THE JAKI BYRD EXPERIENCE
JAKI BYRD-p ROLAND KIRK-ts,cl,whistle,manzello,kirkbam RICHARD DAVIS-b ALAN DAWSON-ds
Sep 17,1968
PRESTIGE 7615
SIDE 1
1.PARISIAN THOROUGHFIRE 2.SHINE ON ME
SIDE2
1.EVIDENCE 2.MEMORIES OF YOU 3.TEACH ME TONIGHT

 


  凶暴系

 四月に入っても日射しが少なく気温がなかなか上がらない日が続いている。 このところ毎朝5時には店に来てコーヒーの点て方を練習しているが、一度プロに教えて貰ったコツで点ててみるが、お湯の落とす量、内側から外に向かって渦巻き状に落としていく具合で、蒸らしたコーヒーの粉の膨らみ具合に違いが出て、味も香りも微妙に違う。一口飲んだ後味の残り具合の差は、挽いた粉の量の加減もあるがお湯の落とし方で随分と違うのだななどと少しわかって来た。
 疲れているのに、何かしなきゃと自分を追い立てている毎日の一こまだが、これで事が動き出せばやることは決まってくるが、そこに安住しだすと逆に不安が募るという気もする。だから、いつも何かしなきゃでいる方が良いのかも知れない。
 しかし今やってることは自営業を始めるにあたっての基本中の基本でしかない。肝心なのはこれからだ。
 今暇をみつけながら読んでいるのが、金子郁容 著『ボランティア もうひとつの情報社会』(岩波新書)。
 別に時間が自由に使えるようになったからボランティアでもやるかと思って読んでいるわけではないし、ボランティアとの関わりの深かった仕事をしていたくせに、その理解が浅かった罪滅ぼしの為でもない。ボランティアという視点からみた現代社会の人と人のかかわり方、ネットワークの有りようを考えてみたかったからである。
 ボランティアに関する著書など一度も読んだことはないが、多分この著書ように、アダム・スミス、マックス・ウエーバー、マルクスが登場するという切り口というのは珍しいのではないかと思うが、そこのところが非常に説得力を持っている意外さに感嘆した。
 個人が巨大な社会システムに支配されたなかでのささやかな「個」の独立性或いは孤立しているという「諦め」も、一歩視点を変えると「俺はあんたとはかかわりないよ」とつっぱるのも良いが、地球規模のタペストリーに織り込まれている依存の関係にあるという「現実」に目覚めれば、お互いが切り離された孤独や「鉄の檻」からのささやかだが風穴を見いだすことができるという主張である。
 つまり、かかわりたくないというのは勝手だが、逆にかかわりを求めようとすればいくらでもその糸は張り巡らされているわけである。
 そこのところを少し煮詰めてみようというのが今の心境である。まあ、多少商売根性という下心も含まれているが。

 さて、用があって出歩くとつい中古レコード屋に足が向き、一枚いや二枚と小脇に抱えて店を出ることになる。
 今回の獲物でやられたというのが、このジャッキー・バイアード。バイヤードはおもろいと思いかけていたところにこれである。
 ローランド・カークを相棒に好き勝手やっている。凶暴系・・・という印象。とても夜中にひっそり聴くという代物ではない。
 圧巻はA,B両面の冒頭で、A面のPARISIAN THOROUGHFIREでは何事かという感じで好き勝手に楽器をかき鳴らし喧噪を表現するイントロは、今まで聴いたこの曲の出だしの中でもダントツの五月蠅さ。
 カークのテナーとストリッチを持ち替えた吹き鳴らしにリチャード・デイヴィスの馬力のあるベースが凄みをプラスし、その傍らバイヤードが凶暴さを加味させる。
 同じような調子でB面のトップはモンクのEVIDENCEで、やっぱりカーク、デイヴィスの凄みにバイヤードの狂気じみたピアノが背後で蠢き、いったんソロを取り出すとかき鳴らすピアノはあたりの空気を攪拌して渦を創っていく。
 
なかなか見事な暴れ具合だが、PRESTIGEに残したアルバムで67年に吹き込まれたSUNSHIN OF MY SOULというのを聴いてみたが、これもドラムにエルヴィン・ジョーンズ等を従えエキサイティングな演奏を聴かせてくれる。
 
 本アルバムに戻るが、陽気なゴスペル・ファンク調なA面3曲目など大道芸かサーカス的な楽しさがあり、またカクテル・ピアノとカークのテナーでMEMORIES OF YOUなども彼ららしくやってみせるなど色々楽しませてくれる。
 バイヤードは、今一番興味のあるピアニストだ。

  
    


HOME

2001-2004 (C)Cafe JAMALi, All right reserved.