THELONIOUS MONK QUARTET WITH JOHN COLTRANE AT CARNEGIE HALL

THELONIOUS MONK-p JOHN COLTRANE-ts AHMED ABDUL-MALIK-b SHADOW WILSON-ds
Nov 29 1957
BLUE NOTE

 

1.MONK'S MOOD 2.EVIDENCE 3.CREPUSCULE WITH NELLIE 4.NUTTY 5.EPISTROPHY 6.BYE-YA 7.SWEET AND LOVELY 8.BLUE MONK 9.EPISTROPHY

  世界遺産級の「新譜」

 夜中に煙草が切れて車を走らせて買いにいって来てから、最近手にしたこのアルバムを聴いている。
 深夜0時以降は煙草の自販機では買えなくて、24時間やっているコンビニまで行かなきゃならないのだが、いつも行くところが都合で店じまいしてしまった。だからその先のコンビニまでとなるとまた遠い。深夜に煙草を切らすとやっかいである。
 でやっと戻ってきて聴いているのだが、こういうのを聴くと最近のCDの新譜を10枚纏めておつりまでつけて売り飛ばしたくなる。何枚聴いても同じようなものを聴かされて無駄使いも良いところだ。これはたったの2300円だが、価値からすれば億の値段をつけてもいいんじゃないかと少々大袈裟だがそう思ってしまう。それぐらい散財させられたという怒りも含んでいる。1500円やそこらでお安く売られている名盤の可愛そうなこと。
 レコード会社てのはものの価値より売れりゃいいってことしか考えてない。
 そこんとこいくとこれは噸でもない世界遺産級の品だ。ウチの近所の知床(200以上Kmは離れているが・・・北海道じゃそういう単位でモノを言う。だから深夜のコンビニはその先だから噸でもなく遠い。・・・ウソです。)も漸く世界遺産として認められたが、人の手の入らない原始のままの自然が残されたことが世界遺産となるんだから皮肉なことだ。
 細かいこと抜きに言っても、まず音が素晴らしい。「発見」ものでこの音のクオリティの高さは、アナログ・ファンの僕も脱帽だ。ご存知かどうかは知らないが、少なくとも僕はモンク・ファンでは全然ないし、コルトレーンも大ファンとは言い難い。そんな奴が「凄い!」と言っている。宗志替えしても良いくらいだ・・・なんて興奮しすぎか。

 1957年のモンクとコルトレーンのファイブ・スポットでの演奏は残念ながら公式の記録に残されていないなどということは、記憶の隅にあってそういえばそんなのを読んだことがあると今になって思い出したのだが、そのギグの様子を想像させられるカーネギー・ホールでの演奏だ。エリック・ドルフィーとブッカー・リトルの演奏でも知られるファイブ・スポットだが、熱気に包まれた模様が伝わるが音響的にはこの殿堂とは雲泥の差があって、こういう姿で今リアルタイムに聴けるのは幸運というより他ない。しかし狭いクラブであろうが大殿堂だろうが我が道を行くタイプのこの二人にはあまり関係のないに違いない。だから望むべくもない姿が再現されたという意味では凄いことなのだ。

 演奏曲目は当然モンクのオリジナルがメインだが、コルトレーンの演奏には名盤BLUE TRAINとSOUL TRAINを吹き込んだ時期と重なるだけにシーツ・オブ・サウンドを思う存分繰り広げた演奏内容となっている。
 モンクのオリジナルでシーツ・オブ・サウンド。この邂逅こそこのアルバムの演奏面での命と言える。
 怒濤のように流れるフレーズ、モンクの提出するテーマに畳み込むように生の喘ぎを注ぎ込むコルトレーンに酔いしれる。互いの独立性を維持しながら溶け込んで発散するエネルギーは、後に固定メンバーとなり、モンクの手足となったチャーリー・ラウズなどからは聴けない奔放さがある。

 つい一、二週間前、カーラジオで「オールディズの新譜」という妙な言い回しに笑い転げたが、そういや「クラシックの新譜」というのもヘンだ。しかしこれなどは「モダンジャズの新譜」として聴ける。発掘ものだけに意味合いが違うが、音のリアルさと1957年11月29日がリアルタイムとなってスピーカーから流れているという有り難みから言ってもやっぱり「新譜」に違いない。
 
こういう新譜こそ待っているものだ。

   


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