MASSIMO FARAO/ROMANTIC MELODY
MASSIMO FARAO-p BOBBY DORHAM-b LORENZO CONTE-ds
2003
AZZURA MUSIC
1.L'AMOUR EST BLEU(LOVE IS BLUE) 2.LA REINE DE DABA 3.ADORO 4.MORE 5.COINS IN THE FOUNTAIN 6.A SUMMER PLACE 7.WHEN YOU WISH UPON A STAR 8.FASCINATION 9.MONN RIVER 10.SOME ENCHANTED EVENING 11.TILL 12.STARDUST
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 味のしなくなったガムを噛み続けるような、あるいは余所の家庭のファミリー・ビデオを見せ続けられるような「苦痛」を感じないで済むCDの聴き方はないものかと考える。
 ガムだって最初のひと噛みふた噛みあたりが、最も味も噛みごたえもある。大抵のCDも5〜6曲目あたりがピークで後は聴き続ける我慢を強いられる。
 これは良くない。
 テクニカルな面でCDがもたらした功績がないわけではないが、アナログ時代の有り難みからすれば5〜6曲目以降は蛇足の連続にしか思えない。ミュージシャンの意図を伝えるのにそれだけの長さが必要だとは到底思えないものが多い。
 それに慣れてしまった現代人の生活が、味のしなくなったガムを噛み続けるような生活になっていると言えなくもないが。
 
 しかしながら、そうした余計なサービスを半ば諦めと感じつつも新譜も聴きたいのだ。

 マッシモ・ファラオ。J.COBBの最新アルバムで彼のピアノを聴かれた方もあろうと思うが僕は初めてである。このアルバムを聴いて感じるのは、愛らしいメロディに対する彼の率直な姿勢だろう。
 1曲目は「恋は水色」、2は「シバ(サバ)の女王」というミッシェル・ローランの大ヒットナンバー、映画「夏の日の恋」の主題歌6、すでにスタンダードになってしまった7,9,12、オードリー・ヘップバーン主演映画「昼下がりの情事」の8、ミュージカル映画「南太平洋」の10など、扱うメロディの良さを素直に届けようとする「誠実さ」。

 実は先日たまたま見たテレビの番組で、往年のフォーク・シンガーが顔を揃えてホテルの一室でグラスを片手に話し合っている場面を観た。井上陽水、高田渡、小室等等に混じって友部正人がいた。
 僕は彼については全く知らなかったが、彼がその後歌った唄を聴いて、彼が日本のボブ・ディランだとか吟遊詩人だとか言われていたことを、なるほどそういう風格があると実感したのだ。
 その日ニューヨークから駆けつけたという彼が仲間との話のなかで、「言葉のリアリティ」についてボツボツと語るのを何気なく聞き、その後彼が歌った唄でその意図するところを実感とした。
 曲目は忘れてしまったが、都会に住むようになった青年の孤独を何気ない言葉で唄っているにもかかわらず、じわーっと伝わるその時代の青年の生活感が心に染みたものだった。*
 友部が歌い終わって、仲間は彼の手を取ってあの頃を彼らはああして誠実に生きていたんだと思い出したようで、言葉少ない賛辞を口々に送った。せつなくも懐かしいあの頃を思い出させてくれて有り難かったというのが胸中であろう。
 
 僕はその時「言葉の力」を信じた。友部のあの頃の生活が、彼の哀しみが、彼の願いが、本当に突き刺さるように感じられたからだ。

 ファラオが奏でるメロディにあれほどの重みを感じはしない。が、「曲の力」を感じ取るにはこうしたストレートな演奏が相応しいのかも知れないとは思った。あくまでライト・タッチな歌わせ方・・・。逆を言えば歯ごたえがないガムの噛み心地が物足りなくなるやも知れないが。

*「一本道」友部正人


 
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