくれたわけだ。
 3曲目のGREEN GROW THE RUSHSなんて曲もしらないけれど、軽快にスウィングしながら豪快なグリフィンのテナーが堪能出来る。憶えやすいテーマだから初めてでも親しみがある。次のTHE LONDONDERRY AIRなんて良く知っているだけに更に酔いしれる。情感籠もった良い演奏だ。B.ハリスを始めとしたリズム・セクションの面々の有り難さもここらで実感する。

 5曲目あたりからでぐっと毛色の違った趣となる。というかそもそものグリフィンが出現したのをあらためて感じたに過ぎないが。こういうのを聴くとやっぱりグリフィンは大物だと実感する。S.ロリンズやJ.コルトレーンに比肩する値のあるテナー・マンだと。グリフィンのオリジナルであるOH,NOW I SEEにはとことん畏れ入った。

 さてさて、HUSH-A-BYEである。これが彼の初演だそうだが、この後彼のテーマソングみたいにして吹いていたそうだ。これを聴けば吾が意を得たりと自分でも納得したのだろう。それだけ味の濃い名演だ。リズムセクションの躍動ぶりも彼の「すぐれてあやしき」吹きぶりに呼応したようだ。カミの域に入った彼のテナーを堪能する。

 以上、ジャズっていいね・・・でした。

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