風の残した記憶
 
  

AMERICA ! / JOE CHINDAMO

JOE CHINDAMO-p
MATT CLOHESY-b
DAVID BECK-ds
ATELIER SAWANO
1.AMERICA
2.THE 59TH STREET BRIDGE SONG
3.EL CONDOR PASA
4.MRS.ROBINSON
5.KEEP THE CUSTOMER SATISFIED
6.SCABOROU FAIR
7.GODDBYE FRANK LLOYD WRIGHT
8.CECILLA
9.OLD FRIENDS
10.FIFTY WAYS TO LEAVE YOUR LOVER
11.BRIDGE OVER TROBLED WATER
12.THE SOUND OF SILENCE
13.AMERICA


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 選曲もいちミュージシャンの才覚のひとつだろうと思っている。
 しかし闇雲に選ぶのではなくて、自分の持っているオリジナリティであるセンスの範囲でということになろうから、彼のオリジナリティの土壌ととして深く根を持つ曲であるほど感情移入したり弄くったりもしやすくなる。

 アメリカ有数のメロディ・メーカーのひとりであるポール・サイモンの曲は、同時代に聴いて育った者にとって何を思わせるのだろう。
 映画「卒業」のテーマを歌うフォーク・デュオは突如として僕らの前に立ち現れた。巷に流れるサウンド・オブ・サイレンスは中学生だった僕には異国アメリカそのものを象徴するかのようだった。
 とはいえ雲の彼方の国のこと。一世を風靡した彼らの歌から想像するどこかアンニュイ、薄氷のように砕けやすいナイーブな心理模様、皮肉混じりに語られる若者の日常・・・等々、青春の光と影を映し出すみたこともないアメリカという複雑な社会だったろう。
 歌詞などちっともわからなくとも、ポール・サイモンの打ち出す曲は、僕らの日常に入り込んでいた。
 それは「風の残した記憶」とでもいうべきか。僕のなかを通り過ぎていった風が残したものの記憶となっていた。
 哀しいほど猛々しく歌うサウンド・オブ・サイレンス他数多の曲ども。

 暑い日が続く。仕事から帰るとまずは部屋の風通しを良くして、トレーに載せっぱなしのチンダモのこのポール・サイモン集をかける。
 涼しく風が吹き抜けて冒頭のAMERICAが鳴り出す。旅する若者がみたアメリカという如何にも光と影を背負ったアメリカを思わせる曲だ。偶然にも僕の好きな曲が冒頭を飾っている。
 特段な期待を籠めて求めたものではないから、氷のたっぷり入った飲み物と一緒に涼やかに喉を通ってくれればよかった。
 
 ご期待通り・・・というところだ。

 涼やかに、グルービーに、センシティブに、・・・チンダモはなかなか旨くクッキングしてくれている。

 ガーシュイン曲集だとかマイ・フェア・レディを扱ったものだとかはあまり有り難くなく、寧ろセンスの良いポップやフォーク、ロックからのものの方が好きな方だから、もっとこういう趣向で出てきて欲しい。
 まして百年一日の如きスタンダード集には当分御免こうむりたい。

 

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