AWKWARD ARCADE

第八話 城下治安維持計画! 11





 太陽が傾き始め、窓からの光がやっと藍に変わる。作戦室には夜の二十七番小隊とは思えないほどの人数が集まっていた。驚いた事に今日は全ての隊員が私服だった。

 その空気は緊張に溢れていて…というわけではどうもないらしい。何しろ制服も着ていないし、喋っていたりうとうとしていたりと…緊張感のかけらも見受けられなかった。

「フェイ」

 その中でも朝からずっと作戦室にいる白髪の中年がフェイに話しかける。眠そうな目をこすって、瞬きで眠気を弾き飛ばそうと試みながらツンツン頭の青年はそちらを伺った。

「なんですか?ロメオさん」

 太陽の光が無くなり、まどろんでいた精神を強く刺激する。

「酒が足りねェ」
「俺は睡眠が足りません」
「それは自己管理だろ」
「…失礼しました」

 フェイは頭を振った。ここで眠ってしまったら兵士として仕事をしてない上にサボっている事になってしまう。仕事はろくにしていないし、せめてサボる事くらいは避けたい。そう思って最後の気力を振り絞って眠気を弾き飛ばす。

「…ただいま」
「ん」

 静かにドアを開けて隊員が帰ってくる。決められた時間ごとに交代のため、次の番を呼びに戻ってきたのだ。フェイがまどろんでいる間にどうも二度くらい交代されていたようで、ほとんど報告も生返事程度にしか聞いていなかったみたいである。
 朝の時はまだ気力もあったようだったが……

「クリエス」
「問題はないぞ。次は誰だ?」

 フェイと出会ったときとは微妙に違う服装のクリエスが綺麗な姿勢で歩いてきた。腕を組み、少し肌寒い季節にしては些か寒そうな格好で丸腰である。ちょっと腰に手をついて歩こうものならすぐに声をかけられそうな見た目をしていた。

「十五番小隊には言いに行った?」
「行ったよ。先に行っているはずさ」

 どこともわからぬ方向を指差してクリエスは笑った。暮れていく外を見つめ、クリエスはゆっくりと窓に向かって歩いていく。

「夜が私の時間なんだがな…」
「まあまあ。後は私に任せて」

 がたんと席を立った音がする。そしてカツカツと足音が窓に向かった。

「エリザ…。ああ、頼むよ」

 隣に立ったのはエリザだった。エリザは外の藍色の空を見上げてながらクリエスの肩を叩く。なれなれしい行為かと思いフェイはひやひやとしたが、「頼むよ」といったクリエスの表情は形式的な台詞をはいた表情ではなかった。

「あ、弓はやっぱり持っていかないほうがいいかな?」

 自身の武器の置いてあるベージュ色をした壁際のところへ行きながら、近くに座っていたクリューガーに向かってエリザは言う。昨日のことを急に思い出したのだろう。

「あー、そのほうがいいんじゃねェか?被害者が増えなくてすむぜ」
「だよねー」

「(ちったぁ反省してんのか)」

「なんか言った?」
「いや……なにも」

 エリザは武器は持たずに部屋を出て行く。先にまわっている十五番小隊と共に城下町全体を警戒する任務…城下町のことについては二十七番小隊の方がよく知っているので珍しく指示を与える側に回っていた。

 エリザは城の門を抜け、藍の世界に染まっていく城下へと出る。人影はもう少ない。この時間になってから酒場を開店する場所もあるので、いわばこのくらいの時間帯からが警戒の本番といえるだろう。酒場に焦点を当てることに限ればかなり行動範囲が広がってしまう。

「面倒ね」

 言って、エリザは記憶に叩き込んだ酒場の位置を思い出し、近くのものから順に見て回ることにした。



 一方、エリザが出てからの作戦室。

「なあ、ナード」
「なんだよ」

 十五番小隊の作戦室で待機しているはずのナードが二十七番小隊の作戦室へいきなり尋ねてきていた。

「なんか嫌な予感がする」

 フェイは窓の外を頬杖を付きながら見ていた。その目は細く、険しい顔をして遠くを見つめている。

「ああ…俺もだ。なんなんだろうな。胸騒ぎというか…」

 驚いたことにナードもフェイと同じような感覚を感じていたようだ。ナードは笑っていた。

「そわそわしてるな、その声」
「お前こそ、任せろって顔してるぞ」

 そして、フェイも笑う。言わなくてもナードにはフェイの声色で、フェイにはナードの顔色で内心を読み取っていた。

「傘でも持っていってやりな」

 ナードは剣などがかけられている壁のほうを指差す。

「…!そうだな」
「攻撃的な傘なことだな」
「そう言わないでくださいよ、ロメオさん」

 そう言ってフェイは作戦室をナードに任せて胸騒ぎの元となっている城下町へと繰り出していった。



 城下の喧騒がいつもと違う気がした。人の空気ではない、天候でもない…ましてや自分の中の気分でもない。何かを感じた。

「…次の酒場は、あそこね」

 エリザは息を吸いなおしてその酒場のある方向を見る。今日は弓も持っていないし、そこの酒場の前には明りがあった。視界に関しては問題ない。
 エリザは背中に手をまわす。

「…そうだった」

 今日は弓を持っていないのを思い出し、もう片方の手に握られていたたいまつを前に掲げながらゆっくりと近付いていった。近付けば近付くほどその空気は濃く張り詰めていくのが分かる。

(当たりか…。弓、持って来ればよかったな)

「じゃあな!クソッたれ!!」
「!!」

 考えている暇はどうやらないようだった。事は済み、今まさに犯人達が逃げようとしていたときだったようだ。応援を呼ぶ時間はない。エリザは意を決し、たいまつを地面に置き、いまだこちらに気がついていない様子の犯人に向かって飛び掛っていく。

 趣味の悪いバンダナ…間違いない。

 エリザの弓のないときの戦闘スタイルはある人仕込の近距離格闘スタイルだ。一撃でしとめるべく思いっきり殴りかかっていく。

「来たわね!犬めッ!!」

 最初に出てきたバンダナ男の隣からもう一人の髪の毛が緑色の男が出てきてエリザの渾身の力を込めた一撃を何かで弾き飛ばした。

「チッ…!ここでかよ!」

 出来た隙を見てバンダナ男がエリザに向けて足を振り上げる。

「き、あ……っ!」

 不意をついたつもりが完全に逆を取られた。足を振りぬくとそこに乗っていた体はあっさりと空中へと飛ぶ。胸に強烈な衝撃を受けてエリザは逆から心臓が飛び出すのではないかと勘違いするくらいだった。

 振り上げた足を下ろし、バンダナ男は余裕を持ってエリザの方へ向き直る。逃げようとはしていない。

「もっと胸が大きけりゃダメージも少なかったかもな」
「あらあら、犬じゃなくて猫だったのね」

 もう一人の髪の毛の緑色の男は鞭をしならせ、人差し指を口の前に当ててまるで女性のようなしぐさをしていた。バンダナ男のがっちりした体型の横にいるせいか少し細めに見える。しかしその目つきは狂気そのもの。単なる自信だけではないように感じた。

「く…ふっ」

 よろめく足で何とかエリザは立ち上がる。

「流石は王国軍だな。ま、それだからこそ逃げなかったんだが」
「名残惜しいわ〜☆」

(ここでとどめを刺す気…。でも、逃げるわけには…)

 逃げる気はないが、足はどちらにしろ少し休まなければ満足に動きそうにない。エリザはダメージを回復させようと、呼吸を整え始めた。

「させるか!これで終わりだ!」

 バンダナ男がとどめを刺すべく走り出す。手にも足にも何も持たずに突進してくるのを見ると肉体そのものを武器としているタイプだろう。厚い底の靴がその男の体重のせいかものすごい音を立てて地面を叩きつけている。
 勢いを殺さぬまま後に回り、一回転して自らの体を死角にした矢のような足の裏で相手を叩きつける攻撃を繰り出した。

(大振り!)

 大きく振りかぶった攻撃だった。死角を利用したにもかかわらず到達までに時間がかかり、その時間にエリザは相手の足に拳を当てて体を強制的に到達点からずらす。それだけでも胸に大きな痛みが響き、苦痛に表情が歪んだ。骨が軋んでいるようだ。

「ヒャハッ!」
「…う」

 その隙を縫って、もう一人が仕掛けてきていた。棘付きの鞭がエリザに絡まった。棘は制服の下まで到達している。

「女縛る趣味はないのよッ!!」
 男が引くとその針は制服の原から胸辺りを引きちぎりながら、エリザの体にまで掻き傷を残していった。

「あぐ…!」

 赤い血が肌を伝い地面へと流れ、むき出しになった白い肌を染め上げていく。勢いよく流れ出ないところを見るとそこまで酷い出血ではないようだし、痛みの残る胸への打撃無かったのは運が良かった。

「なかなか綺麗な肌だな」
「…こって……」
「あん?」
「男って、みんなそう……」

 胸元を手で隠しながらも、エリザの眼にはまだ闘志がみなぎっていた。怒りも混じり、その勢いは常人なら身をたじろがせることだろう。

「…このまま逃げてもいいが、少しくらい楽しんでいくか」
「アタシはそんな趣味は無いのよね〜。早くしなさいよ」

 鞭男は鞭を下ろし、バンダナ男は下品な笑みを浮かべてエリザに一歩一歩近付く。走る体力くらいはありそうだが、相手のほうが優勢だ。仕掛けようにもおそらく仕留められないだろう。諦めかけて、エリザは目つきをそのままに息を大きく吐いた。

 バンダナ男がさらに一歩近づく、と急にその顔が横を向き、踏み出した一歩が横に傾く。エリザは一瞬何が起きたのか分からず目と口を開いたままに声も出ない様子だった。

「ぐあっ!」
「…俺の部下に何してるんですか」

 冷静だが怒りのこめられた言葉、エリザからは怒りをこめた表情がしっかりと見えた。
「隊、長」
 フェイは振りぬいた腕を引き、相手を見据えて言った。いつもの穏やかな表情からはおおよそ想像も付かない、フェイにとってはかなりの形相をしている。

「エリザさん…大丈夫ですか?」

 バンダナ男から目をそらし、エリザへ向かってフェイは歩きながらいつもの真っ白な制服ではない私服の上着を脱ぎ、エリザの肩にかけた。

「敬語…それにこれ、地味じゃない」
「ご、ごめんね。ああ、それとこれ」

 フェイは背中に背負っていた細長いものをエリザに手渡した。エリザはそのものを受け取ると、顔色を変える。

「わかってるじゃない」
「頼みますよ。今日俺、調子悪いんで」

 大きく弧を描き、この端と端をつなぐ強固な弦…楽器ではない、これは、人を殺す道具。大きな力を必要とする強弓という部類に入るエリザの弓『プリズム』だ。王国軍から昔褒賞として受けたものらしく、ある名匠の手によって作られたものであるらしい。細かく練磨された金属の端は錆、中央の非常に密度の濃い柔軟な木からは折れがまったく見受けられないような、そんな代物だ。

「いつ見てもすばらしい弓だなあ」
「いくらいいものでも使う人しだいによって弓は変わるものです。私だってまだまだこの子を使いきれてはいない…」

 フェイはにこりと笑う。エリザは弓の技術に関してはフェイの目でかなり王国軍の中でも主力に入ると思う。それでも、エリザのその弓にかける向上心と真面目さはそれを認めない。真面目な性格であると、エリザのそういう部分がフェイにはうらやましく思われた。ライバルと思ったときでさえある。

「隙だらけだぜェ!」

 体勢を立て直していたバンダナ男が二人の目前まで迫っていた。寸でのところで気がついたフェイはエリザを突き飛ばし、自身はその足を手で払いのけて攻撃の軌道をそらす。空を切った男の脚は一回転してまたもとの位置まで戻った。体のバランスを崩すまでには至らなかったのかバランス感覚が異常に高いのか。

(どちらにしろ簡単な相手ではないかな…ああ、ナードも連れて来ればよかった)

「よくかわしたな」
「事前に警告してくれたからさ」

 なぜか楽しそうに笑うバンダナ男の後ろでさらに気味悪く笑うのは緑髪の男。

「楽しくなってきたじゃない?青髪の子!可愛いわ〜♪」

(何で逃げないんだ?)

「私の鞭で丸裸にしてやるわ…!!」

 フェイはもしかしたら逃げてくれるかも…という淡い期待を捨て、目の前の相手に集中する。剣を抜こうともしたが、相手が剣を持たない限りフェイにとってそれは非常に迷うことだった。正々堂々とやる必要はまったくない。フェイは険しい顔で相手を見据えるのみ。迷いは明らかだった。

 その迷いを見切ったのかバンダナ男は一気に飛びかかってきて、フェイの偏り上の位置からまさに振り下ろすような足の一撃を放つ。

(一撃で決めるつもりか!…でも…!)

 フェイは剣を抜きながら身をそらすようにしてかわし、すぐに後ろを振り返って剣を振った。するとフェイの手に手ごたえを残し、何かを弾き飛ばす。

「あら、やるわね☆」
「…」

 フェイのすぐそこまで緑髪の男の鞭が迫ってきていたのだ。少し太めの有針鉄線のような鞭が男の無防備な攻撃の隙を埋め合わせる連携攻撃。

「二対の戦い方に慣れているのか?」
「まあ、そうだけどね。でも二対一じゃないでしょ」
「隊長、手、足!」

 フェイは横へ飛ぶ。時間をいれずにその背後から矢が三本飛来してきた。男は不意をつかれたのにも関わらずすぐに体をうごかして二本の軌道から外れる。

「チッ…!」

 残りの一本は太ももを貫いた。

「これが狙いねっ!」

 バンダナ男がかわした二本は弧を描き急旋回したかと思うと後ろから緑髪の男に向かって進む。気がついた男は無恥をしならせて一本を迎撃した。しかしもう一本の別軌道を描いた矢は落としきれず腕の付け根辺りに突き刺さる。

「なんてやつだ」

 もちろん射手はエリザだった。『プリズム』を正面に構え、まっすぐ男たちを見据えている。

「あれが、大隊仕込みのエリザさんの射術…」
「そう。速射を得意とする人は多いけど私は別。もちろん速射も出来るけど」
「『同時発射』…か!」
「そ。気持ち悪いくせに頭は回るのね?これが私の技、プリズミック・ディスティネイションよ」

 エリザは口を止め次を撃つ体制に入る。背中から矢を取り出して弦に番える時間もまた、大隊の面々以上に早い。
 させまいとして飛びかかるバンダナ男の前には王国軍のバンダナ男が立ちふさがる。

(少しでも時間が稼げれば…)

 フェイは迫り来る敵の攻撃と後ろへ流さないようにいなして、さらにバンダナ男の後ろの緑髪の男にも気を配る。先ほどまでの勢いはエリザの攻撃によって少しは緩和されていて、少しはやりやすかった。たった一度の射撃で相手の得意分野をつぶすというのはやはりさすがというべきか。

「『プリズミック・ディスティネイション』!!」

 フェイが時間を稼ぐまもなくエリザは第二射を放つ。フェイの後ろから三本の矢が同時に放たれ、フェイはそれをかわすべく身をひねった。

(…う!?)

 おなかあたりに激痛が走る。フェイの動きが止まったものの倒れこむ勢いで三本の矢すべてをかわしきることは出来た。三本の矢は相手に向かって突き進む。

「今度はどっちだ…!」
「アタシに任せて!ふうああッ!」

 奇妙な掛け声と共に鉄線がSの字に空を舞い、矢を叩き落としていく。バンダナ男はそれを見ると残った矢には目もくれずにそれをかわしてフェイの元へ蹴り上げるように足を振り上げると、フェイは力を振り絞って転がり、その勢いで立ち上がった。

(…傷が開いたか。クリエス、痛いよ…)

 横腹についたクリエスからの切り傷がどうやら開いたようだ。エリザはそんなことを気にする様子も泣く次の一射をすでに放っていた。

「うっ?さ、三本だけじゃなかったのね…」

 緑髪の男が倒れこんでいる。バンダナ男が驚いて振り返った。第三射の矢ではなく、第二射の矢が当たったようである。はっとして男はすぐに前を振り向いた。バンダナ男の前にはすでに第三射の矢が迫っている。

「いっ!」

 一本はフェイの腰に命中し、残りの二本が男に向かっていった。男は腰を落とし、矢を正面に手を開いて構え待つ。

「そこだ!」

 男はくるりと回って足を横になぎ払い、二本の矢を弾き飛ばした。しかし…

「…なっ……」

 どこから飛んできたのか一本の矢が男の胸の辺りを貫く。驚き、そのまま男は倒れこんだ。

「矢はね、四本でも打てるのよ」
「…エリザさん……」

 古傷の場所にぴったりと矢が命中したフェイはたいした追加の傷はないようだ。矢を抜きながらフェイは大の字になって倒れる。

「た、隊長!何でよけなかったんですか!!」
「古傷が、痛くて」

 エリザは弓を背中に引っ掛けてフェイに駆け寄ってその頭をひざの上においた。そしてフェイのおなかあたりをまさぐると、ねっとりとした感触が手に伝わってきた。

「すごい血…」
「いや、これは」
「…大丈夫ですか……?」

急に神妙な面持ちになったエリザを見てフェイは言葉を失くした。あのエリザが顔を紅潮させてフェイのことを本気で心配しているのだ。

「ごめんなさい…隊長」
「だ、大丈夫だよ」

 エリザのその表情がフェイの流血を増進しているとは口がさけてもいえなかった。エリザはフェイの戸を引いて肩にかけた。肩を組まれて、フェイもやっとのことで立ち上がる。体力がなくなっている上にこの様だ、一人ではとても歩けたものではない。

「たっ、隊長!平気ですか!?」

 十五番小隊の面々がやっと到着した…かと思ったら、
「遅いよ、ナード」
 いてもたってもいられなくなって作戦室を飛び出したナードが走ってフェイのところまで来たようだ。相当探したらしく王国群であるナードでも肩で息をしている状態だった。胸の辺りを紐で止めるタイプのシャツの背中には長い長いものが背負われている。

「馬鹿かお前。命令無視してまで来た友人に対して言う台詞かよ」
「ごめん。ありがとう…助かりはしなかったけどいいタイミングだよ」
「さて、エリザさん、後は僕が……」

 ナードがフェイの肩に手をかけると、エリザは少し身を震わせてそれを拒否した。

「私は隊長を連れて行くからお兄ちゃんはそこの奴らを頼むわ」
「…分かりました」

 ナードは手を引くと倒れて気絶しているバンダナ男の肩に手をかけて、肩に担ぎながら遅れてついてきた十五番小隊の面々に指示を出し始めているのを尻目に、エリザとフェイはゆっくり白へ向かって歩いていく。

「手柄…あのまま行けばエリザさんのものだったのに、大隊に、戻れるかも……」

「私には、手柄より大切なものがありますから」
 エリザに抱えられたままの姿勢でフェイは痛みを忘れて穏やかに笑っていた。





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