LYNNE ARRIALE /ARISE

LYNNE ARRALE-p JAY ANDERSON-b STEVE DAVIS-ds
Aug 2002
DIW
1.FREVO 2.AMERICAN WOMAN 3.ARISE 4.LEAN ON ME 5.ESPERANZA 6.CHANGE THE WORLED 7.THE FALLEN 8.UPSWING 9.KUM PA YA

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 暫く会わなかった人と久しぶりに会うときのように、いったいどんな顔をして相手に顔をみせたら良いのかと気持ちの中であれこえ迷ってしまうような気分だった。
 ともすれば情に流されるようなメロディがふんだんに籠められている。
意地を通せば、普段バップこそと思っているからには、こういうのは避けて通らねばならないことになる。バップしてたって情緒綿々となる。これはかたく信じて良い。しかしそう頑なになることもあるまい。自分の中心は守りながらも、傍らに耳を傾けていれば済むことだ・・・等と葛藤していたが、随分と窮屈な心持ちだ。

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい。」

 夏目漱石の『』草枕の冒頭である。

 そもそも詩や絵画や音楽などは、人の世の住みにくい煩いを忘れさすものであって、芸術に携わるものは、その任を負って此の世にあるというのが漱石の思想のようだ。
 今にあってはやや啓蒙主義的だなとは思うし、、僕の感じているような些細な葛藤が強ち意味がないとは言えないが、やはりどこか窮屈な思いがする。
 甘い調べが人を不幸になぞはしないなんてことは、当たり前過ぎる。でも、そんなものわかりの良いものじゃないというのが、僕らの常だ。

 しかしどうよ。頑なな心を投擲して耳を傾ければ、L,アリエールがピアノの鍵盤に籠めて歌う詩は、彼女の魂全体で鳴く雲雀のようじゃないか。
 憧れがあり、苦しみの底からわき起こる笑いがあり、祈りがあり、・・・、彼女が届けようとする想いに自分の想いを重ねてみるにしくはなし。歌とはそもそもそういうものであったのだから。
 彼女のピアノを聴いた者には、ピアニストとしてのアリエールではなく、歌手として聴いたというのも頷ける。

 (少々ものわかり良すぎる聴き手になったようだが、聴き手としてはものわかりが良くても、書き手となればどこか頑なであった方が書きやすいという事情がなきにしも非ず。ああ、やれやれ。)

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