WAY DOWN /CURTIS AMY

CURTIS AMY-ts ROY BREWSTER-tb MARCUS BELGRAVE-tp ROY AYES-vib GEORGE MORROW-b TONY BAZLEY-ds VIVTOR FELDMAN,JOHN HOUSTON-p
1962
PACIFIC JAZZ
SIDE 1
1.WAY DOWN 2.LIBERIA 3.24 HOURS BLUES 4.LIZA
SIDE 2
1.A SOULFUL BEE, A SOULFUL ROSE 2.ALL MY LIFE 3.BELLS AND HORNS

 


  ビミョー

 23年勤務した職場を離れるということで先日送別の会を開いてもらった。
 毎年あるこういう席で、初めで最後の挨拶を退職ということで迎えようとは思いもよらなかった。系列の職場は他にも何箇所かあって、何度か転勤を考えたが実現しなかった。望まれてかどうかはわからないが、一度もこの地を離れることなく今まで来たことは今考えると有難いことだったのかもしれない。
 で、退職をする僕以外の職員も含めて「感謝状」なるものを渡された。誰が考えた文面か定かじゃないが、僕のには主に自然相手のアウトドアにはまった事柄が記されていた。今から考えれば一時の道楽だったと思うが、物も娯楽も都会育ちの僕には満足いくものがなかったが、いったん視点を転じればふんだんに備わった自然を満喫できる地であることに目覚め、日夜アウトドア一色の日々が続くことになった。形から入る質だったから、まずはRV車を手に入れ、双眼鏡や望遠レンズの一眼レフで野鳥を追うバードウォッチングに始まり、アウトドアブランドのテントを購入してキャンピング、極めつけは折りたたみ式で持ち運び自由なカヤックでこの地域の湖、川を制覇した。出向いた先の温泉、露天風呂は言うに及ばず、傍にヒグマが出没する危険も顧みず湯につかる。
 夢に見るのは、どこでも寝泊り自由なキャンピングカーを駆ってありとあらゆるアウトドア道楽の限りを尽くすということであった。

 考えてみれば、仕事に命削った日々もこの23年の間にあったことも確かで、その間の合間を縫ってこうした道楽は次から次えと続いていたわけだ。もちろん仕事は楽しくなけりゃをモットーに、如何にモチベーションを高めて仕事に熱中できるかに精進した。
 全く悔いがないとは言えないが、自己満足できる程度には過ごしてこれたと思っている。
 
 さて、退職し新たな人生を歩むこととなる。喫茶店経営など不安が付きまとうが、意外に今まで手に染めた道楽が助け舟になってくれるような気もしている。気心が知れあうという媒体には道楽がうってつけ。そこに多少の商売根性を働かせればなんとかなる?・・・そんなうまいこといくのだろうか。

 アウトドアとは対照的なレコードコレクションも道楽のうちだ。音溝にこめられた気迫にうなる時の至福感。長年聴いてりゃあ、ジャズ魂の釣り針に引っかかる獲物も選ばれてくる。
 「こういうのが、いいのさ」という今回の一枚はカーティス・アーミー。
 PACIFIC JAZZは西海岸の名門レーベルだが、所謂ウエスト・コースト・ジャズのレーベルだ。ところが、今までサイドマンに徹していた黒人ミュージシャンが狼煙をあげて表舞台に出てきた。そうなると白いジャズが黒くなる。
 しかしところが、彼らの土壌にはいかんともしがたい白さが残っていて、ニューヨークをねじろとするミュージシャンとは微妙に差異のあるローカリティを発揮することになる。
 その「ビミョー」さが小脇を擽る。ワン・トラックごとにいちいちうならせる。
 基本的にはアーミーとマーカス・ベルグレイヴがフロントでロイ・ブリースターがヴァイブ、ヴィクター・フェルドマンがピアノ、ベース、ジョージ・モロー、ドラムス、トニー・バスレイという構成だが、何が僕を喜ばせているのか定かじゃない部分で、沸々と沸く「よろこび」がある。
 この「ビミュー」で定かじゃない部分が培ってきた「耳」のなせる潜在的業なんだなという気がしている。
 たとえば冒頭WAY DOWNの中盤で鳴るヴァイブの適材適所なはまり方、ここぞというときのシンバルの打ち込み、勿論アーミーのテナー・アクションの心地よさもあって、更にフェルドマンのピアノ・ワークの的確さがつぼを得ているなんて、言葉にしても殆ど伝わらないのである。
 そういうもどかしさは、わが店に来て聴いて貰えばいっぺんに解消・・・。
 「一聴瞭然」なんて逃げでしかないが、ホントにそうなのだ。
 
  
    


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