ALL OR NOTHING AT ALL / RICHARD WHITEMAN
RICHARD WHITEMAN-p BRANDI DISTERHEFT-b SLY JUHAS-ds
May 9,10 ,2005
CORNERSTONE
1.OH! LADY BE GOOD 2.KOALOGY 3.ALL OR NOTHING AT ALL 4.SOULTRANE 5.SANDOWN PLACE 6.ALL ABOUT THE HANK 7.TOO CLOSE FOR COMFORT 8.BLOOR WEST VILLAGE 9.MOON SONG 10. IN THE STILL OF THE NIGHT

 


  形(なり)がいい

 家財道具いっさいが運ばれ新天地に移り住むこととなった。家中段ボールだらけだった部屋も生活がいつもの調子に動けるほどになり、ほっとするがこのところの役所通いの毎日の疲れも重なり判断力もなくなってきていた。
 店の開店準備も手を染めかけているが、人気と火の気のない雑然とし寒々とした店内を見渡して一層疲れが骨身に染みた。来月開店。気力の持続が心配になる。
 暇を見つけては、同業者の店を訪れ様子を伺っていた。あまりはやっているところはない。内心はわからぬが客などいずとも平然としている腰の据わった店主ばかりである。こぢんまりとした店内からは音が低く流れている。普段自宅で聴いている音量からすれば物足りなさはあるが、都会の隣近所に配慮してのことだ。しかしながら気分は温もりがカウンターに染みこんで落ち着く。
 自分の居場所を得たという安堵感だ。ああ、これが大事なんだなという気がした。
 比べて我が店のこの時期の寒さに応じ切れていない暖房では、寒すぎる。いやそればかりではなく、何か温もるには足りないものがありそうだ。

 今日店の掃除や片づけをしているところに、運送屋がJBLのスピーカーを届けに来た。サイズも適当で思い描いていた場所にうまく填った。鳴らしてみる。確かにいい音ではある。が、これがベストの音で鳴っているのかかどうかは、これからのつきあい次第という気がした。ともかく長年憧れていたJBLを自分のものにすることが出来、感慨深くその姿に暫く眺めいっていた。
 今このスピーカーで一番鳴らしてみたいのが、これ。リチャード・ホワイトマンである。小難しいこと抜きに、気持ちよくスウィングする。ベースは細腕の女流ベイシストだが、音は剛腕。ドラマーは思い切りよくあっけらかんと叩く。こういうあっけらかんな音をあのスピカーで鳴らしてみたい衝動が起こる。多分、あっけにとられるに違いないとワクワクして店で聴く。オープンな空間のなかでは、如何にもバスドラでございという鳴り方であった。
 正しいジャズとか正しくないジャズなんてはわからないが、これはピアノ・トリオとしての形(なり)がよい。気取ってなくて素直だ。自分たちが気持ちよいと思う音と姿で勝負している。タイトル曲ALL OR NOTHING AT ALLは繊細とかリリカルとは対極にあるジャズやってるのが楽しくしようがないというような奔放さが微笑ましい。また、しっとりと滋味さのあるTOO CLOSE FOR COMFORTとか、ヨーロピアンなリリカルなタッチのオリジナルもありという具合で、色々出来ますよという具合でもあるが、ジャズをエッセンスを飾らずやってるところがいいなと思う。
 小難しいのを聴いた後で、ウイントン・ケリーなどが出てくる、ああ、やっぱり良いよなって思う。小気味よくスウィングして、ここぞと言うところでツボにはまったいい音が鳴る。そういう形(なり)である。
 

  
    


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