FLIGHT TO DENMARK /DUKE JORDAN
DUKE JORDAN-p MADS VINDING-b ED THIGPEN
Nov 25.Dec 2 1973
STEEPLECAHSE
SIDE 1
1.NO PROBLEM 2.HERE'S THAT RAINY DAY 3.EVERYTHING HAPPEN TO ME 4.GLAD I MET PAT
SIDE 2
1.HOW DEEP IS THE OCEAN 2.GREEN DOLPHIN STREET 3.IF I DID WOULD YOU? 4.FLIGHT TO DENMARK

 


  郷愁とは

 今僕が夢中になって読んでいるのが、チェコの作家ミラン・クンデラ。とは言っても'75年に亡命してフランスに在住している作家だ。映画化された『存在の耐えられない軽さ』を最初に読んだ。これは亡命後の作品なのだが、それ以前の全ての作品は'67年の「プラハの春」以来発禁処分となった。今日ではそれらも日本語訳されて読むことが出来る。『冗談』『可笑しい愛』『存在の耐えられない軽さ』『不滅』『無知』・・・。
 「プラハの春」以降発禁となった著作は、あくまで歴史のページ中のいち個人の葛藤の記録であり、彼の行動は「個人的」だし、体制的でも非体制的とも言えない、そんな紋きり型の(発禁処分などそんなもんだが)枠にはまらない、ヨーロッパの精神壌土のうえにたつ、あくまで個人的な葛藤(憎しみと贖いの失敗?)を描いているように思える。
 『無知』という最近の作品には、亡命とベルリンの壁崩壊後のチェコに帰郷する女性の心理を描いているが、「郷愁」ということが如何に複雑でしちめんどくさい葛藤が伴うものかが描かれている。亡命という特殊な経験を経たからということではなく、僕らの身近にあり得る心理的葛藤だと思う。
 何年降りかで郷里に帰り、不在だった時間を埋めようとする言葉が、郷里の人間には何ら関心のない無意味な事で、まして亡命ということであれば、郷土を裏切ったという無言の反目がないわけではない。それでも、帰ってきたんだという思いを懐かしい人々の間で実感したいという切なる思いが裏切られる現実。これは厳しい。

 『無知』に登場するデンマーク出身の男性で、ピンときたのがデューク・ジョーダンのFLIGHT TO DENMARAK。
 クンデラのイメージを裏切らなかった。これは「郷愁」を言葉をアルバム化したといっていいだろう。
 NO PROBLEMはジャズ・メンッセンジャーズが、バルネ・ウィランが苛烈に演奏したこの曲をジョーダンは、ここで「郷愁」に変えた。
 僕には彼のジャズ人生の「亡命」がそうさせたように思える。
 彼には華やかな60年代までの前途有望なキャリアがあった。しかし60年代後半から70年代に至る古いキャリア故の不遇が待ち受けていた。
 それで再起を期してた第一弾は「郷愁」だったと。

 僕の宛にならない推論はともかく、愛着を寄せるにしくはなし。
 クンデラを読むたびに聴きたくなる一枚だ。




  
    


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