マクリーン冴え渡る

 春真っ盛りで自ずとテンションもあがる。
 「馬鹿の高上がり」という感じにもなって、尋常の沙汰でないこともやりかねない。
 自然界もやっぱりじっとはしてられない本能が春だからこそ燃え上がるわけで、人間様もおなじだろう。
 犬猫の色恋沙汰を子ども時代に近所で目の当たりにしてこれはいったいどういうことかと思いつつ、親にも聞けない羞恥を既に感じていたが、最近じゃあ滅多にお目にかかれなくなった。
  

A NIGHT IN TUNISIA/ ART BLAKEY'S JAZZ MESSENGERS

ART BLAKEY-ds
BILL HARDMAN-tp
JACKIE McLEAN-as
SAM DOCKERY-p
JOHNNY GRIFFIN-ts
JIMMY DE BRES-b
Apr 8, 1957
RCA

SIDE 1
1.NIGHT IN TUNISIA
2.OFF THE WALL
SIDE 2
3.THEORY OF ART
4.COULDN'T IT BE YOU ?
5.EVANS

 学校の窓から長閑な野生の光景が見えたりしたら、学友は目を白黒させたり、お互い顔を見合わせ笑いを堪えていたが、教壇の師は知っていながら素知らぬ振りをしていたものだった。
 保健の時間に、雄蘂と雌蘂のところから話出すなんて昭和に育った僕たちくらいまでじゃないだろうか。
 いや、記憶さえ定かじゃない。

 ともかくこんなことばかりで頭のなか一杯にしていたのが学校時代じゃなかったろうか。
 自然の摂理を親からも教えられなかった僕たちは、そのうちおぼえていくもんだというナチュラルな感覚で我が子の成長を考えて来たせいか、あけっぴろげな子に育った。
 家内が札幌で生活している大学生の長男のところに行って、ああだったこうだったと呆れて帰ってくるが、いざとなったら「北の国から」の五郎のように純を伴って平謝りしたようにすればよいなどと暢気に構えている。

 春の陽気に50男の僕も頭のネジも緩んだせいか些か脱線ぎみだったが、このくらいの「脱線」なら許せるだろう。
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 昨日買ったステファノ・ディ・バティスタのPARKER'S MOODを聴いていたら、こんなのを思い出して聴いてみた。
 BLUE NOTEにも同じタイトルのものがあるが、アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズのA NIGHT IN TUNISIA。こっちはRCA盤である。
 メッセンジャーズのメンバーでジャッキー・マクリーン以外は当時無名の新人ばかりでやったものである。
 数多あるメッセンジャーズの演奏で実は一番好きなのが、このマクリーンのいたアルバムだ。
 彼がいたからこそ飛び抜けて良いと思っている。当時プレスティッジの専属であって、契約上FERRIS BENDERという変名を使ったようだが、最近のCDではそうなっているものもあるようだ。
 BLUE NOTE時代にメッセンジャーズが良い悪いは別として2管から3管に編成を膨らましたのはMOSAICからで、RCA盤で既にそれをやっていたんだとはちょっと驚きだ。
 ビル・ハードマンとマクリーンはプレスティッジで何度も顔を合わせているが、多分この時以来なのではないか。
 
 冒頭NIGHT IN TUNISIAは、ブレイキーのアフリカン・ビートを強調した怒濤のソロにメンバー各人にパーカッションを持たせてチャカポカやらせているところがお寺の小僧的で面白いが、雰囲気はまさにアフリカンだ。
 新人を集めただけあってソロに入るとキャリアの差が歴然だが、マクリーンとジョニー・グリフィンが抜群だ。
 グリフィンも当時郷里シカゴを出たり入ったりして本気でメンバーとして落ち着くまで時間があったようだが、流石この後BLUE NOTEに次々と実力の程を発揮しただけある。新人とはいえ逸材だ。
 ハードマンも健闘しているとはいえまだ楽器を使いこなせてなく、ところどころ上滑りしているのに比べると、グリフィンのメリハリのはっきりしたテクニックがかえって目立つ。
 マクリーンは大抵先陣を切ってソロをとるのだが、既に確立したマクリーン節を奏で一際冴えたところを聴かせる。
 これだけ際だった才覚を持った人材を一員として引き留められなかったのは、ブレイキーとしては残念だったことだろうと思う程ずば抜けている。

 荒削りだがハイテンションなアフリカンビートの怒濤とマクリーンの存在が、やっぱりベストだと思わせるに充分だ。

  

 

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