CON ALMA ! / CHARLES McPHERSON



CHARLES McPHERSON-as CLIFFORD JORDAN-ts BARRY HARRIS-p GEORGE TUCKER-b ALAN DAWSON-ds
Aug 4, 1964
SIDE 1
1.ERONEL 2.INA SENTIMENTAL MOOD 3.CHASING THE BIRD
SIDE 2
1.CON ALMA 2.I DON'T KNOW 3.DEXTER RIDES AGAIN

 

BUT BEAUTIFUL /CHARLES McPHERSON
VENUS

  後ろの正面

 僕の書斎の机は壁に向かって据えられていて、その壁の反対の壁にオーディオの装置が置かれている。だからパソコンの画面を見ながら背中で後ろの音の聴いていることになる。好きでそうしているわけではなく、やむなくそうせざるを得ないのでそんな聴き方となっているのだが、後ろの気配というのは、面と向かって見ながらというのとは違って、見えないだけに背中に気を注ぎ気配を感じとっているわけである。
 子共の頃、夜中にトイレに行くのが怖くて、何も見ないようにして急いで用を足すのだが、やっぱり用を足している間中、背中にぞわぞわする得体ないの知れない怖い者の気配を感じはしまいかとビクビクしていた。ちょっとした物音は、実際の何倍もの効果を発揮して僕を怖がらせる。
 それと同じで、実はスピーカーに対面しているのと違って、背中で聴いていることは、音の正体は知りつつも気配を感じ取っていることになる。
 店のカウンターに座るとスピーカーの配置上、やっぱりそういうことになる場合が往々にしてある。店のマスターだけが、真正面でスピーカーと対峙してベストポイントにいてニヤニヤしていて、客は背中を丸めて飲み物を口にしながら気配を感じている。だから、マスターは平然として判ってますよという風になるが、客は時々「お?!」とか「え?!」とか心で反応してあらためて前に掲げられているジャケットに視線を注ぐという驚きの仕草が出る。
 これは意図的かどうか知らないが、案外効果的な配置になっているんじゃないかと思うことがある。

 ともかくそんな按配で今日もスピーカーに背中を向けて聴き続けているのだが、ずっと体勢を崩さずに聴き終わるのと、「お?!」と思わず振り返ってしまうものとがある。僕の場合大抵ドラムかベースが千載一遇のいい音を発してくれると思わず振り返ってしまう。

 去年辺りに出たVENUS盤のあの破廉恥ジャケットの奴を聴いてから、是非この時代のマクファーソンを聴いてみたかった。たまたま得たこの盤がオリジナル盤だったお陰で、最高の音で聴くシアワセを感じている。
 で、このアルバムで僕を振り向かせたのが
アラン・ドーソンのドラムだ。気持ちよいくらいパスンパスンと決めてくるブラシ、バスドラの響き、どれをとってもアラン・ドーソンと鳴る。(?)
 ドーソンはプレスティッジ御用達のドラマーらしく色んなアルバムに顔を並べている。最近聴いたのでは、ブッカー・アーヴィンのGROOVIN' HIGHなどもそうだ。プレスティッジではないが、レコード棚を探ってみつけたアート・マシューズ唯一のアルバム(らしい)にもアーチ・シェップやディジー・リース等に混じって彼がドラムを叩いていた。こうなるとドーソン、ドーソンという感じになる。


 で、本筋はマクファーソンを聴くのだが、マクファーソンの突き刺さるように鋭くもリードの厚さを感じさせる分厚いアルトの切れ味には舌を巻く。
 マクファーソンは曲に応じてビブラートを効かせる場合とノン・ビブラートで淡泊な効果を出そうとする使い分けをしているようだが、粘り着くようなIN A SENTIMENTAL MOODなどのようなバラードでは同じチャーリー・パーカー系のルー・ドナルドソンを思わせる吹きっぷり。
 
更にサイドマンにクリフォード・ジョーダンとあるのだが、ほんまかいな!と疑ってしまうように、僕の知っているジョーダンじゃないのだ。リー・コニッツかウォーン・マーシュにしか聞こえない。可笑しいなあ、と疑ってみてもこういう場合始まらない。
 
 まさに、後ろの正面だあれ?ということになる。


    


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