思い上がるな!もう、いやだ・・・

  

ERIC ALEXANDER /GENTLE BALLADS

ERIC ALEXANDER-ts
MIKE LEDONNE-p
JOHN WEBBER-b
JOE FARNSWORTH-ds
March 1,2 2004
VENUS

1.THE MIDNIGHT SUN WILL NEVER SET
2.LEFT ALONE
3.GENTLY
4.HERE'S TO LIFE
5.MIDNIGHT SUN
6.HARLEM NOCTURNE
7.SOUL EYES
8.UNDER A BLANKET OF BLUE
9.STORMY WEATHER
10.CHELSEA BRIDGE
11.HARLEM NOCTURN U

 田口ランディが最近ニューヨークにいって見聞きしたことをBROGに載せている。そのひとつに、アメリカの出版事情のことを書いてあった。
 アメリカの出版事情は、日本と全く違って、まず、アメリカには文芸誌というものが殆どなく、あまり売れていないらしい。それぞれの文芸誌が新人賞を設けているので、文芸誌を買うのは小説家を目指して新人賞に応募しようとしている人だという話だ。
 文芸誌はそこそこ原稿料もいいし、作家にとってはここで作品を発表できることはとてもありがたい。その文芸誌がアメリカにはない。
 新人作家は、富山の薬売り宜しく本をトランクに詰めて、地方の大学を転々と旅しながら本を売って歩くのだ。
 その逆に日本の作家は随分と優遇されているというような話だった。

 話を転じて、じゃあレコード業界というのは、どうなっているんだろう・・・と。
 VENUSから出したエリック・アレクサンダーのバラード集を、些か疑問に思いつつ聴いていた。
 というより、このアルバムのことをあれこれ「弁護」しつつ、やっぱり疑問を感じないわけにはいかなった。
 バラード集をやろうと言いだしたのは、本人じゃないことはなかのライナー・ノーツを読めばすぐわかる。周りがそそのかしてその気にさせた・・・わけだ。
 犯人は寺島靖国氏でありVENUSのプロデューサーだ。
 いいなりになったエリックの心情はわかる。生涯一度は、バラード集があっても良いかな。コルトレーンの「バラード」という先例にならって、売れてくれば俺も・・・と思うのはわかる。その調子で今度はウイズ・ストリングスか?多分、VENUSに身を売ったエリックは、そんな先人の同じ轍を踏むに違いない。
 
 もう、いやだ・・・。

 プロデューサーなくして作品が生まれない事情は、ずっと聴き続けているBLUE NOTEしかりではある。
 BLUE OTEの音楽とは、アルフレッド・ライオンの音楽だと言って間違いない。
 しかし、了見が全く違う。
 バラード集をつくれば、スタンダード集をやれば、日本のジャズ・ファンは飛びつくんだ、と思い込んでいる。思い上がりだ。
 いや、事実そうなんだろう。だから、こんなアルバムを有り難がった聴く。
 悪いのは、聴く消費者側にもある。

 僕がここで何を言ったって、世間の評価が変わるわけじゃない。
 でも、VENUSの新譜が出るたびに、「またか・・・」と思ってしまう。
 スタンダードのオンパレード。
 僕は、ずっとこのことを弁護して来た。同じ曲をやったって、ミュージシャンの解釈で色合いも異なり、更にその曲の良さがわかり、好きな曲を持っていれば、ジャズファンはシアワセだって・・・。
 そうなんだけど、やっぱりどこかヘンだ。
 最近のCDに嫌気がさしている理由は、そこにあった。
 逆に同じプロデューサーの裁量次第であるBLUE NOTEの卓越性を益々実感した。
 確かに時代の流れが違う。ジャズが動いていた時代と、そうでない時代では。
 だから、今はいままで色々あったけど、ジャズの純正ってここにあるんだよな、だから、やっぱりジャズっていいねって。
 多分、そういうことにこのアルバムの意味合いがあるのだろう。
 わかっちゃいるが・・・。そういうのって、多すぎない?たまに、そういうので呻らせるなら話はわかるが。
 
 テナー第三弾にひっぱり出したものの、苦言を言わねばならなくなって口惜しい。

 それはそれとして、聴く耳を持たないわけじゃないから・・・。
 エリックが、今まで出してきたアルバムの中で確かにバラードとなると、他を抜きんでて良いと僕も思って来た。
 でも、エリックの嫌なところは、真っ直ぐ過ぎるところだった。その真っ直ぐな部分とバラードオンパレードの嫌味が重なって聞こえるともうどうしようもなくなる。
 好きな曲なら話は違う。

 そこまで僕にとってのデメリットを挙げたうえで聴き直すと、ストレートアヘッドで聴かせる真っ直ぐさが、幾分ニュアンスを崩して来るバラード演奏だ。
 曲がよくてニュアンスの按配が良くてっとなると、4曲目HERE'S TO LIFEなどは良い。ボサノヴァ・タッチで来てる。
 あと、ピアノとのデュオでSTORMY WEATHERは、趣向がイイ。だんだん、崩れて好青年振りが壊れていくエリックがイイ。ほら、いいじゃなか・・・て?まだ、まだ。
 CHELSEA BRIDGEも、エリックのバラード演奏のイイ部分が出ているなあ。ぐっと来る。

 他はハリー・アレン?!でもやるようなものが多い。
 ハーレム・ノクターンなんて面白いじゃないかって?騙されんぞ・・・。

 やっぱり、エリックはストレートアヘッドやってて、合間にこういうのを挟んでいるのが正解なんだ・・・。
 
 

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