OUTA SIGHT
EARL ANDERZA

EARL ANDERZA-as JACK WILSON-p ,herpch DONALD DEAN-ds GEORGE MORROW,JIMMY BOND-b
1962.3
PACIFIC JAZZ
SIDE 1
ALL THE THINGS YOU ARE 2.BLUES BAROQUE 3.YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO 4.FREEWAY
SIDE 2
1.OUTA SIGHT 2.WHAT'S NEW 3.GEGIN

 

  生涯一枚の気概

 年が押し迫ってきた。毎年こういう時が来るが、僕にとって今年の暮れは特別・・・な筈なのだが、さほどいつもと変わらない。来春僕は20何年続けた職場を去って、郷里に帰り新たな生活を始める。でも、今の気分はいつもと変わらない。変わらないでいられるのも、今年一年揺れに揺れた挙げ句気持ちはすっかりモードチェンジ出来たからだろう。大揺れだったのに落ち着いた気分で暮れを迎えられることが出来たことは、本当に有り難いと思っている。恵まれていると思う。
 年の暮れ、ニュースは世間を揺るがす事件やスクープに揺れている。それを毎晩の肴にして疲れた体を休めている。他人ごとみたいだ。

 さて来春から始めることに関わるのだが、
名もない人に灯りを点そう。
 アール・アンダーザ・・・て知ってますか?僕は偶然知った。世に一枚きりアルバムを残しただけの、将来有望だったアルティスト。実はネットオークションで、こういう人を探すのが得意なT氏絶賛という宣伝文句に引っ掛かって、あっけなく入札したらあっけなく落札した。世間はこんな得体の知れないのをおいそれと得ようとはしない。陽の当たる安全牌ばかりを追って、決まり切ったものを聴いて満身しているのは、勿体ないと僕は思う。
 それはこれを聴いたからでもあるのだが、え、なんでこんなの知らないままに世間はなっているの?という驚きだった。
 冒頭人喰ったようにジャック・ウィルソンがハープシコードで迎えてくれる。
 そもそもウエスト・コーストレーベルには縁遠くなっていた筈なのだが、最近聴き返してみると意外な逸品に出逢ってしまう。それがバド・シャンクだったりあれやこれやだったりするのだが、このアンダーザというアルティストが出たレーベルもPCIFIC JAZZ.。
 エリック・ドルフィーと同じ師匠ロイド・リースという人についている。聴いてみるとそこここにドルフィーとの類似点があったりして益々興味が湧く。湧いてもこれ一枚きりなのだから追っかけ様がない。それが哀しいけど逆に愛おしくなって生涯心にとめて聴いてやるぞと言う気になる。

 来年からの商売でこれをかける様を思い浮かべるのが楽しみで仕様がない。客が「え?!」とか「お?!」とか反応してくれたら気分が良いに違いない。
 そう旨く事が運ばず、閑古鳥なく店でひとり悦にいるという悲しいシチュエーションも脳裏に浮かぶが。

 このアルバム中3曲はアンダーザのオリジナルでテーマ曲のOUTA SIGHTはジャック・ウィルソンの作という生涯一枚に悔いないアルバム作りとなている。
 そのOUTA SIGHTだが、実に「気」の入った渾身のアルトを聴かせる。東ではジャッキー・マクリーンや西ではチャーリー・マリアーノの凄みのきいた時期と重なる勢いがある。それは血の吹き出しそうなWHAT'S NEWにも現れていて、マクリーンが嫌と言うほど残した同曲以上の気概が籠もっているように思った。

 何千枚持っていようが、生涯一枚とは言わぬが、何枚かこれはというものが見つかったら全く悔いがない。後は全て売ろうが捨てようが、と思うことにしている。
    


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