JAZZ徒然

2004.9

GENE AMMONS / BOSS TENOR

GENE AMMONS-ts TOMMY FLANAGAN-p DOUG WATKINS-b ARTHER TAYLOR-ds RAY BURRETTO-cong
Jun 16, 1960
PRESTIGE
SIDE 1
1.HITTIN' THE JUG 2.CLOSE YOUR EYES 3.MY ROMANCE
SIDE 2
4.CANADIAN SUNSET 5.BLUE AMMONS 6.CONFIRMATION 7.SAVOY


 

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I

 

 今年は台風の当たり年らしい。朝方まで雨が降りしきっていて、それが止むと今度は猛烈な風だ。暖かい空気で気持ちが良かったが、何かが飛んできやしないかと、外を歩くものおっかなびっくりだった。
 昨日あたり気がついたが、もう紅葉が始まっている。秋は晴れの日が多いのがここらの気候の特徴で、過ごしよいくなるななどと考えていた。

 さて、最近古典的なテナーが頗る気に入りだして来た。このG.アモンズもその一人で音色はテナーの原点とも言えるC.ホーキンスの類だろう。
 スタイルはL.ヤング、音色はC.ホーキンスという例の筆頭にあげられているのだが、何故こんなテナーが気に入り始めたかと言えば、T.ソラを聴いてからだ。彼のアルバムNATURAL SOUNDSを聴いて、今時珍しいを音を出すテナーだと感心した。スタイル云々より、やはり音色だった。まさにテナーの原点とも言える大きくて力強いそれである。
 
 ピアノ・トリオの場合にも同じ事があった。何で今時バップなのだろうと思っていると、あれよあれよという間に、バップを見直す新しいピアニストが出現し始めた。

 控えめなリズム・セクションを圧倒して飛び抜けて出てくる疾風のようなテナーの音。圧倒的でありながら、煩くは感じない充実した音色は、MY ROMANNCEとなると、ブルース、ミディアム・テンポの先立つ演奏から、その時だけ時間が止まったかのように恍惚とさせてくれる。
 フレージングの一音一音に気を籠めて発散するエネルギー。これぞハーレムを土壌としたジャズのアメリカ的な美的感覚なんだとあらためて思わされる。

 僕らがテナーに力強さ、大きさを求めるのは何故なのか。その一方でピアノのシングル・トーンを聴いて感じる愛らしさを好むというのは何故なのか。ピアノと言っても、バップの良さは「力」なんだと思い始めると、全く好対照な嗜好を併せもって聴く「美意識」を不思議に思うことがある。
 いいと思うんだから、それでいいじゃないか・・・と言えばそれまでだが。

 もっと言えば、ブルースを「美しい」と思うことはあるまい。ドロドロした感触が味であって、どちらかと言えば汚れた感じだ。それにスリルや凄みや怠さを感じ取って良しとするという感覚。これまたどうした訳か。
 こういうジャズの根っこの部分の所以を、気まぐれに思い始めてしまったので、その始末に困った。

 所詮、不意に古女房の愛しさを発見する心境か、何十年前の恋人の面影にハッととした程度のことなのだろう。でも、そもそも元からこんな筈だと思って一緒になったわけでもなく、古いからと云って悪いわけでもなし・・・複雑な思いだ。

 答えは出さずに、余白を残すのも僕たち日本人の美意識でもあるから、判らないままにしておくのもまた良いが、もともと一途にして多彩というのが僕たちの感覚の底辺にあるということだけは言えそうだ。





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